石橋先生の受験対策講座
忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。
- プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)
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介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。
第38回 生活支援技術(4) ~排泄関連など~
前回に続いて今回も、生活場面ごとの「生活支援技術」を学びましょう。
自立に向けた入浴・清潔保持の介護(続き)
- ○自立度が高く一人で入浴できる利用者は、自尊心や羞恥心への配慮などの点で、できるだけ一人で入ってもらえるように心がける。一部介助を要する利用者においても、転倒など安全に留意しながら、できることは自分で行ってもらい、自立への満足、自信を感じられるような支援が大切である。浴槽の出入りは、浴槽の縁やバスボードにいったん座ってもらうとよい(第26回に出題)。
- ○入浴ができない利用者には、全身清拭、部分清拭、陰部洗浄を実施する。使用するタオルの温度を適温にするために、タオルをつける湯の温度は、55~60度くらいにする。清拭の際、四肢は末梢から中心(中枢)に向かって拭くのを原則とし、背部を拭くときは健側を下にし、腹部は腸の走行に沿って「の」の字に拭く。また、足浴(部分浴)も、足先だけでなく膝に近い下肢全体を、37~39度くらいのぬるめの湯につけて洗うと、全身の爽快感が得られ、安眠を促す効果がある。ベッド上で足浴を実施するとき、洗う側の足関節を保持しながら洗う。手浴は、温めて手指を動かすことで拘縮の予防につながる(第25回、26回、31回、32回に出題)。
第25回では、乾燥した耳垢(耳あか)は綿棒で湿らせてから取るといった、耳、鼻の清潔保持の介護について出題されました。第34回では、耳垢の状態を観察したことを適切とする介護福祉職の対応や、入浴関連用具の使用方法、シャワー浴の介護について出題されました。また、第25回、31回では、すすぐ前に、タオルで余分な泡を拭き取るといった、ベッド上での洗髪の介護について出題されました。
自立に向けた排泄の介護
- ○気持ちよく安心して排泄できるよう、介護者は言葉や態度に気をつけ、プライバシーや羞恥心に配慮する。排泄時の姿勢は、足底が床にしっかりつき、前傾姿勢が可能な座位がよい。利用者が便座に移乗したら、座位が安定していることを確認する(第33回に出題)。
- ○排泄動作の自立度に合わせた介助を基本として、安全のため、トイレには必要に応じて手すりを設置する。転倒の危険性などから、トイレの利用が難しい場合は、ベッドサイドでポータブルトイレを活用する。ポータブルトイレは、安定感があり、足が引けて立ち上がりやすい構造のものを選ぶ。必要に応じて、ベッドにスイングアーム介助バーを設置すると、移乗が安定する(第26回、28回、33回に事例問題として出題。第32回では、右片麻痺のある利用者が、ベッドサイドでポータブルトイレを使用するときの設置場所について出題)。
- ○ポータブルトイレへの移乗も困難であれば、ベッド上で尿器、便器を用いる。差し込み便器を使用する際には、肛門部が便器の中央にくるように気をつける。また、使用前の便器は温めておく(第24回、31回に出題)。
- ○尿意、便意がわからないなどの状態のときは、おむつを使用する。排泄の間隔を把握し、汚れたおむつは、できるだけ早く交換することが大切であるとともに、おむつは最後の手段と考え、安易に使用してはならない。どうしても必要な場合は、利用者の尿量や生活スタイルに合ったものを使用する。また、陰部洗浄をする場合は、ぬるま湯を使う。使用後のおむつは、汚れを内側に丸めて片付けるなどの配慮も大切である(第24回、27回に出題)。
- ○排泄後は陰部を清潔にし、女性の場合は、肛門部から前方に向かって拭くと、尿道口などを汚染して、膀胱炎の原因になるので、前(恥骨部、会陰)から肛門に向かって拭く(第30回に出題)。
- ○排泄物を観察し、異常があるときには医療関係者に連絡する。また、下痢に際しては、水分と電解質が失われ、脱水を起こしやすいので、経口摂取が可能であれば白湯や室温のスポーツドリンクを補給する。下痢が続く場合は、受診につなげ、排泄物は感染源として取り扱う(第26回、29回に出題。第31回では事例的な問題として出題)。
- ○尿失禁は、膀胱から尿を無意識に漏らす状態をいう。腹圧性尿失禁には、骨盤底筋を鍛える体操が効果的である。機能性尿失禁に対しては、運動機能低下の状態や原因を把握し、動作の練習やトイレ環境の改修、障害に合った尿器・便器、パッドなどの福祉用具の選択、簡単な操作で着脱できる衣類の工夫、介護力の充実を図る。認知機能が低下している利用者の場合には、尿意やトイレの場所、移動、便器の使用、衣服の着脱、排泄の後始末、便器の洗浄などが理解できるかを確認し、必要に応じて排泄パターンに合わせ、利用者のサインを見つけて、早めのトイレ誘導を行い、介助する(第27回、34回に出題。第24回、31回では事例問題として出題)。
- ○便秘の予防として、排便反射による便意を逃さない、腹圧をかけやすい姿勢で便座に座るよう促すとともに、座位がとれる身体機能を維持する、水分摂取量を保つ、海藻やさつまいも、ごぼうの煮物など食物繊維を多く含んだ食品を摂取する、咀嚼力を高めるために義歯を点検する、散歩などの適度な運動を行うことなどがある(第25回、29回、34回に出題)。
清潔保持や排泄において、第25回では、全身清拭や洗髪、寝たきり高齢者のおむつ交換、留置カテーテルへの配慮など、全介助を想定した設問が複数出題されました。第29回では、寝たきり状態の夜間の介護負担軽減に役立つ福祉用具の選定について、出題されました。また、関節リウマチの人の関節保護の方法として、便器に補高便座をのせる(第27回に出題)、血液透析(人工透析)を受けている人は、柔らかいタオルで体を洗い、透析直後の入浴は控える(第27回、33回に出題)、消化管ストーマを造設している人の生活支援に関して、装具を外して入浴できる(第28回に出題)、排泄物がパウチの3分の1から2分の1程度たまったら処理するように助言する(第30回に出題)、自己導尿を行う場合、座位が不安定な場合は体を支えるなど座位姿勢で行えるように支援する(第28回、33回に出題)、心臓機能障害がある人は、半身浴にする(第32回に出題)、膀胱留置カテーテルを使用している利用者への対応として、カテーテルが折れていないことを確認する(第32回に出題)、四肢麻痺の利用者の手浴では、手関節を支えながら洗う(第33回に出題)など、現場の重度化、医療依存度の高い利用者の増加に伴って、必要とされる技術を、過去問解説集などで確認してください。
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