受験対策講座
保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第24回 令和4年・4月試験「教育原理」科目について
藤井秀一(ふじい ひでかず)
近未来教育変革研究所・所長。元私立高校国語科教諭。国家資格キャリアコンサルタント。認定エグゼクティブ・コーチ。教員研修・PTA研修・学校改革支援などを手掛ける教育アドバイザー。国際ブリッジ学院・校長。
令和4年の前期試験を通して出題傾向を考える
はじめに令和4年度の前期試験「教育原理」について、内容を振り返っておきましょう。今回の出題分野を通して「教育原理」の出題傾向を整理します。
問1:学校教育法 第22条
幼稚園の本来的な設置目的を提示している条文で、近年の試験でも重視されている要素です。この条文は第3章「幼稚園」の最初に置かれています。
学校教育法は毎回必ず出題されると考え、特に幼児・児童関連の項目は注意してください。(学校教育法は学校の設置・運営・運用の規則・教員の配置などの原則を定めた法律です)
問2:教育基本法(平成18年改正法) 第4条
「教育の機会均等」の副題がつけられ、その全文が出題されました。個人的な条件によって教育を受ける権利が差別されてはならない理念を提示しています。
また、国や地方公共団体などが対応すべき教育的配慮の原則についても規定しています。(教育基本法は国家としての教育の理念を定めた法律です)
問3:西洋の人名と事績
文章の内容からデューイを類推して選択させる問題でした。
デューイはアメリカの哲学者・教育学者であり、主著に『民主主義と教育』があります。他の選択肢にはルソー、ペスタロッチ、モンテッソーリ、ブルーナーが表示されていました。いずれの人物も保育士試験では常連とも言え、事績や著書名の確実な知識が求められます。
問4:日本の人名と事績
空海(真言宗の開祖/弘法大師)の綜芸種智院と石田梅岩の石門心学に関する出題でした。両者ともにこれまでも出題されたことがあり、基本的な知識に含まれると言えそうです。
選択肢には最澄(天台宗の開祖/伝教大師)、大原幽学(農業協同組合の原型の創始者)のほか、 広瀬淡窓(私塾「咸宜園」を設立)が含まれていました。
問5:幼稚園教育要領(指導計画の作成と幼児理解に基づいた評価)
第1章「総則」からの出題で、誤った条文を選択させる問題でした。
視聴覚教材やコンピュータなど情報機器については、「使用しない」ことを求めるのではなく、「得難い体験を補完するなど、幼児の体験との関連を考慮する」とされています。
問6:小学校学習指導要領(教育課程の編成)
第1章「総則」-第2「教育課程の編成」-4学校段階等間の接続(1)からの出題でした。平成29年告示の学習指導要領においては、「生きる力」の実践的活動への落とし込みが意識され、かつ学校種間・教科間の垣根を越えた接続・連携を考慮した取り組み姿勢が打ち出されています。
また「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(文部科学省)をも意識した内容となっています。
問7:日本の教育行政及び教育制度
明治期の日本の教育行政に関する設問で、これまでも出題されている内容でした。我が国初の近代的な教育制度とも言える、1872(明治5)年公布の「学制」に関する出題です。
「邑(むら)に不学の戸なく家に不学の人なからしめんことを期す」として国民皆学をめざしました。森有礼は初代文部大臣として著名な人物であり、基本中の基本と言える出題内容でした。
問8:子ども・子育て支援法(教育・保育施設)
子ども・子育て支援法からの出題は、「教育原理」としては珍しいと言えます。ただし、設問で問われたのは基礎的な知識であり、難問ではありませんでした。
この法律では「教育・保育施設」として認定こども園・幼稚園・保育所を規定しています。
問9:持続可能な開発目標(SDGs)
SDGsはSustainable Development Goalsの略称で、17の目標/169のターゲットから成ります。2016年から2030年までに国際社会が達成すべき包括的な目標として、2015(平成27)年9月、国連「持続可能な開発サミット」において採択されたものです。
