石橋先生の受験対策講座
忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。
- プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)
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介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。
第26回 こころとからだのしくみ(5)~排泄、睡眠、終末期関連~
今回は、「こころとからだのしくみ」の最終回です。
前回に続いて、生活場面ごとに関連した、こころとからだのしくみについて勉強しましょう。
排泄に関連したこころとからだのしくみ
- ○排泄は、からだの老廃物を外に出す生理現象で、人間が生命活動を行ううえで不可欠な営みである。
- ○トイレに行って排泄するという生活の行為は、「尿意・便意を感じ⇒トイレの場所や使用方法を理解し(認知機能)⇒トイレまで移動し、扉を開閉し、衣服を着脱し(運動機能)⇒排尿・排便する(泌尿器機能・消化器機能)」という一連の流れからなっている。
- ○排尿、排便にも、自律神経がかかわっている。排尿において自律神経は、膀胱と尿道の働きを調節しており、蓄尿期は、興奮するときに働く交感神経が優位で、活動時に尿を漏らさずにいられる。一方、排尿の際は、リラックスするときに働く副交感神経が優位となる。排便において、蓄便時は、交感神経が優位で直腸を弛緩させ、肛門を締めている内肛門括約筋と外肛門括約筋を収縮させている。なお、排便は、前屈姿勢でいきむことで直腸が収縮し、肛門括約筋が緩み、便を排出することができる(排便時には、外肛門括約筋を意識的に弛緩させる)。便座に座って足底を床につけた前傾姿勢は、腹圧を高めるために有効である(第31回に出題。第30回では「生活支援技術」で出題)。
- ○排尿障害には、急に強い尿意を感じて我慢できなくなる切迫性尿失禁や、骨盤底筋群の機能低下により、くしゃみや咳をしたときに尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁などの蓄尿障害(尿をためる機能の障害)、溢流性尿失禁などの排尿困難、認知症の人によくみられる機能性尿失禁に相当する排泄行為の障害がある(第25回、26回、28回に出題。第29回、32回、33回では事例問題として出題)。
- ○便秘とは、排便が順調に行われず、排便回数が少なくなり、排便に苦痛を伴う状態をいう。大腸の運動機能や反射の異常による機能性便秘、大腸がんなどの病気により大腸そのものが狭くなり便が通過しにくい器質性便秘がある。機能性便秘の原因として、麻薬性鎮痛剤など薬の副作用によるもの(医原性便秘)や、長期臥床などによる腹筋の筋力低下と、それに伴う大腸の蠕動運動の低下、食物繊維の摂取不足によるもの(弛緩性便秘)などがある(第25回、27回、30回、32回、33回に出題。第31回、33回では「発達と老化の理解」で出題)。
第30回の「生活支援技術」では、機能性便秘の一つである直腸性便秘(直腸に便があるにもかかわらず、排便反射が弱く、便意をもよおさない)のある高齢者の介護として、朝食後、トイレに誘導することが適切であると、出題されました。また、第34回では、ブリストル便性状スケールについて、出題されました。
休息・睡眠に関連したこころとからだのしくみ
- ○生物には体内時計があり、地球の自転による環境の変化を予測して、生活における活動と休息のリズムをつくっている。その日の睡眠の長さや深さは、目覚めていた長さや疲労の程度により決まり、その睡眠に適している時間帯が体内時計の働きにより決められる。体内時計を1日24時間の周期に修正する最も強力な因子は、日光である(第30回に出題)。
- ○睡眠にはリズムがあり、浅い眠りのレム睡眠(筋肉は弛緩して、からだはぐったりしているのに、脳は覚醒に近い状態で夢を見ていることが多い)と、最も深い眠りのノンレム睡眠(ある程度の筋緊張を保ち、ぐっすり深く眠りながら大脳を休ませ回復させる)を、約90~110分周期で繰り返すとされている(第24回、27回、33回に出題)。
- ○睡眠をとることは、からだの組織の成長や修復を促進する成長ホルモンの分泌や、深い眠りによる免疫系の活動、脳で収集する情報の整理などの機能を維持するために大切である。なお、睡眠は、深くなるにつれて心拍数が減少する。睡眠を促進するホルモンとして、メラトニンがある(第26回、28回に出題)。
第32回では、風邪薬など抗ヒスタミン薬の睡眠への影響として、夜間に十分睡眠をとっても、日中に強い眠気があることが出題されました。第34回では、熟睡できない利用者において、日常生活で改善する必要があるもの(就寝前の夜食)について、事例問題として出題されました。
人生の最終段階のケアに関連したこころとからだのしくみ
- ○死亡直前(臨終期)にみられる身体の変化として、尿量が減少し、尿が濃くなる。加えて、手足が冷たくなり、皮膚が紫色になる、下顎呼吸の出現や、喉からゴロゴロする音が聞かれることなどがあげられる(第26回、30回、32回に出題)。
- ○死後の身体的変化には、死後20~30分位から始まる死斑や、死後2~4時間で始まる死後硬直などがある(第33回に出題)。
- ○生物学的な死は、死の三徴候と呼ばれる心停止、呼吸停止、瞳孔散大など、生命維持活動を行ってきた生体のすべての生理機能が停止、回復不可能な状態をいう。一方で、法律的な死(脳死)は、脳の機能がほぼ完全に失われ、回復不可能な状態をいう。
- ○尊厳死とは、人としての尊厳(本講座第5回参照)を保ちながら死を迎えることをいう。人工呼吸器など医療器具につながれ、延命だけを目的とすることを拒むもので、事前の本人の意思表明を含め、家族が事前に本人の意思を確認しておくことが重要である。なお、終末期において、意思疎通が困難になったときのために、希望する医療ケアを記載した書類のことを、事前指示書という(第29回に出題。第34回では事例問題として出題)。
- ○死亡とは、医師が死を診断した時点をいう。医師が死亡を確認するまで、死亡とは認められない。
- ○キューブラー・ロス(Kübler-Ross,E.)は、死にゆく人が死を受容する過程を「否認⇔怒り⇔取り引き⇔抑うつ⇔受容」の5段階に理論化した。例えば「取り引き」は、「つらい治療を我慢して受けるので助けてほしいと願う」ことなどに該当する。5段階は一方向ではなく、必ずしもこのとおりにたどるものではない。本人の生活歴や家族歴、死に向かう原因や状況、死生観などにより、受容までの過程は多様である(第24回に出題。第27回、31回では事例問題として出題。第30回は「発達と老化の理解」で出題)。
第26回では、死別後の家族の悲嘆反応(大切な人を失ったことにより起こる感情や行動など)について、第28回では、急変した場合に第一に相談すべき連絡先について、事例問題として出題されました。また、第32回では、終末期に自分が望むケアをあらかじめ書面に示しておくこと(リビングウィル)について、出題されました。
学習おつかれさまです。
次回は、「医療的ケア」領域です。
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