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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第40回 金真亜(キム・チナ)さん

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プロフィール

金真亜(キム・チナ)さん
平成24年度試験合格

 明治学院大学心理学部心理学科卒。東京都出身。心理学を専攻した決め手は、附属校からの進学で、高校と同じ白金台(東京都港区)にあるキャンパスに4年間通える唯一の学科だったこと。当時抱いた“心理”に対する専門家的な印象も、先々は手に職を付けたいとの思いと重なった。大学2年のときにホームヘルパー2級を取得し、訪問介護事業所で約半年間働いた。3年からはゼミ活動のなかで、精神障害者が集う地域の事業所でボランティアに携わった。ここで「面白い」と感じたのが精神保健福祉士を志した発端。大学院に進み臨床心理士を目指す選択は、心理分野の就職難が聞こえるなかで後退し、代わって資格手当ありの情報とあわせて目にしたさまざまな求人案内から、精神保健福祉士が台頭した。大学卒業後の受験を一念発起し、専門学校の精神保健福祉課程1年コースに入学。翌年の平成24年度国家試験に見事合格し、同年4月に社会福祉法人本郷の森(東京都文京区)に就職。就労継続支援B型「銀杏企画」のスタッフに着任し、目下2年目をひた走る。好きなことは、買い物。服を買いに行ったりするのが楽しい。苦手なことは、整理整頓。今年は事業所の机回りを整理することを目標にしている(写真は事務所風景。右手前が本人)。「自分のところの事業所ながら、すごくいい取り組みをしていると感じています。今のよさを維持しながら、この居城を大きくすることに貢献したい」と、カラリとした印象の中に確かな発展志向をのぞかせる24歳。

受験の動機

 精神保健福祉士の資格は心理学部に進学したことがきっかけで知り、その心理学を専攻したそもそもの動機も、通学するキャンパスが遠くになるのがいやだったという学業に対する目的とは別のところにあって、さらに、将来の展望として人にかかわる仕事がしたかったというと特別にそれもないということで、初めから明確に福祉の専門資格をみていたわけではありません。

 ただ、ずっと遡ってみると、小さい頃の夢はお医者さんとか、親戚に自閉症の子がいたり、近い身内が病気や入院をしたり、そんな誰かを手伝ったりといった経験があって、好きか得意かは別にして、そういう分野にかかわっていくことを拒否的に見る向きもありませんでした。

 大学でゼミの教授が精神保健福祉士の資格を持っていたことも大きかったと思います。3年のときからグループホームや支援センターなど精神障害に関係する地域の施設でボランティアをしたのは、このゼミならではの経緯でしたし、就活が始まる4年の前期に精神保健福祉士の求人情報を集めてきてくれたのもゼミの先生でした。心理学部では精神保健福祉士の課程は履修できないので、資格がなくても就職できる事業所の案内でしたが、精神保健福祉士の資格を持っていると手当が付くと書いてあるのを見て心が動きました。

 4年の10月くらいから専門学校の資料請求や見学もして、どこにしようか、通いか通信かと考えるなかで浮上してきたのが社会福祉士の資格でした。就職を考えたときに、精神保健福祉士は間口が狭いといいますか、行くところが限られてくるので若干の躊躇はありました。ただ、社会福祉士は漠然とし過ぎていて、例えば大きい法人に入ったら欠員補助で興味がないところに配属されるかもしれないとも思いました。私の場合、地域の事業所で働けたらという職場に対するイメージがそれなりにあり、であればそこを目指していこうと精神保健福祉士一本に決めました。

 大学卒業を目前に控えて学生生活が名残惜しい思いもあって、専門学校は日中の通学コースにしました。通いが前提なので、学校は家から通いやすいこと、若い子が多くてキャピキャピしていないことなど、条件も吟味して考えました。

 受験勉強はまずまずうまく進められたようです。試験前月の12月にはほぼ仕上がっていたと思います。どこまで参考にしていただけるかわかりませんが、精神保健福祉分野の知識が皆無に近い状態からスタートした私の方法をご紹介します。

10月の模擬試験がスイッチ

 まず、国家試験を意識しだしたのは、10月に全国統一模擬試験を受けてからです。成績がよくなくて、学内の採点で専門科目と共通科目を足して80点いっていなかったと思います。これはまずいかなと思い、ようやくエンジンがかかった感じです。

