石橋亮一先生の受験対策講座・番外編~
“次回(第35回)”を見据えて~
その1~合否を分ける「社会の理解」(前半)~
今回の合格は難しいと感じた皆さんへ
こんにちは。昨年4月から今年1月まで、本講座にて、第34回介護福祉士国家試験(筆記試験)の受験勉強をお手伝いさせていただいた石橋です。少しずつ春の足音が聞こえてくる頃合いですが、まだ寒さが残ります。引き続き、体調に気をつけておすごしください。
受験を終え、ホッと一息ついた後、学生の皆さんは卒業を経て、仕事に就く準備を始めていることでしょう。既に仕事に就いている皆さんは、感染対策などに留意しながら、通常の業務に戻っておられるかと思います。
今回(第34回)の受験の合否結果は、3月下旬にお手元に届く予定ですね。それまでは、楽しみでもあり不安でもあり、ドキドキした気持ちになるかもしれません。
ところで、皆さんの中には、自己採点などから、「今回は合格できないかな…」と感じている方がいるかもしれません。確かに相手は“国家”試験です。そう簡単に合格できるものではありません。
そこで、本講座では「番外編」として、次回(第35回)の国家試験を見据えて、今後、再び受験勉強に取り組む際、思い出していただきたいことを、3回に分けて記します。次回の受験なんて、まだ先のことと思われるかもしれませんが、まずは、どうか肩ひじ張らずにお読みください。
合否を分ける「社会の理解」で学ぶこと
今回の受験とそのための学習で、「社会の理解」という科目の難しさを実感した受験者は多いと思います。その通り、筆記試験において、この科目の出来不出来が、合否を分けるといっても過言ではありません。例年、12問も出題されますが、1問も正答できずに不合格となる受験者が少なくないのです。
国家試験(筆記試験)の規定として、125問全体で高得点を取っても、一つの科目が“0点”の場合は、不合格となります(「人間の尊厳と自立」と「介護の基本」、「人間関係とコミュニケーション」と「コミュニケーション技術」は、一つの科目として扱われます)。そうなる可能性が高い科目が「社会の理解」です。
国が定めている「出題基準」では、この科目の「大項目」として、以下の5つを掲げ、学習と理解を求めています:
- 1 生活と福祉
- 2 社会保障制度
- 3 介護保険制度
- 4 障害者自立支援制度
- 5 介護実践に関連する諸制度
上記を見ると、この科目で学習しなくてはならない事柄は、「制度」についてです。制度とは、関連する複数の法律全体を指したもので、要は、法律の知識が問われます。法律は、勉強しないと理解できません。受験勉強に再度取り組むにあたっては、このことを改めて肝に銘じる必要があります。
「制度(法律)」とは何か
「社会の理解」について、受験者からは、「法律はとても難しくて頭に入らない」「何のために勉強しているのか、よくわからない」などの声を聞きます。そうですよね。介護の仕事に就いている私たちは、「制度(法律)」(以下、法律)を何のために学ぶのでしょうか。そもそも、法律とは何でしょうか。
人々の生活は、実にさまざまな法律によって支えられています。介護生活もその一つです。この場合、法律とは、「生活の困りごとに、税金や保険料を注ぎ込んで支えるためのルール」および「人々の生活を支援するにあたり、仕事に就く者が守らなければならないルール」と理解するとよいでしょう。
出題基準にある「社会保障制度」とは、私たちの生活や生命を支える法律の総称です。今回の受験でも、さまざまな法律を含んでいることを、受験参考書などで確認したかと思います。
一方で、今回は、介護の仕事に必要な国家資格を取得するための試験です。ということは、介護に関連する法律が、出題のメインとなります。
参考までに、今回(第34回)の筆記試験で出題された主な法律と、出題された科目(総合問題を含む)を、以下に記します。
- ・高齢者虐待防止法:「人間の尊厳と自立」
- ・社会福祉法:「社会の理解」
- ・介護保険制度:「社会の理解」「介護の基本」「総合問題」
- ・障害者総合支援法:「社会の理解」「障害の理解」「総合問題」
- ・生活保護制度:「社会の理解」
- ・社会福祉士及び介護福祉士法「医療的ケア」
上記を見ると、法律の知識は、「社会の理解」以外の科目でも出題されています。法律の知識を習得すれば、他の科目でも得点できるようになります。
法律の知識を学び・身に付ける意義・必要性
介護の仕事をする者(介護職員)が、法律の知識を学び、身に付ける意義・必要性として、以下の点があげられます:
① 介護サービスは、税金・保険料の補助があることで利用される
介護生活は、それがいつ終わるか分からないまま、不安を抱えた日々です。予測が立たないため、介護サービスにかかる費用も見積もれず、結果、介護サービスは買い控えられることになります。ところがそのサービス料金が、介護保険制度や障害者総合支援法の税金や保険料の補助により、1割程度の自己負担になるとしたらどうでしょうか。利用者の購買意欲は喚起されて、サービスを利用し、結果、事業所・施設の売上、そして私たち介護職員の収入につながります。介護の仕事に携わる者にとって、法律は、仕事と収入を得るために不可欠な仕組みなのです。
② 利用者から、法律に関する質問を受けることがある
利用者が、税金・保険料の補助を受けるためには、例えば、介護保険制度であれば、要介護認定の手続きが必要であり、介護保険料の支払いなどが求められます。また、介護保険制度下の訪問介護では、家族の部屋の掃除はできないなど、利用者側にも知ってもらいたいルールがあります。利用者にとっても法律の理解は難しく、関わる介護職員に質問することがあります。法律に関しては、ケアマネジャー等に聞いてもらうよう、利用者にお願いしても良いのですが、質問を受けた介護職員が多少とも説明することができれば、利用者は助かり、「何でも知っているのね」と、利用者の安心感・信頼感が高まります。
③ 法律が定めるルールに沿って仕事をしなければならない
近年、コンプライアンス(法令遵守)という言葉をよく耳にします。仕事は、その分野の法律に沿って行わなければならないという意味です。介護保険制度を構成する介護保険法や指定基準(人員・設備・運営に関する基準)などは、介護保険制度下のサービスを提供する事業所・施設や職員が、利用者の介護生活を適切に支え、売上・収入の多くを税金・保険料から得るために、守らなければならないルールともいえます。ルールに沿って提供された良質なサービスの料金が、補助の対象となります。また、なぜそれを行わなければならないのか、あるいは、行ってはいけないのか、法律が仕事の根拠となり、仕事が分かりやすくなります。
いかがでしょうか。負担感があるかもしれませんが、今後一層、法律の学習を前向きにとらえ、取り組んでいただけるとうれしいです。
次回は、「社会の理解」の出題内容について、もう少し具体的に説明します。