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介護福祉士のしごと体験記

介護福祉士を取得し、これから新たに働くという方、もう働いているけれども有資格者として新たな1歩を踏み出すという方。
それぞれにいろいろな不安があると思います。


そこで、みなさんよりも一足早く介護福祉士になられて現場で活躍されている/キャリアアップされた方々にお話を伺いました。
ここでのお話を参考に、新たな職場・キャリアでのイメージを膨らまし、不安解消に役立てていただければと思います!


介護福祉士として障害福祉の現場で働くということ

 高齢者の介護というイメージのある介護福祉士ですが、障害のある人のサポートでも活躍をしています。
 もともと障害者施設などで働きたいと思い、介護福祉士試験を受験された方もいると思いますが、中には障害のある人への介護についてイメージがわかない方もいるかもしれません。

 第3回は重症心身障害児や重度身体障害者の通う事業所の運営を管理している望月さんのお話を伺いました。障害福祉の現場で働くということはどのようなことなのか、具体的にイメージができるはずです。

※記事本文に写真が入っていますが、顔写真の掲載にあたっては事前に利用者・保護者の同意を得ています

望月太敦さん

 介護福祉士の資格取得を目指している皆さま、はじめまして。日本介護福祉士会理事の望月と申します。
私は現在所属する法人で、未就学の重症心身障害児(以下、重症児)が通う児童発達支援事業所の管理者ならびに重度身体障害者が通う生活介護事業所等の運営を管理しています。

 さて、介護福祉士の仕事は、高齢者介護の現場をイメージされる方が多いのですが、障害福祉の現場で活躍している方も多いことをご存知でしょうか。

 また、障害福祉の現場で働くことを考えている皆さまにおかれましても、施設系の障害者支援施設、訪問系の居宅介護や重度訪問介護など、日中活動系の生活介護や療養介護など、他にも就労継続支援(A型・B型)など訓練系・就労系の事業所もあるため、介護福祉士としてどのような業務があるのか分からない方もいると思います。

 そのため、障害分野の仕事に興味がある方に向けて、私の事業所で働いている介護福祉士の仕事内容を紹介させていただければと思います。

利用者の「生活」と「日中活動」を支える生活介護事業所

 生活介護は、主に昼間、入浴、排せつ及び食事等の介護や家事、生活等の相談・助言や必要な日常生活上の支援、創作的活動・生産活動の機会やリハビリテーション等の援助を行うとされています。

 生活介護で働く多くの介護福祉士は、利用者へ直接支援をする生活支援員として勤務しています。当事業所の生活支援員の役割は、大きく分けて「生活面での支援」と「日中活動の支援」の2つが挙げられます。

障害特性に応じた生活支援

 「生活面での支援」は、食事や排泄、移乗、入浴などの生活における支援が主になりますが、高齢者の支援とは、異なる点があるため注意が必要です。
 高齢者の多くは、一度獲得した能力が何らかの病気や障害によって介護が必要となっています。食事を例に挙げると咀嚼や成人嚥下等の摂食機能を獲得し、介護を必要とする前は自分で食事が出来ていた方が高齢になり、介護を必要としているケースがほとんどです。

 一方で、先天性の疾患により障害のある方の場合、咀嚼や成人嚥下を獲得していないこともあります。
 私たちは乳児期に離乳食を食べ、次第に常食へと移行していきますが、食事を取り込む方法は本能的に自然とできるようになるものではありません。
 そのため、口唇をどのように使い、食事を取り込むのかという部分についても、利用者に合わせた支援が必要になります。つまり利用者個々の成長発達過程を踏まえた介助が必要となります。

生産活動(名刺に点字を打つ作業)

幅広い日中活動の支援

 続いて「日中活動の支援」は、利用者が参加する創作的活動や生産活動に関する支援になります。当事業所では、制作やレクリエーション、運動、生産等の活動を実施し、利用者の楽しみのほか、生涯学習や就労に向けた支援にも力を入れて取り組んでいます。

 日中活動については、事業所毎に様々なプログラムがありますので、ご興味のある事業所でどのような活動をされているのか、お調べいただくことも勉強になると思います。

園芸活動(野菜づくり)

未就学の子どもを対象とした児童発達支援~介護福祉士に求められる保育や教育の視点~

 介護福祉士の受験勉強の中で、重症心身障害について学んだことがあると思います。
 重症心身障害とは、重度の知的障害と重度の肢体不自由の重複障害の状態で、医学的診断名ではありません。
 福祉を必要とする上で行政上の措置を行うための定義であり、国は判定基準を明確に示してはいませんが、大島の分類で判定することが一般的です。

ブドウ狩りごっこ

 障害のある子どもを支援する通所事業所として、児童発達支援と放課後等デイサービスがあります。
 児童発達支援は、保育園や幼稚園等に通いながら療育を受ける事業所から、重症児など重い障害のある子どもが通う事業所まで様々です。

 介護福祉士の有資格者が勤務する児童発達支援事業所は、おそらく介護が必要な子どもを対象としていると思いますが、対象年齢は未就学の子どもとなりますので、現場で働く上では、介護福祉士の養成に不足しがちな保育や幼児教育の視点を学び、支援に活かすことも求められます。

お正月の書初めの様子

 一方、放課後等デイサービスは、学齢期の子どもを対象として、小学1年生から高校3年生まで利用する事業所になります。

 放課後等デイサービスも事業所ごとに様々な障害のある子どもを対象としていますが、肢体不自由特別支援学校の子どもたちが利用する事業所等、介護が必要な子どもたちが利用する事業所では介護福祉士が働いています。
 学齢期の子どもを支援する上では、学校でどのようなことを学んでいるのか関心をもつことも大切です。

様々な素材をつかった感触遊び

0歳から100歳まで支える介護福祉士

 重症児の数は、医療の進歩充実により減少するよりも、むしろ増えていると言われています。多くの重症児は、NICUから小児科を経て退院し、在宅に戻り生活をしています。

 介護福祉士が活躍している分野は、規模の大きさから高齢者分野が中心と思われがちですが、障害分野や特別支援学校の学校介護職員、私のように未就学の重症児を対象としている事業所などもあり、0歳から100歳までを支えている専門職です。

 対象児者においては求められる専門性に違いがあり、子どもたちへの支援においては、学齢期では特別支援教育に関する視点、未就学であれば保育や幼児教育に関する視点も必要となります。

 高齢者への介護と成長発達期の介護では求められる専門性に違いはありますが、介護を必要とする方のライフステージに合わせた支援ができる介護福祉士の役割は大きいと考えています。
 障害者や障害児の分野においても支援者が不足しています。障害福祉の現場で働きたいとお考えの皆さま、ぜひ、共に介護福祉士として実践を積み上げていきましょう。

社会福祉法人三育ライフ
杉並エリアマネージャー
望月太敦
(所属・肩書は取材当時のものです)