石橋先生の受験対策講座
忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。
- プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)
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介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。
第27回 医療的ケア
こんにちは。ここまで、「こころとからだのしくみ」領域の4科目について学んできました。
医療系の領域・科目として、第29回の国家試験から、「医療的ケア」領域(科目名も「医療的ケア」)が追加されました。医療的ケアについては、実務者研修等で学習した内容や、演習した事柄を振り返ってください。そして、以下のようなポイントを押さえましょう。
制度上の位置づけ
- ○高齢化などの社会的背景から、介護福祉士や介護福祉職等が喀痰吸引や経管栄養を行う必要性が生じ、2011(平成23)年に社会福祉士及び介護福祉士法を改正し、介護福祉士等が実施可能な行為として位置づけた(第29回に出題)。
- ○社会福祉士及び介護福祉士法では「医師の指示のもとに行われる行為」として、以下の喀痰吸引等の行為(医療的ケア)を規定している(第34回に出題)。
- ・口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部の喀痰吸引
- ・胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養(栄養剤の注入)
- ○介護福祉士等が行う喀痰吸引は、咽頭の手前までを限度とする。また、経管栄養において、胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことの確認や、経鼻経管栄養の実施の際に、栄養チューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認は、医師または看護職が行う。なお、喀痰吸引等を行うための指示書は、医師が作成する(第29回、30回、32回、33回に出題)。
- ○介護福祉士等が医療的ケアを行うために必要な、喀痰吸引等研修は、基本研修と実地研修からなり、喀痰吸引等を行うためには、実地研修を修了する必要がある(第32回に出題)。
喀痰吸引
- ○ちりや異物をとらえた余剰分泌物を痰といい、器具を使って痰を吸い出すことを、喀痰吸引という。
- ○喀痰吸引が必要な状態とは、痰が増加している状態や、咳をするための喉の反射や咳の力が弱くなり、痰を排出しにくい状態、痰がかたくなり排出しにくい状態を指す。吸引が必要な状態かどうかの判断・確認は、看護職等が行う。
- ○吸引器は、陰圧を起こすモーター部分と、痰をためる吸引びん、痰を吸い出すためのホース部分(接続チューブ)から構成されている。吸引を行う際は、接続チューブに吸引チューブを接続する。吸引チューブの選定は、医師・看護職が行う。
- ○吸引前の準備として、利用者に吸引の必要性について説明し、実施することの同意を得る。そして、利用者の上半身を10~30度挙上するなど、吸引をできる限り楽に受けられるような姿勢を整える(第29回に事例問題として出題)。
- ○吸引の実施に際し、清潔操作の順番を間違えると、消毒剤や保管液すべてが汚染されるため、注意が必要である。なお、気管カニューレ内部の吸引では、滅菌された洗浄水を使用する(第33回に出題)。
- ○吸引時、吸引チューブをとどめておくと、粘膜への吸いつきが起こる場合があるため、吸引チューブを回すなど、吸引圧が1か所にかからないように気をつける。吸引物は、吸引びんの70~80%になる前に廃棄する(第32回に出題)。
- ○喀痰吸引により利用者に起こり得る危険な状態として、呼吸状態が悪くなる、顔色が悪くなる、嘔吐する、出血するなどがある。このような場合は、吸引を直ちに中止する(第32回に事例問題として出題)。
- ○吸引中・吸引後の利用者の状態や、吸引した物の量や性状などについて、異常の有無にかかわらず、看護職に日常的に報告し、連携をとる。気管切開をして人工呼吸器を使用している利用者の場合、吸引終了後は、人工呼吸器の作動状況を確認する(第31回に出題)。
