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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第37回 松谷暁子(まつや・あきこ)さん

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プロフィール

松谷暁子(まつや・あきこ)さん
平成16年度試験合格

 慶應義塾大学文学部人間関係学科卒。愛知県出身。大学では社会学を専攻、やがてそのなかの民族学へと学びを進めた。大学3年、学芸員を目指す気持ちもあったそんな折、当時住んでいた所から程近い福祉施設でアルバイトを募集していた。自閉症の成人の人たちの施設だった。軽い気持ちで始めてみたが、やっていくなかで少しずつ惹かれていった。それまで自分が当たり前と思っていたことが彼らにとっては当たり前でなかったり、彼らがとる行動が自分からみれば意外なものであったり。それは、日本であれば常識ともいえることが、異なる文化圏にいけばまったくそうではなくなるといった民族学にも通じるものがあった。大学4年になったときには進路を福祉に定め、なかでも発達障害児の療育に携わりたいと考えるようになった。卒業後、公益社団法人精神発達障害指導教育協会(東京都北区)に就職し、療育スタッフとして勤務。専門資格は入職3年目に社会福祉士を取得し、同7年目に精神保健福祉士を取得(平成16年度試験)。その翌年、東京都北区で活動する特定非営利活動法人ピアネット北へ、法人の療育相談事業「あこの会」の立ち上げに携わり、現在に至る。好きなものは、人の暮らしにふれる外国旅行など異文化探訪、トルコのキリム(手織物)。苦手なのは高い所。「子どもたちが自分らしく力を発揮できるようサポートできたらいいですね」。さらりとした印象が安心感を誘う。

受験の動機

 はじめに社会福祉士の資格を取ったときは、専門的な知識を持つための勉強もしなくてはとの気持ちからでした。現場で学ぶことは多かったのですが、大学で社会福祉など専門に関する勉強をしてこなかったので、制度やサービスのことがよくわからない状態でしたし、職場でも取ったほうがいいと勧められて。資格取得は入職して3年目でした。

 精神保健福祉士の資格はその4年後に取得しました。療育の相談を受けているなかで、しだいにその必要性を感じていきました。発達障害があると、周囲との関係がうまくいかないストレスから精神的な問題を抱えることもあります。また、発達障害の子どもを持つご家族についても同様に、精神的な部分でのサポートが必要なケースがあると感じることもありました。そうしたことを考えるなかで、精神障害についても一度きちんと勉強しておく必要があると思いました。

 精神保健福祉士の受験には、それほどプレッシャーなく臨めたと思います。社会福祉士のときの経験からイメージできるものがありましたし、当時は共通科目も免除されましたので、少ない科目で受験できました。しっかり勉強したとはとても言えないのですが、だからこそこれから受験される方の勇気づけにはなるかもしれません。私の体験談をお伝えします。

受験勉強のスタートは10月から

 精神保健福祉士の養成課程は社会福祉士に挑戦したときと同じ、東京福祉保育専門学校(東京都豊島区)の短期養成通信課程に入学しました。レポート提出とスクーリングで構成される1年コースです。

 これらをこなす以外の勉強、いわゆる受験対策としての勉強を始めたのは秋になってから、たしか10月頃だったと思います。社会福祉士のときは、初めての受験だったのと、科目数も多かったので、夏くらいから準備を始めていました。

 試験勉強に使った教材は、これも社会福祉士の試験と同じで過去問題集です。私が受験した当時は、精神保健福祉士の国家試験問題を複数年分まとめて載せていた本はなく、古い年度の問題集を職場の先輩から借りるなどして数年分の問題を集めました。私の場合、試験対策としての教材は基本的にこれのみで、手広く揃えることはしませんでした。分厚い参考書は、まず時間的にやりきれないと思ったからです。問題を解く形式の教材としては、模擬問題集も入手しました。こちらは主に受験勉強の後半時期に力試しのために使いました。

