石橋先生の受験対策講座
忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。
- プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)
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介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。
第29回 介護の基本(2)~理念や視点~
前回から、「介護」領域に入りました。
今回は、前回に引き続き、「介護の基本」という科目を学習します。
理念や視点
本講座の第5回(参照)や第28回(参照)で学習したように、利用者の尊厳を保持し、自立を支援する介護を行うにあたっては、ノーマライゼーション、リハビリテーションの理念や、ICFの視点(本講座第18回参照)を身につけ、実務に反映していくことが大切です。
リハビリテーションやICFは、本科目でも出題されています。リハビリテーションについては、次のような領域に分類できることも押さえておきましょう。
- ・医学的リハビリテーション:医療保険制度下の急性期、回復期のリハビリテーションや、介護保険制度下の訪問リハビリテーションや通所リハビリテーション、介護老人保健施設などでの維持期(慢性期、安定期)のリハビリテーションに相当する(第24回に出題。第31回では「障害の理解」で出題)。
- ・教育的リハビリテーション:障害をもつ児童の自立や社会参加を促すための教育的な支援で、特別支援学校(障害をもつ人のための学校)などで行われる。
- ・職業的リハビリテーション:障害者総合支援法の下での就労移行支援などに相当する(第25回に出題)。
- ・社会的リハビリテーション:交通機関や建築設備などにおいて、高齢者や障害者にとって、バリアになる要因を減少させ、社会参加を可能とするアプローチを指す。
また、介護実践におけるリハビリテーションの考え方として、生活の視点を重視することが、第26回で出題されました。第33回では、高齢者のリハビリテーションに関して、機能訓練は、1回の量を少なくして複数回に分けて行うことが適切、と出題されました。
さらに、次のような理念も理解しておきましょう。理念を踏まえた事例問題も、出題されています。
- ○QOL(クオリティ・オブ・ライフ)は、生活の質、人生の質、生命の質とも訳され、生活者の満足感、安定感、幸福感を規定する諸要因の質をいう。介護に直面することで、QOLが低下するおそれがあり、介護福祉職は、利用者の自立的な生活を支え、拡げ、生活の質の回復、維持、向上を図ることが求められる。そのためには、利用者のニーズや生活環境を総合的にみて、介護の方針を検討する。また、利用者の身体的側面だけでなく、心理的・社会的な面も含む支援を行う(第27回、29回に出題)。
- ○利用者の主体性を尊重するために、自己決定の原則を踏まえ、利用者に十分な情報を提供し、利用者本人が選び、決めてもらえるように支援する。利用者はエンパワメントアプローチ(利用者のもっている力に着目し、その力を引き出し援助する)をされることで、自己決定能力が高まる(第28回に出題)。
- ○自立支援に際しては、利用者が生活の中で、どこまで自分でできるかを見きわめて、利用者のもっている力を活かし、福祉用具なども活用しながら、介護者は、利用者のできないこと、危ないことを手助けする。何でもかんでも手助けすることが良い介護ではなく、利用者の意見や希望を取り入れて介護を提供する(第34回に出題。第25回、28回では事例問題として出題)。
- ○レクリエーションは、楽しさや心地よさを醸し出す活動や参加を通して、人間性の回復を図ることをいう。レクリエーション援助で重要なことは、利用者に合ったゲームや行事などの活動プログラムの提供に留まらず、利用者のQOLの向上を目標に置くことである。なお、リハビリテーション活動で、レクリエーション的な要素を組み合わせることもある(第24回に出題)。
第27回では、介護を必要とする人の個別性・多様性を意識した対応として、年齢をもとに、生きてきた時代を考え、体験談を聞くことが適切、と出題されました。また、第28回では、施設での介護のあり方や、利用者がその人らしい生活を実現できるように、介護福祉職が把握すべき情報について、出題されました。第33回では、施設利用者の多様な生活に配慮した介護福祉職の対応について、出題されました。
なお、介護保険法において、身体拘束は原則として禁止されています。第29回では、「身体拘束ゼロへの手引き」(2001年〔平成13年〕厚生労働省)の内容について、第25回では、やむを得ず身体拘束を行った場合には、拘束の理由などの記録が必要になることが、出題されました。
介護を必要とする人の生活
本科目では、介護を必要とする人の生活状況などについて、本講座の第7回(参照)で学習したような、統計的な知識が出題されます。以下の事項に加え、テキストや過去問解説集で、可能な限り押さえてみましょう。
- ○2019(令和元)年の国民生活基礎調査によると、介護保険法の要介護認定を受けた人(要介護者、要支援者)において、介護が必要となった原因は、要介護者では、認知症が24.3%、脳血管疾患(脳卒中)が19.2%と多かった。要支援者は、関節疾患が18.9%で最も多く、次いで高齢による衰弱が16.1%となっている(第31回に「認知症の理解」で出題)。
- ○同調査によると、要介護者等からみた主な介護者の続柄は、54.4%が同居している者となっている。その内訳は、配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%。性別は、男性35.0%、女性65.0%と、女性が多くなっている。年齢は、男女共に60歳以上の割合が約70%と、半数を超えている(第27回に出題)。
- ○同調査によると、同居している主な介護者が1日のうち介護に要している時間は、「必要な時に手をかす程度」が47.9%で最も多く、「ほとんど終日」は19.3%となっている。また、要介護度が高まるほど、同居している主な介護者の介護時間は増大している(第24回に出題)。
第25回では、内閣府が2008(平成20)年度に実施した「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」にて、地域活動に参加しなかった理由として「健康・体力に自信がないから」が最も多かったことが、出題されました。また、第31回では、2012(平成24)年度「高齢者の健康に関する意識調査結果」(内閣府)の介護を受けたい場所に関して、「自宅で介護してほしい」との回答が最も多かったことが、出題されました。
いろいろな統計がありますね。
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