受験対策講座
保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第50回 令和5年後期・保育士試験「保育の心理学」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント
中山麻子(なかやま あさこ)
臨床心理士。公認心理師。小田原短期大学保育学科非常勤講師、あさか保育人材養成学校講師。
近年の出題傾向
傾向①基礎理論
毎年の傾向としてまず挙げられるのが、心理学の基礎理論からの出題です。ピアジェ、エリクソン、ブロンフェンブレンナー、ヴィゴツキーといった人物名および、その理論は頻出です。
令和5年後期試験においても、例年同様に出題されました。
問9ではヴィゴツキーの発達の最近接領域について出題されました。人名とその内容を正しく理解しているかが詳しく問われました。
問2では、発達理論として、ジェンセンやワトソンなどが出題されました。
また、ピアジェ、エリクソンは毎回と言っていいほど、出題されています。
今回は問7、問11、問13の選択肢の中に登場しました。
傾向②発達段階
各発達段階について、その特徴を問う問題が毎回出題されています。
胎児期、乳幼児期から児童期、青年期、中年期、そして老年期にいたるまで、それぞれの段階の特徴をあらわす専門用語も含めて出題されることが多いです。
例えばものの永続性、心の理論、三項関係、保存の概念、アニミズム、自己中心性、流動性知能・結晶性知能などが挙げられます。
令和5年後期試験では、問10で青年期、問11で高齢期、問15で中年期について出題されました。
高齢期については、流動性知能と結晶性知能のちがいについて正しく理解しているかが、よく問われます。
傾向③虐待や発達障害、心の問題
また、最近多くみられるのが虐待や発達障害、心の病についての出題です。
令和5年後期試験では、問17で選択性緘黙、起立性調節障害、自閉スペクトラム症、限局性学習症について正しい知識を持っているかが問われました。
問18では、児童虐待の最近の動向について出題されました。
これらは社会的に注目されていることでもあり、保育士として正しく判断し、適切に対処する能力が求められます。今後も出題の可能性が高いといえます。
傾向④資料の読み取り問題
この数年の特徴として、資料を読み取る設題が出題されることがあります。
令和4年後期試験では、問18で「男女共同参画白書 令和2年度版(内閣府)」における「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に関する意識調査について出題され、グラフを正しく読み取る力が問われました。
令和5年後期試験では、資料の読み取りは出題されませんでした。
ただ、問14では子どもの貧困に関連し、「2019年 国民生活基礎調査」のデータを基に、ひとり親世帯に関する現状についての知識が問われました。
傾向⑤保育所保育指針
このほか、保育所保育指針に結びついた設題も、出題されています。
令和5年の後期試験では、問20で、就学に向けた移行期に関して「保育所保育指針解説」にある記述の正誤を判断する選択肢が出題されました。
保育指針を読みこなしているか、なおかつ、その内容を的確に理解しているかが問われています。
今後の試験に向けた受験対策、勉強の進め方
「保育の心理学は難しい」といった声をよく耳にします。初日の1科目という大変な緊張の中で、受けることもあるでしょう。
ただ、それだけではなく、設題文が難しく感じられることも要因の1つではないかと思われます。出題者は受験生の知識をはかるために、いろいろな問い方をしてきます。
過去問を見てください。一見、ややこしく書かれた文章も、あとから落ち着いて読み直せば、なるほどと思うような文章も多いのではないでしょうか。本番では持っている知識を総動員できるよう、深呼吸して挑みましょう。
具体的な対策は以下の通りです。
対策①基礎理論
基礎理論を正しく理解しましょう。正確に理解していれば、短時間で解答できるはずですが、中途半端な理解では、まぎらわしい選択肢に迷い、時間を費やしてしまいます。
ピアジェ、エリクソン、ブロンフェンブレンナー、ボウルビィ、パーテンなどの人物名と、彼らの提唱した理論をおさえてください。万一、知らない人物名が出たとしても、選択肢の○×の組み合わせから選べるよう、頻出の理論は押さえておくと安心です。
これらの理論については、一度に覚えようとすると大変です。焦ることなく、まずは時間をかけて内容を理解し、そのあとで記憶する段階に進むとよいでしょう。
対策②発達段階
乳幼児期以外のライフステージについても忘れずにチェックしておきましょう。
児童期、青年期、中年期、老年期と、人の発達は続きます。それぞれのライフステージの特徴が問われる可能性も高いです。
発達を理解する上でのキーワードは、生涯発達です。能力を獲得することや、成長だけではなく、体力の低下や衰退なども含め、人生における「変化」を発達とみなします。児童期以降の特徴についても必ず確認しておきましょう。
対策③虐待や発達障害、心の問題
虐待や心の病、発達障害についても確認しておきましょう。
虐待については、その種類や最近の動向を、心の病や発達障害については、名称とその主な特徴について、理解しておきましょう。
発達障害については、呼称が変化しつつあることもあわせて勉強しておきましょう(例えば、自閉症→自閉症スペクトラム、学習障害/限局性学習症など)。
やはりニュースや新聞など、最新の情報に目を向けてください。
対策④社会問題
子どもに関連した社会問題に敏感になりましょう。
表やグラフで示されたものを読み取る傾向は、今後もあるかもしれません。試験本番で初めて目にするグラフが表示されたとしても、慌てず、落ち着いて目を通すことが大切です。
また、普段から新聞やニュースなど、数値データで示されるものも含めてチェックするなどして、子どもを取りまく社会情勢に関心をもつようにしましょう。
対策⑤保育所保育指針
最後に、保育所保育指針を読むことも忘れないでください。
何度も丁寧に読んで、文章になじんでおくことが大切です。
「保育の心理学」には、将来、保育現場で活かせる内容が詰まっています。
受験のためと思って、ただ知識を詰め込むだけの勉強をしてしまうのは、もったいないです。知的好奇心をもって、楽しむ心を持ちながら、豊かな知識を身につけていかれますよう、心より応援しています。
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