受験対策講座
保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第40回 令和4年後期・保育士試験「保育の心理学」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント
中山麻子(なかやま あさこ)
臨床心理士。公認心理師。小田原短期大学保育学科非常勤講師、あさか保育人財養成学校講師。
最新試験をふまえた「保育の心理学」の出題傾向や、受験対策について解説します。
近年の出題傾向
傾向①基礎理論
毎年の傾向としてまず挙げられるのが、心理学の基礎理論からの出題です。ピアジェ、エリクソン、ブロンフェンブレンナー、ヴィゴツキーといった人物名および、その理論は頻出です。
令和4年後期試験では、問2で発達の規定因について問われました。遺伝と環境の理論について正確に知識を持っているかが問われる出題です。
また、問5ではピアジェの認知発達理論、問6ではヴィゴツキーの理論について出題されました。特にピアジェについては、毎年のように出題されています。
傾向②発達段階
各発達段階について、その特徴を問う問題が毎回出題されています。
胎児期、乳幼児期から児童期、青年期、中年期、そして老年期にいたるまで、それぞれの段階の特徴をあらわす専門用語も含めて、出題されることが多いです。
例えば「ものの永続性」「心の理論」「三項関係」「保存の概念」「アニミズム」「自己中心性」「流動性知能・結晶性知能」などが挙げられます。
令和4年後期試験では、問11で中年期について出題され、エリクソンの理論や空の巣症候群といった用語の理解が問われました。
傾向③虐待や発達障害、心の問題
また、最近多くみられるのが虐待や発達障害、心の問題についての出題です。
令和4年後期試験では、問19で児童虐待の種別や種別ごとの順位について出題されました。問20では愛着障害、PTSD、発達障害について問われました。また、問14では事例問題として、発達支援の留意点について問われました。
これらは社会的に注目されていることでもあり、保育士として正しく判断し、適切に対処する能力が求められます。今後も出題の可能性が高いといえます。
傾向④資料の読み取り問題
この数年の特徴として、資料を読み取る設題が毎回1題、出題されています。
令和4年後期試験では、問18で「男女共同参画白書 令和2年版」(内閣府)における「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に関する意識調査について出題され、グラフを正しく読み取る力が問われました。
過去には、「末子妊娠判明当時の仕事を辞めた理由・仕事と育児の両立の難しさで辞めた理由」「結婚と出産に関する全国調査」「高齢者の生活と意識に関する国際比較」など、やはりグラフが提示される問題が出ました。
傾向⑤保育所保育指針
このほか、保育所保育指針に結びついた問題も、出題されています。令和3年前期試験では「幼児と周囲の大人との関係」「子育て支援について」、令和2年の後期試験では「保育所における養護と教育の一体的展開」「保育の評価について」などがテーマとして挙げられ、適切な文章を選択する問題がありました。
保育所保育指針を読みこなしているか、なおかつ、その内容を的確に理解しているかが問われています。
今後の受験対策
「『保育の心理学』は難しい」といった声をよく耳にします。試験は、初日の1科目目という大変な緊張の中で、受けることもあるでしょう。
ただ、それだけではなく、問題文が難しく感じられることも要因の1つではないかと思われます。出題者は受験生の知識をはかるために、様々な問い方をしてきます。
過去問を見てください。一見、ややこしく書かれた文章も、あとから落ち着いて読み直せば、なるほどと理解できるような文章も多いのではないでしょうか。
本番ではもっている知識を総動員できるよう、深呼吸して挑みましょう。
対策①基礎理論
基礎理論を正しく理解しましょう。正確に理解していれば短時間で解答できるはずですが、中途半端な理解ではまぎらわしい選択肢に迷い、時間を費やしてしまいます。ピアジェ、エリクソン、ブロンフェンブレンナー、ボウルビィ、パーテンなどの人物名と、彼らの提唱した理論をおさえてください。
これらの理論については、一度に覚えようとすると大変です。
焦ることなく、まずは時間をかけて内容を理解し、そのあとで記憶する段階に進むとよいでしょう。
対策②発達段階
乳幼児期以外の発達段階についても忘れずにチェックしておきましょう。児童期、青年期、中年期、老年期と、人の発達は続きます。それぞれの発達段階の特徴が問われる可能性も高いです。
発達を理解する上でのキーワードは、生涯発達です。能力を獲得することや、成長だけではなく、体力の低下や衰退なども含め、人生における「変化」を発達とみなします。児童期以降の特徴についても必ずみておきましょう。
対策③虐待・発達障害
虐待や発達障害についても確認しておきましょう。虐待については、その種類や最近の動向を、発達障害については、名称とその主な特徴について、理解しておきましょう。
発達障害については、呼称も変化しつつあることもあわせて勉強しておきましょう(例えば、自閉症スペクトラム、限局性学習症など)。ニュースや新聞などで、最新の情報に目を向けてください。
対策④社会問題
子どもに関連した社会問題に敏感になりましょう。表やグラフで示されたものを読み取る出題傾向は、今後も続くと思われます。試験本番で初めて目にするグラフが問われたとしても、慌てず、落ち着いて目を通すことが大切です。
グラフの問題は、落ち着いて読めば必ず正解にたどり着けます。あらかじめ時間配分を見積もっておくなど、作戦を立てておくことをおすすめします。
また、普段から新聞やニュースなど、数値データで示されるものも含めてチェックするなどして、子どもを取りまく社会情勢に関心をもつようにしましょう。
対策⑤保育所保育指針
最後に、保育所保育指針を読むことも忘れないでください。
何度も丁寧に読んで、文章になじんでおくことが大切です。
***
「保育の心理学」には、将来、保育現場で活かせる内容が詰まっています。受験のためと思って、ただ知識を詰め込むだけの勉強をしてしまうのは、もったいないです。
知的好奇心をもって、楽しむ心を持ちながら、豊かな知識を身につけていかれますよう、心より応援しています。
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