設問では目標4【教育】の誤りを指摘させる内容となっていました(問題文Aが誤り)。
「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」
問10:子どもの貧困対策に関する大綱
2019(令和元)年11月の内閣府資料「子供の貧困対策に関する大綱~日本の将来を担う子供たちを誰一人取り残すことがない社会に向けて」の原文を穴埋めさせる設問。第4「指標の改善に向けた重点施策」のうち(幼児教育・保育の質の向上)からの出題でした。
幼稚園教諭・保育士等による専門性を生かした子育て支援の取組と保護者に対する家庭教育支援の 充実を企図し、実践へと繋げていくことを求める記述となっています。
総括 教育施策に関する設問が多数
「教育原理」の過去問題では見慣れない設問もありましたが、基本的知識を問うものが多かった印象 で、落ち着いて読めば判断できる基礎的な内容の問題文が並んでいました。
これまで数回は時事問題が多く見られたようですが、今回は控えめな印象となりました。教育政策は世相の変化や大きな事件事故を踏まえて改善・改正されることもあります。幼児教育に関連しそうな社会的事案が見られた時には、注意して情報を確認しておきましょう。
「教育原理」の近年の出題傾向
あらためてこの科目の全体的な出題傾向を確認しておきましょう。
重要事項 | 出題傾向 |
---|---|
教育基本法と学校教育法 | 教育基本法と学校教育法はほぼ毎回出題されており、幼児関連のみならず、小学校に関する条文・記述も要注意であり、関連する条文を収集しておくことを強くお勧めします。幼小連携にも注意を払っておきましょう。 |
幼稚園教育要領 | 幼稚園教育要領では「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域に関する記述と「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の内容を把握しておきましょう。また、第1章「総則」は必ず出題されるものと考えておきましょう。 |
教育思想や理論 | 教育思想や理論では、人名と著作・理論との記憶が結びついていることが大切。個々の人物に関するキーワード(事績・著作・理論など)は確実に覚えてください。 ※例/フレーベル:恩物、キンダーガルテン、『人間の教育』 |
子どもの権利 | 子どもの権利に関連しては条約や宣言などの出題が今後も予想されます。特に「児童憲章」「児童権利宣言」「児童の権利に関する条約」などは本文に目を通しておくべきです。ユネスコ憲章も出題されており、子どもたちの根源的な人権・権利を理解しておく必要があります。 |
我が国の教育行政や教育制度 | 我が国の教育行政や教育制度について、中央教育審議会の答申が何度も作問に利用されています。文部科学省のウェブサイトで閲覧できますので、幼児関連・児童関連は目を通しておきましょう。 幼稚園教育要領・小学校学習指導要領との関連性を意識しながら読むと、理解の度合いが深まります。 |
教育を取り巻く諸問題と教育の機会均等 | 教育を取り巻く諸問題と教育の機会均等については特別支援教育に関する知識が不可欠です。「特別支援教育の推進のための学校教育法等の一部改正について(通知)」ほか、文部科学省の通知などをウェブサイトで確認しておきましょう。ほかにも、いじめ・体罰・生涯学習に関する出題も非常に多く、関連する資料の確認と法改正について確認しておきましょう。また、ESDやSDGsなど教育にかかわる全世界的な取り決めが重視されていますので、国際的な教育トレンドも押さえましょう。 |
「教育原理」の受験対策・勉強の進め方
最後に、次回の試験に向けておすすめしておきたい学習ポイントは以下の通りです。
-
- ☆教材をやたらに買い込まず、学習の手を広げすぎないこと
- ☆1冊の教材を確実にこなしてから、次の教材に移ること
- ☆紛らわしい人名・著作・理論などは表を作って整理すると覚えやすい
- ☆頻出項目は紙に書き出し、机上や壁に掲示すると効果的
- ☆法改正は格好の試験材料となるので面倒がらずに確認を
- ☆一問一答問題集を繰り返し、知識の穴を埋めること
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