第30回では、喀痰吸引を必要とする利用者に対する生活支援として、室内の空気を清浄に保つことが適切、と出題されました。また、1回の吸引で取り切れなかった痰を、再度、吸引を行うときの対応として、呼吸が落ち着いたことを確認することが適切、と出題されました。第34回では、指示された吸引時間よりも長くなった場合、吸引後に注意すべき項目として、動脈血酸素飽和度が適切、と出題されました。
経管栄養
- ○経管栄養とは、消化管内にチューブを挿入して栄養剤(流動食)を注入し、栄養状態の維持・改善を行う方法である。
- ○経管栄養が必要な状態とは、飲み込みのはたらきが低下している状態や、栄養が不十分と推測される状態をいう。
- ○胃ろう経管栄養は、手術(内視鏡)により腹壁から胃内にろう孔を造設し、チューブを留置して栄養剤を注入する。胃ろう栄養チューブには、4つの種類(ボタン型、チューブ型のそれぞれバルーンタイプとバンパータイプ)がある。ボタン型はチューブ型に比べて、体外に出ている部分が少ないので自己抜去しにくい(第25回に「こころとからだのしくみ」で出題)。
- ○栄養剤は、利用者の状態に合うものを、医師が選択する。食道への逆流を改善することが期待できる半固形タイプの栄養剤は、基本的に経鼻経管栄養では使用せず、胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養で用いる(第34回に出題)。
- ○経管栄養の必要物品として、イルリガートル(イリゲーター:栄養剤を入れる容器)、栄養点滴チューブ、カテーテルチップシリンジ、計量カップ、点滴スタンドなどがある。
- ○栄養剤の注入時は、上半身を30~45度起こして、逆流を防止する。安定して座位の保持ができる人は座位で行うなど、医師や看護職の指導のもとで行う。なお、イルリガートル内の栄養剤の液面は、胃から50cm程度高くする(第31回に出題。第30回では事例問題として出題)。
- ○経管栄養の実施に際して、クレンメを開き、医師の指示どおりの滴下数に合わせるため、栄養点滴チューブの点滴筒の滴下と時計を見ながら、1分間の滴下数を合わせる。栄養剤の注入速度が速いと、下痢を起こすことがある。下痢は、冷蔵庫に保管していた栄養剤を指示どおりの温度にせずに、そのまま注入したときにも起こる(第29回、32回に出題)。
- ○嘔吐や食道への逆流を防止するため、注入終了後も、上半身を起こした状態を30分から1時間位保つことを、利用者にも説明する。
- ○栄養剤の注入では、実施時間、栄養剤の注入方法、栄養剤の種類、量などを記録する。また、注入時間や利用者の身体状態、表情、意識状態なども、実施後すみやかに記録する。
- ○経管栄養チューブ挿入部周囲が赤くなったり、滲出液が出たり、痛みがあったり、出血したり、悪臭がする場合などは、医師や看護職に連絡する。また、チューブが抜けた時なども、注入は行わずに、看護職に状況を報告する(第29回に出題)。
- ○経管栄養を実施している利用者で、口腔から食事を摂っていない人は、唾液の分泌による自浄作用が低下し、細菌感染が起こりやすい。従って、口腔ケアをしっかり行う。なお、刺激による嘔吐や嘔吐物による誤嚥を防ぐため、経管栄養が終わってすぐの口腔ケアは避ける(第26回に「生活支援技術」で出題)。
第31回では、栄養剤を利用者のところに運んだあとの最初の行為は、「本人であることの確認」、と出題されました。「認知症の理解」では、重度の認知症高齢者の胃ろう栄養法に関して、本人の意向や価値観の把握に努め、本人にとっての最善を関係者で判断することが適切、と出題されました。また、「こころとからだのしくみ」では、胃ろうに関して経口摂取も併用できることが出題されました。第34回では、栄養剤の注入後に白湯を経管栄養チューブに注入する理由として、チューブ内の栄養剤を洗い流す、と出題されました。
医療的ケアの問題を正答するにあたっては、医師や看護職の指示や指導、確認のもとで行い、通常の介護業務以上に、医師や看護職に報告、連絡し、密に連携をとっていることを適切(○)とし、少しでも連携を怠っている設問は不適切(×)としましょう。また、喀痰吸引や経管栄養を必要としている状態や、使用する器具のしくみや名称、具体的な実施手順や注意点、利用者に起こり得る危険な状態などを把握しておきましょう。
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