受験対策講座
保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第52回 令和5年後期・保育士試験「造形」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント
喜多﨑薫(きたざき かおる)
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ東京校非常勤講師、あさか保育人材養成学校講師
近年の出題傾向
「造形」の出題数は、令和4年の前期から3回続けて4問でしたが、令和5年の後期試験では、出題数が5問に戻りました。
出題数が減少していた試験では「発達年齢と造形表現の特徴」または「表現技法」をテーマとする問題が割愛されていましたが、数年で見た時の内容や傾向については大きな変化や変更がないため、これまで通りの学習が必要と考えて良いでしょう。
(1)発達年齢と造形表現の特徴
令和5年の後期だけでなく、令和元年の前期と後期、令和3年の後期(いずれも<問題8>)のようにピアジェやリュケ、ローエンフェルド、ケロッグなどの研究者や教育者が唱えた発達理論が問われることが増えてきました。
さらに、一つの発達年齢区分での子ども達の描く絵画の特徴から、なぐりがき期や図式期などのような発達段階の名称や表現の名称に結びつけるタイプの出題に、教育者や研究者を絡ませて出題されることもあります。
4つの発達段階とその特徴、発達理論に関わった研究者や教育者についての知識が求められています。
(2)色彩の知識
令和5年後期<問題9>は、「運動会の看板が目立つような色彩」というテーマで保育士が話し合っている事例の穴埋め問題で、主に「三属性の彩度」についての知識問題でした。
色彩の学習は言葉の暗記になりがちですが、彩度が「高いと鮮やか」、「低いと鈍い」という言葉の理解だけでなく、「目立たせるには彩度を高く」したり、「はっきり見せるには背景に対して明度差を大きく」するというように、日常的に色彩を使用する場面を想像して学習することが重要です。
テキストで出てくる色彩とは異なり、日常で目にする色彩は、単色よりも複数の色を混ぜたり組み合わせて見たり使ったりすることが多いので、混色の知識や配色の効果もしっかり学習しておきましょう。
(3)表現技法
これまでモダンテクニックから名称と技法を結びつける問題や、用いる材料の準備や制作手順など、幅広い知識が出題されていましたが、令和4年後期、令和5年前期の2回は、表現技法として単独の知識が問われる出題はありませんでした。令和5年後期は、フィンガーペインティングに関する記述の正誤を問う出題がありました。
これまでの出題でも、バチック、コラージュ、スタンピング、フロッタージュ、デカルコマニー等々のモダンテクニック単独の技法についてが多く出題されていますので、傾向は特に変わっていません。
また、表現技法では、画材や素材、用具や道具などの表現活動の材料の特徴がそのまま技法の特徴となったり、身近な絵本の中で用いられている表現技法についての出題もありますので、「造形」の分野を単独で考えるのではなく、「表現」として大きく捉えることも必要です。
(4)表現活動の材料
画材や素材、用具や道具などの知識は、毎年必ず出題されているのでとても重要なテーマです。
はさみについては6年ぶり2度目の出題でした。はさみなどの道具は機能が形状の特徴として現れるだけでなく、機能を活かすための使い方にも道具なりの特徴があり、間違った使い方では機能が活かせず、また、危険を伴うこともあります。実際に子ども達と表現活動をする場面を想像し、学習した知識だけではない、より実践的で応用的な考え方が求められています。
(5)形態と構成の理解
令和5年後期<問題12>では「切り紙で作る繋がった飾り」について、完成形を作る正しい切り方を選ぶ出題がありました。紙を折った時と広げた時の形の関係を想像しなければならないため、難易度の高い問題となっています。
今回の出題のように、造形の出題には工作や保育園のイベントで用いられる装飾などの造形物を例に、折り方や切り方などの構造や、動きの仕組みなどが理解できないと解答できない問題が例年出題されており、色彩や画材、表現技法などの知識だけでは解答できない、応用的な造形感覚が求められています。
今後の試験に向けた受験対策、勉強の進め方など
基本的な学習の仕方
造形の分野では、5つの項目についての基礎知識がもっとも重要です。
「発達年齢と造形表現の特徴」は、造形の分野の中では応用的な出題が少なく、知識でほとんどカバーできる部分ですから、しっかり押さえておきましょう。
近年の特徴として、保育の現場で起こりうる事例形式の出題が多くなってきました。また、穴埋め問題では、まったく関連性のない語句が記載されていることもありますので惑わされず、前後の文章にも注意して読み解くことが必要です。
出題される事例のように、実際の現場では、基本的な知識だけでは解決できない、わからないことが多くあります。その時に大切なのが知識に基づいた複合的な応用力です、テキストではテーマに分けられていますが、ひとつのテーマやジャンルにこだわらず、広く「表現」について考えられる柔軟性をもちましょう。
覚えるだけでなく体験する
「表現」は、文字で覚える以上に、実際の体験がとても力になります。テキストだけに頼らず、少しでも実際に絵の具を使って混色したり、糊で貼ったり、はさみで切ってみたりすることを心がけましょう。
またモダンテクニックも実際に表現してみると、手順の重要さや注意点が理解できます。お手本を作るのではなく、気軽にやってみて、できれば「うまくいかない」体験もしてください。その時に考えたことは、いちばんの力になります。小さくてもよいので実際にやってみることをおすすめします。
造形感覚を養う
例年出題される<形態と構成の理解>の応用問題は、「構造や仕組み」、「加工の前と後の変化」が大きな特徴ですが、試験問題では、実際にその場で動かしたり、切ったりできるわけではないので、どうしても図だけを頼りに「頭の中で想像する力」が必要になります。
知らないこと、体験したことがないことはなかなか想像しづらいので、一度やってみましょうと言いたいところですが、出題される領域があまりに幅が広いので現実的には無理です。
ここで助けになるのが「ものを見る力」です。日常生活で目にする物、触ったり、動かしたりするものを、少しゆっくり角度を変えて観察してみましょう。牛乳パックやアイスクリームのカップ、ヨーグルトの容器など、リサイクルのために広げたら、どんな形になっているでしょうか。ドアのレバーを下げたらどうして開くのでしょうか。こうしたちょっとした観察での「へえ〜こんな形なんだ」とか、「こうなっているんじゃないか?」という経験や想像が「造形感覚」を養います。
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