石橋先生の受験対策講座
忙しい日々の中で効率よく勉強するにはどうしたら?とお悩みのあなたに、ぴったりのガイド役となるのがこのコーナーです。介護の現場にも詳しい石橋亮一先生が受験勉強のポイントを講義します。
- プロフィール石橋 亮一(いしばし りょういち)
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介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員
社会福祉法人同胞互助会にて特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、株式会社ベネッセコーポレーションにてホームヘルプサービス、居宅介護支援事業等に従事。その後、地域や学校、介護サービス事業者・施設の研修講師・アドバイザー、介護認定審査会委員、東京都第三者評価員、介護サービス情報の公表制度調査員、特別養護老人ホームの施設長等に携わる。介護福祉士や社会福祉士、介護支援専門員などの受験対策講座も数多く行っている。『福祉現場のための感染症対策入門』(中央法規出版)も執筆。
第45回 第35回介護福祉士国家試験
筆記試験を振り返って(後半)
こんにちは。今回は、「午後」の問題を振り返ります。なお、解答案については、こちらをご覧ください(社会福祉振興・試験センターによる正式な解答の発表は3月24日の予定です)。
介護の基本
介護、社会福祉分野に従事する介護福祉士のあり方などを定めている、社会福祉士及び介護福祉士法は、出題頻度の高い事柄ですが、正答できましたでしょうか。今回は、同法に規定されている介護福祉士の責務(介護等に関する知識及び技能の向上に努める)について、出題されました。
介護サービスの理解に関して、介護保険施設における専門職の役割として、施設サービス計画の作成は、施設のケアマネジャーである介護支援専門員が行います。
その他、利用者主体の考えに基づいた対応(煮物を調理するとき、利用者に好みの切り方を確認してもらった)、「求められる介護福祉士像」(介護職の中で中核的な役割を担う)、意思決定支援を意識した対応(サービスを変更したい理由について確認した)、介護の現場におけるチームアプローチ(チームメンバーの役割分担を明確にする)などについて、出題されました。また、リスクマネジメントの一環として、利用者の危険を回避するための介護福祉職の対応(食事介助をしていた利用者の姿勢が傾いてきたので、姿勢を直した)について、出題されました。
「すべての人が暮らしやすい社会の実現に向けて、どこでも、だれでも、自由に、使いやすくという考え方を表す用語」は、ユニバーサルデザインですね。
コミュニケーション技術
本科目では、利用者の老化や病気・障害の特徴、症状などに合わせたコミュニケーションについて出題されます。今回は、老人性難聴や重度のアルツハイマー型認知症に関して、事例問題として出題されました。
また、利用者の家族とのコミュニケーションに関して、信頼関係を形成するための留意点として、「話し合いの機会を丁寧にもつ」ことが適切、と出題されました。
本科目では、職員間のコミュニケーションについても問われます。今回は、介護実践の場で行われる、勤務交代時の申し送りの目的(利用者へのケアの継続性を保つ)や、ケアカンファレンスでの利用者の状況に関する報告について、出題されました。
なお、利用者とのコミュニケーションの基本として、「この本は好きですか」といった閉じられた質問などは、現場でも実践したいですね。
生活支援技術
高齢者の安全な移動に配慮した階段の要件、介護予防教室で介護福祉職が行う安定した歩行に関する助言、T字杖を用いて歩行する左麻痺の利用者が、20cm幅の溝をまたぐときの介護方法、総義歯の取り扱い、左麻痺の利用者が、前開きの上着をベッド上で臥床したまま交換するときの介護の基本、利用者が食事中にむせ込んだときの介護、テーブルで食事の介護を行うときの留意点、逆流性食道炎の症状がある利用者への助言、ベッド上で臥床している利用者の洗髪の基本、目の周囲の清拭の方法、アルツハイマー型認知症の利用者への入浴時における対応、胃・結腸反射を利用して、生理的排便を促すための介護福祉職の支援、利用者の便失禁を改善するための介護福祉職の対応、女性利用者のおむつ交換をするときに行う陰部洗浄の基本、ノロウイルスによる感染症の予防のための介護福祉職の対応、弱視で物の区別がつきにくい人の調理と買い物の支援、関節リウマチのある人が、少ない負担で家事をするための介護福祉職の助言、睡眠の環境を整える介護、利用者の入眠に向けた介護福祉職の助言、終末期で終日臥床している利用者に対する介護福祉職の対応、介護老人福祉施設に入所している利用者の看取りにおける、介護福祉職による家族への支援、利用者の障害特性に適した福祉用具の選択、福祉用具等を安全に使用するための方法など、利用者の老化や病気・障害の特徴、症状などに合わせた、身体介護技術を中心とした生活支援のための技術や知識が、幅広く出題されました。多くの設問について、学校での学習・演習・実習や受験勉強、実務経験などを通して解答できたことと思います。
今回再確認した技術などは、これからの仕事で改めて活かしていきましょう。
介護過程
本科目では、ケアプランに沿った個別援助計画を作り、計画に沿ったサービスを提供していく方法である介護過程に関して、一連のプロセスとそのポイントについて問われます。今回は、介護過程を展開する目的(根拠のある介護を実践する)、介護過程を展開した結果を評価する項目(短期目標の達成度)、居宅サービス計画(ケアプラン)と訪問介護計画(個別援助計画)の関係(居宅サービス計画の方針に沿って、訪問介護計画を作成する)について、出題されました。「自分のいる場所がわからない不安」を抱え「外出先から帰れなくなる不安への対応が必要である」軽度の認知症の利用者において、短期目標と支援内容を見直すためのカンファレンスに関する事例問題は、正答できましたでしょうか。
なお、介護過程は、介護保険制度下に限らず、障害者総合支援法の下で、相談支援専門員が作成したサービス等利用計画(ケアプラン)に沿って個別支援計画(個別援助計画)を立案・作成・実施する際にも、展開します。
今後とも、一人ひとりの利用者に対して、介護過程をふまえた、計画に沿ったサービスを提供していきましょう。
総合問題
在宅あるいは施設などで生活する利用者に関する4つの事例について、12科目に及ぶ学習で身につけた、知識、技術、理念などをふまえて、正答できましたでしょうか。
今回は、事例を通して、アルツハイマー型認知症、脳梗塞右片麻痺、脳梗塞左片麻痺(左同名半盲、失行)、自閉症スペクトラム障害の特徴や症状と、その介護等に関する知識や技術などが、出題されました。「こころとからだのしくみ」や「発達と老化の理解」、「認知症の理解」、「障害の理解」、「コミュニケーション技術」、「生活支援技術」、「介護過程」などで学習する事柄が、組み込まれていました。
あわせて、地域包括ケアシステムや地域活動支援センターといった、「社会の理解」で学習する事柄についても、出題されました。
国家試験ということもあり、最後まで難しさを感じたかもしれませんが、125問に立ち向かった皆さんにおかれまして、本当におつかれさまでした。
受験において、結果は確かに大事ですが、現場の仕事をわかりやすく、おもしろく、やりがいをもって続けていくために、今回の受験を通して積み重ねた学びを、活かされることを願ってやみません。
本講座を、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
これからも一緒に取り組んでいきましょう。
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