過去問を解く、くり返し解く

 勉強の進め方はシンプルで、過去問を解き、間違った問題のどこが間違っているかを確認し、理解した後に再び問題を解く。このくり返しです。教科全体の基礎知識を学習してから習得状況の確認に過去問を解くという順序立った形ではなく、いきなり過去問を解いて、間違ったところを確認するなかでその部分の知識を習得していくという流れです。必要十分な学習方法とはいえないかもしれませんが、仕事と両立していくなかでは、各教科の全体的な知識を順々に、網羅的に学べるだけの時間はもてませんでした。

 問題を解いて間違った箇所については、教科書と照らし合わせて、理解が確実になるようによく調べました。教科書の解説で十分でなければ、ほかの参考書やインターネットなどで調べて疑問が残らないようにしました。

時間は通勤途中の喫茶店で30分

 勉強をする時間帯は朝でした。夜は仕事で家に帰るのが遅めでしたし、疲れていて勉強するのはつらくもありました。日によっては帰宅してから残った仕事を片付けることもあり、時間を決めて勉強するのは難しい状況でした。

 当時、職場の始業は9時半で、通勤時間30分くらいの所に住んでいたので、通り道にある喫茶店で8時過ぎから勉強することにしました。時間はきっかり30分。まとまった何かができる時間として十分ではなかったかもしれませんが、現実的なところを探るとそれが唯一持てる貴重な時間でした。

ペースを変えず、完成へと近づけた

 12月くらいから少しずつ本番を意識して勉強に力を入れていきました。土日の休日は1日4~5時間勉強したと思います。家にいると集中できないので、週末も喫茶店で勉強するようにしました。平日は朝以外にも仕事が終わってから時間をつくり、1時間くらいは勉強するようにしました。

 ある程度知識がまとまってきて大丈夫かなと思えるようになったのは、集中して取り組んだ年末年始の後、1月初旬だったと思います。初めて目にする模擬問題を解いてみて、それなりにできていることを確かめたとき、手応えを感じることができました。

 試験が迫ってきたといって、勉強のやり方や毎日の過ごし方など特に変えたことはありませんでした。風邪はひかないように気をつけたのと、睡眠時間は削らないようにしたくらいです。職場でも仕事が遅くならないように気遣ってくれてありがたかったです。

 毎日の中心に仕事があったぶん、勉強はそれほどストレスにならなかったようです。むしろ、仕事とは違った時間をもてることが日々の張り合いになっている感覚もありました。年末年始に旅行に行ったり、実家に帰省したりといった休息やリフレッシュはありませんでしたが、試験に臨む過程としてはわりと順調だったと思います。

資格取得はステップを進めるきっかけ

 試験を受けたときの手応えは、たぶん大丈夫かなと思いました。解答速報でも答え合わせをして、合格できているかなという感触でした。淡々とした道のりのように見えるかもしれませんが、合格を知ったときはやはりうれしかったです。

 精神保健福祉士にしても社会福祉士にしても、資格を取って変わったと思えるのは、ベースの知識ができて、この分野のことが自分のなかに入ってきやすくなったことです。以前は用語そのものを知らないものも多く、取っ付きづらさがありました。

 専門職としての基本姿勢など、仕事をする上で依るべき場所もできました。

 試験勉強や資格取得は、この仕事をしていくときのきっかけだと思っています。実際に仕事をする上では、試験勉強で得た知識だけでは不十分で、そこからさらに本を読んだり、実践を通して感じたり考えたりしなければならない。ただ、試験を受けることがなければ、さまざまな分野のことを勉強したり、視野を広げる機会もなかったと思うので、試験を受けて資格を目指したことの意義は大きかったと感じています。

 今、療育に携わっていて、運動や言語、認知学習、生活面など一人ひとりの子どもに合わせてさまざまな指導をしています。子どもたちは最初から課題に前向きに取り組もうとするわけではなく、やりたくない課題であれば、泣いたり逃げようとしたりすることも少なくありません。でも、取り組ませていくなかで、子どもたちが自ら達成感をもったり、頑張ってみようとチャレンジする気持ちが出てくる瞬間に出合うと、やっててよかったと心から思います。一人ひとりが自分にあった場所で自分らしく力を発揮できるように、子どもたち、親御さんといっしょに取り組んでいきたいと考えています。

療育プログラムの後、スタッフミーティングの様子。
左から白井信光さん、石川智子さん、石井葉さん、松谷さん