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私はこうして合格しました!

国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。

第45回 光森陽子(みつもり・ようこ)さん

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プロフィール

光森陽子(みつもり・ようこ)さん
平成17年度試験合格

 東京福祉大学通信学部社会福祉学部社会福祉学科卒。宮城県仙台市出身。中学生のときに観たテレビドラマ「心療内科医・涼子」が人の心理に興味をもった発端。心の問題を抱える人々にかかわるさまざまな専門職のイメージにふれ、こういう仕事があるんだ、なぜ心にこんな問題を抱えるに至るのだろうと惹かれるものを感じた。その気持ちは静かにあたためられ、将来は心理の分野で働けたらとの気持ちを抱きつつ、社会福祉を学ぶ地元の専門学校に進学した。精神保健福祉士の資格を意識したのは、2年生の後半。専門課程のオリエンテーションの一環として学校から程近い精神科病院を見学に行き、衝撃を受けた。自分が毎日通学している道の途中に、こうして病院生活をしている人たちがいたことに気づかされたからだった。漠然と志していた心理職からも気持ちが離れつつあった。統計やデータ分析に多くの時間が充てられる心理学の勉強からは、人とのかかわりを描きづらかった。精神保健福祉課程を履修し国家試験に臨むが、現役では合格ならず。地域生活支援センターに就職し、働きながら資格取得を目指したが、2年目の挑戦も実らず。満を持して臨んだ3年目、平成17年度試験で悲願を成就させた。地域生活支援センターには7年勤め、平成23年に宮城県立精神医療センター(仙台市)へ転職し現在に至る。趣味は日本舞踊、歌舞伎の観劇、読書。好きなことは、食べ歩き、温泉巡り。許せないのは理不尽、不平等なこと。食べ物はたまねぎがだめ。「社会のいろんなものが見えてくるやりがいの大きな仕事です。一緒にやっていきましょう」、率直でかざらず、マイペースで周囲が和らぐ33歳。

受験の動機

 人の心の問題にかかわっていく仕事があることを知ったのは、プロフィールに紹介いただいているとおり、中学のときにテレビで観た「心療内科医・涼子」でした。さまざまな問題が本人や家族に起こって、その状況を専門職が協力しながら解決していくという、今思い起こすと筋書きはかなり現実からかけ離れていたように思いますが、こういう仕事があるんだと興味を持ちました。精神保健福祉士になったそもそもの発端となると、ここかなと思います。

 それと、人と接したり話したりするのがもともと好きでした。中学、高校時代は友達ととにかくよく話しました。お互いの家に泊まりあって、夜通しわいわい話したりなんてこともありました。高校のときは、アルバイトをモスバーガーとか牛丼の吉野家とかコンビニとか、あまり学校には大っぴらにできなかったのですが、楽しくていろいろやっていました。これも人と接するのが好きという気持ちが大きかったと思います。

 当時、将来の仕事として漠然と心理職を描いていましたが、福祉的な側面を感じていたこともあり、学校は通いやすくもある地元の福祉系の専門学校に進学しました。意識の転機は、専門課程を選ぶ2年生の後半でした。学校の近くにある精神科病院へ見学に行き、今まで自分が知らなかった世界が昔からそこにあったことに衝撃を受けました。古い施設でもあり、かつての名残を色濃くとどめていました。そこで働いている医療スタッフの方々を見て、私もこの分野で何かできることをしてみたいと思ったのが、精神保健福祉士を志した出発点でした。

 国家試験には2回失敗し、3回目で合格できました。働きながら、それも通学など学校との接点が薄くなってから資格を目指すことの難しさを痛切に感じました。同じような状況で受験を考えている方もいらっしゃると思います。受験勉強についてどこまで役立つかわかりませんが、私の経験をお話しさせていただきます。

大学4年生はけっこう多忙

 私が行った東北文化学園専門学校では、精神保健福祉課程を履修する過程で群馬県にある東京福祉大学へ定期的にスクーリングに行くシステムを取っていました。同期で精神保健福祉士を目指していたのは20名前後だったと思います。グループで行動することが多いこともあって、参考書をみんなで買ったり、ファミレスで一緒に勉強したりと仲間意識はなかなか高かったと思います。

 だから十分に勉強できたかというとそんなことはなくて、単位を取得するための諸々でいっぱいになっていました。授業は楽しくて興味をもって受けていたのですが、資格試験を意識してまじめに勉強していたかとなると、ちょっと自信がありません。このコーナーに登場されている方の記事を見ても、同じような感じだなあと思います。レポート提出やら就職活動やら、勉強に集中しきれない理由はプライベートも含めてさまざまあって、よほど強い気持ちをもって取り組まないと、大学4年生の受験勉強というのは思うように進まないとの実感があります。

合格はたせず就職へ

 受験勉強は、11月くらいから中央法規出版のワークブック(『精神保健福祉士国家試験受験ワークブック』)と過去問(『精神保健福祉士国家試験過去問解説集』)を使って、重要な箇所を書いて覚える方法で進めました。受験勉強の後半からは特に時間もかけて知識の習得に努力もしました。手応えもそれなりには持てていたと思うのですが、国家試験の出来は悪く、共通科目は自己採点で20点くらい届きませんでした。完敗でした。