 それまでの半年間は何をやっていたかというと、学校の授業はまじめに受けていました。4月当初は大学生活のツケでそれこそ朝起きるのも大変で、週5日通うリズムにもついていくのがやっとでしたが、授業はきちんと受けていました。でも、教科書はまったくといっていいほど読みませんでしたし、その日の授業の内容をノートにまとめたりなんて考えすらしませんでした。クラスの友達とも勉強の話にはならず、せいぜい目先の小テストがどうとか、その程度です。

 ということで、受験勉強を本格的に始めたのは11月に入ってからでした。

『国試ナビ』一冊をカスタマイズ

 勉強に使う参考書はひと目見て決まりました。国試ナビ(『見て覚える!社会福祉士国試ナビ』中央法規出版)です。他の本も使いましたし、あとから購入したものもありますが、最終的にずっと持ち歩いたのはこれでした。

 何がよかったかというと、4色のカラーで作られていて覚えやすいことです。私は耳よりも視覚で入れていくタイプなので、色分けされているとすごく覚えやすく、内容も図表でわかりやすくまとめられていました。さらに、この本がいいのは余計なものが入っていないことで、使い込んでいく過程で必要だと思う内容をあとから足していける作りになっています。表の中や表と表の間に文字を書き込めるくらいの空きスペースがあって、そこに書き込んであとから見直してもゴチャゴチャした感じにはなりません。

 この本で勉強を始めた11月頃というのは、学校でも教科ごとの学習内容が一通り終わり、まとめをまた一からやっていく時期でもあって、タイミングがぴったり合ったことも奏功しました。授業のおさらいで出てきた重要な事柄を「ナビ」に書き足していきました。

 ナビは目次が科目別に構成されていませんが、あの科目でもこの科目でも目にする内容、例えば年金など複数の科目に登場するキーワードが1か所で学べるので、科目同士を関連付けられて効率的です。科目ごとに載っていると、今の話でいえば年金の話がいろんなところに出てくるので、それらが別々の違う情報に見えたり、そこにしか載ってこない情報が出てきたりします。それは結局、覚えなくてはならない内容が増えるということで、勉強の効果を考えるとデメリットです。

 ノートは作らず、「ナビ」一冊にすべてを集約しました。

お世話になった「国試ナビ」です。
こんなふうに色分けして書き込みました

専門科目の攻めどころは“法律”の一点

 ちなみに、「ナビ」は社会福祉士用の参考書で、精神保健福祉士に特化した内容は載っていません。精神の専門科目はどうしたかというと、ワークブック(『精神保健福祉士国家試験受験ワークブック』)を買いました。一から読んでいくのではなく、学校の授業で習った知識である程度いける、特別に勉強しなくても得点はできると思ったところはスルーして、歴史と制度・法律に力を入れました。これは私の実感ですが、精神の専門科目は法律のところだけしっかり押さえれば、あとは何とかなります。その法律というのがすべての科目にいろいろ出てくるので厄介ではあるのですが、攻めどころはその一点です。

 精神のワークブックで仕入れた知識も、可能な内容はナビに反映させていきました。診療報酬など細かい内容は書き込むのではなく、コピーを張り付けたりして、極力ナビに一切合財が盛り込まれている状態にしていきました。

 過去問の問題集は買いませんでしたが、図書館で全部コピーして問題を解き、よくわからない内容は解説文からナビに書き足していきました。

共通科目こそが本丸

 以上の進め方から気づかれるかもしれませんが、試験勉強は全体として「共通科目」に重点をおいていました。「ナビ」から得られる知識は、基本的に共通科目と社会福祉士の専門科目に対応していますが、キーワードで項目立てられているそれらには精神保健福祉士の専門科目に活用できる知識もたくさん盛り込まれています。このベースに精神の専門科目に固有の内容を乗せていき、乗らないものはワークブックや学校で習ったことの確認で補完する、それで専門科目の学習は大方整うだろうというやり方です。

 その分、共通科目に力を入れました。得点しづらい科目はゼロ点でなければいいといった消極さではなく、やる以上はいい得点を取ろうと思って取り組みました。後述しますが、試験の結果は得点の面でも満足のいく出来栄えでした。