 就職は、実習先の地域生活支援センターから声をかけていただき、資格は取れなかったが来年の試験で取るという話で入職しました。来年は必ず合格するぞと心に決めて、社会人1年目に漕ぎ出したのでした。

仕事を始めてペースダウン

 勤め始める前は、仕事をやりながら勉強もコツコツ積み重ねてと考えていました。でも、就職してすぐにそれが甘かったと気づかされることになりました。地域生活支援センターでしたので、何かをいつまでにやらなくてはならないと時間に追われるようなことはありませんでしたが、社会で働くことそのものが初めてで、マナーを学んだり職場に馴染んだりといった社会人としての土台をつくるところに気持ちも力もけっこう使い、一日が終わるとヘトヘトでした。相談業務ももちろん初めての経験で、先輩に教わり、厳しく指導もされ、自分の考えを全否定されて悔しくて車の中で泣く日もありました。

 毎日がそのように仕事一色に染まると、なかなか勉強には手がつかないものです。受験への意気込みがあった4月と5月は仕事の後、がんばって教科書を開いていましたが、6月から10月の5カ月くらいはまったくの手つかずになり、仕事があることを理由にしていたら最後まで勉強しないことが楽に予想できました。学校を卒業してしまっているので、情報もなく、周囲の動きに刺激されることもなく、勉強のスイッチが入りづらいのもよくありませんでした。

2回目のチャレンジも実らず

 幸い、卒業仲間で私と同じように昨年合格できなかった友達が二人いて、その友達たちと勉強する機会をつくったり、一緒に大学時代の先生のところに行って仕事のグチを聴いてもらいつつ国試について教えてもらったりといったことができたので、それが救いでした。

 本格的な受験勉強のスタートは11月くらいでした。勉強の質・量としては2回目が最も充実していたと思います。一度は勉強していたことだったので、知識を確認する形から法改正の内容やより詳しい知識を学んでいくというように、学習のステージが一つ進んだ感触がありました。勉強をするのは夜の9時くらいから平均2時間、重要語句を書き出し、それらの内容をそらで言えるくらい暗記もしました。

 しかし、2回目のチャレンジも実りませんでした。万全の状態で臨んだとはいえませんが、それなりに勉強した手応えはあったので、自信が揺らいであきらめたくなりました。職場からは資格取得を絶対の条件とまで強くは求められていませんでしたが、さすがに申し訳ない気持ちにもなりました。

気持ちを楽に切り替えて

 3年目は、あきらめの気持ちにも少し後押しされて、楽に考えることにしました。勉強のやり方として大きく変えたのは、覚えようとしないことでした。1年目、2年目は、重要な語句が何で、その内容がどういうことで、それらがどう関係し合っているかということを、機械的に頭の中に入れようとしていました。試験に出るんだから、とにかく覚えなくてはいけないのだと。その考え方をやめにして、書いてあることをよく理解するようにしてみました。ノートを使ってたくさん書くということもしなくなりました。これはこれで勉強をした感覚を持てるので、モチベーションの面では大事な要素と思いますが、私の場合、還ってくる成果があまり大きくなかったことを考えると、労力に見合っていないと思いました。もっと気楽に、読んで内容を理解できたからそれでいい。むしろその奥行きの部分に関心を持てることや、関心を持った部分へと理解を深めていくことのほうが勉強は面白いし、楽だとも思いました。

 合格できなくてもいいとはまったく思っていませんでしたが、2回落ちているので結果に対する構えみたいなものはずいぶん違っていたと思います。試験前には風邪をひかないようにして、気楽に冷静に試験当日を迎えられたようです。

念願の専門資格を取得

 試験の手応えとしては2回目のときのほうが数段よく、これはまた落ちたかなと思いました。自己採点ではどちらともとれました。結果はインターネットで、職場の皆が見ているなかで確認しました。自分の番号を見つけたときはうれしくて、何よりほっとした気持ちが大きかったです。

 今振り返ると、さすがに3回続けて落ちるというのは、職場としても自分の気持ちとしても厳しかったはずで、きっともう後がない状況だったんだなあと思います。

 学生の方は、学生生活でいろいろ忙しくても、がんばって学内にいるときに取ったほうがいいです。合格のしやすさがまったく違ってきます。社会人の方にお伝えしたいのは、今のご自分の仕事と重ね合わせて勉強すると、モチベーションが上がってくるということです。すでに職に就いていて精神保健福祉士の資格を目指すということは、目的とする何かがあるのだと思います。仕事のなかで遭遇したことを受験勉強のなかで整理できたり、より深い理解に至れたりなど、かけがえのない経験ができると思います。

仲間として一緒に

 精神保健福祉士の具体的な仕事は、やはり働いてみないとわからないと思います。大変なことはいろいろありますが、得られる喜びは大きいですし、やりがいも満点です。社会の中で起こっている、人にかかわるさまざまなことを考えるきっかけもたくさん得られると思います。

 今、私は職場を地域から病院に移し、入院されている方が地域に戻って自分らしく生活できるためのお手伝いをさせていただいています。病院スタッフや地域のさまざまな関係者が協働して実現できることだと感じています。それを、これから資格を取得される方々と力をあわせて進めていけたらと思っています。ぜひ、一緒にやっていきましょう。

勤務する宮城県立精神医療センター・医療福祉相談科の同僚です。時々はグチも言い合いながら、毎日がんばっています