 それと、模擬テストや過去問を解くときは、“カン”も重視しました。試験問題は5肢選択形式なので、一から十まで完全にわからなくても正解できる可能性はあるわけです。選択肢5つのうち3つはわかった、このときによくはわからない2つに対して正解にたどりつくべく“カン”を発揮する。当てずっぽうではなく、出題形式を見て「あ、こっちだな」となんとなくわかる感じがする。意識してやっていると、この“カン”みたいなものは付いてきます。このとき、選択肢5つが5つともわからなかったら手も足も出ないので、その意味でも相対的に難しい共通科目は基礎学習をしっかりやっておく必要がありました。

勉強は「図書館」で決まり

 勉強する場所は、授業が終わった後に学校の図書館と決めていました。授業は1日平均4コマ入っていて、勉強を始めるのが夕方4時過ぎくらい。時間は特に決めず、おなかがへったら帰るという感じでした。時間にすると2、3時間です。私は家では勉強しませんでした。家では好きなことをしてゆっくり過ごしたかったのがいちばんですが、図書館でやると勉強している気になってモチベーションも上がりました。今日こんなに勉強しちゃったなんて“やった感”があると、いい感じの勉強が続くんです。土日だからまとまった時間をとって勉強をすることはありませんでした。「ナビ」を持って喫茶店に行って、ぱらぱらとめくるような時間の過ごし方は好きで、そんな程度の緊張度・気楽さで勉強にふれている感覚です。ふつうに友達と会ったりして、好きなことに時間を使っていたと思います。

12月に合格への手応え

 このように取り組んできて、自分の学力が上がっているのを実感したのは12月の半ばくらいです。学内で行った試験が好成績で、これはもう落ちることはないだろうと思いました。この時点で受かるのはわかっていたと言うと言い過ぎかもしれませんが、手応えとしてはそれくらいありました。点数をもっと取れるんだったら取ったほうがいいかな、取れるようにしておこうかなとも思いましたが、知識を広げていくより持っている知識を落とさないようにするほうが大事と思い、理解を確実にすることに努めました。改良を重ねてきた「ナビ」をよく読み、必要があれば内容を補強しました。勉強に費やす時間の長さや生活のスタイルは最後まで変えていません。変える必要が特にありませんでした。

確信していてもうれしい

 国家試験本番の手応えはよく、これなら余裕と思いました。試験の翌日、専門学校で学校としての解答速報が発表され、試験を受けた学生たちが各々採点して提出するということが行われましたが、その結果も上位のほうで合格を確信しました。

 合格発表の日は、後期の実習期間中で精神科デイケアにいました。発表時間にインターネットを見て、結果を確認しました。就職の内定をいただいていた事業所からは、合格なら常勤、落ちていたら非常勤と言われていて、そのときにはっきり「大丈夫です」と答えるくらい自信はありましたが、それでも合格を知ったときはすごくうれしかったです。1年間学校に通って本当によかったと思いました。

 以上が私の体験談です。この記事が公開されるのは9月末ということですから、私が試験勉強を始めた時期より1か月は早いです。勉強のやり方を工夫してまじめに取り組めば、十分に間に合うと思います。

「こんな精神保健福祉士になりたい!」を想像して

 最後にもう一つ。合格のために大切なのは、資格を取った後に自分がどんな仕事をしたいかを想像することだと思います。これはモチベーションアップにつながります。専門学校で私の同期のほとんどは病院就職を希望していました。私も病院か地域かと悩んだ時期がありましたが、最終的に目標を「地域」に見据えて、そこでの活動もいろいろ想像してモチベーションにつなげました。

 そして今の実感は、「地域に来てよかった!」です。地域の精神保健福祉士は、かかわりをもつ方々と一人の人間として濃く長いかかわりあいができます。私はまだ経験1年余りのひよっこですが、皆で作業やスポーツをしながら毎日が発見の連続です。ほんと、飽きません。楽しさもつらさも分かち合いながら、一緒に成長していける所だと感じています。下の写真はその1シーン、スポーツプログラムのバレーボールの風景です。

 皆さんも、こんな精神保健福祉士になりたいな、という想像を膨らませながら、まずは国試合格に向けて頑張ってください。

「銀杏企画」メンバーが出場する東京都のスポーツ大会
(11月開催)に向けて、毎週練習に励んでいます。
メニューもかなり本格的です