受験対策講座
保育士・筆記試験の合格率は20%前後で難関といえます。この狭き門を突破するためには、ポイントを押さえた効率のいい学習が不可欠です。このコーナーでは、近年の各科目の出題傾向や今後の対策について、その秘訣をガイドします。
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第44回 令和 4 年後期・保育士試験「保育実習理論・造形」の内容や難易度は? 傾向と対策のポイント
喜多﨑薫(きたざき かおる)
総合学園ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ東京校非常勤講師、あさか保育人材養成学校講師
「保育実習理論・造形」の近年の出題傾向や受験対策について解説します。
近年の出題傾向
令和4年の前期および後期試験では、造形の出題数が5問から4問に減っています。今後も出題数が減ったままなのかどうかはわかりませんが、内容や傾向については大きな変更がないため、これまでどおりの学習が必要と考えてよいでしょう。
(1)発達年齢と造形表現の特徴
例年必ず出題されていましたが、近年では、前期の試験日程では出題されていません。
令和4年後期の<問題8>では、2歳児が描画する様子を見て、2人の保育士が造形表現の特徴について話している形式で、重要語句の穴埋め問題が出されました。 ポイントは、最初期の発達年齢と造形表現の特徴である「なぐりがき」が、腕など大きな運動と関係していることです。
今回の出題のように、子どもたちの描く絵画の特徴から、発達段階の名称や表現の名称に結びつけるタイプの出題は、これまでで一番多い出題形式です。 4つの発達段階とその特徴をしっかり理解することがとても重要です。
さらに、平成31年の前期<問題8>や、令和元年の後期<問題8>のように「ピアジェ」や「リュケ」など、「発達段階」に関する研究者や教育者の知識が加えて問われることもあり、より細かい知識が求められています。
(2)色彩の知識
令和4年後期<問題10>では、12色相環をもとに、色彩の特性や色相の名称などについて問われました。
色彩については、これまでもスポットライトなどの色光の三原色による加法混色、絵の具などの色料による減法混色、織物など異なる色が並んで混ざって見える並置混色の知識が問われ、色彩の幅広い知識についての理解が必要です。
日常的に目にすることが当たり前である色彩は、単色よりも、複数の色を混ぜたり組み合わせて見たり使ったりすることが多いので、混色の知識や配色の効果もしっかり学習しておきましょう。
(3)表現技法
例年、モダンテクニックから名称と技法を結びつける問題や、用いる材料の準備や制作手順など、幅広い知識が出題されていますが、令和4年後期では、表現技法として単独の知識が問われる出題はありませんでした。
これまでの出題では、バチック、コラージュ、スタンピング、フロッタージュ、デカルコマニー等々のモダンテクニック単独の技法について、多く出題されています。
また、表現技法の応用的な問題として、身近な絵本の中で用いられている表現技法についての出題もありますので、「造形」の分野を単独で考えるのではなく、「表現」として大きく捉えることも必要です。
(4)表現活動の材料
令和4年後期<問題9>では、牛乳パックから紙をつくる「紙漉(す)き」について出題されました。
材料としては「紙」ですが、紙の製作工程について問うものですから「技法」的なニュアンスも含まれており、より保育の現場に即した出題内容といえます。
令和2年の後期<問題11>でも、園庭の土を素材とした造形表現を検討する保育士たちの様子が事例として出題されました。
これまでの表現活動の材料では、「粘土」と「紙」についての出題が一番多く、ついで描画材となっていますが、今後、花や野菜から色水を作って絵を描いたり、布を染めたり、土を粉にして糊を混ぜることで絵の具にしたりするように、すでに出来上がっている市販の粘土や絵の具の知識だけでなく、表現活動の材料の原料の知識を用いて材料そのものを製作するといった、応用的な考え方の出題が増えていくことも考えられます。
(5)形態と構成の理解
令和4年後期<問題12>では「サイコロの展開図」が出題されました。
サイコロの形は立方体や正六面体とも呼ばれ、正方形6個でできた立体です。展開図にしたときに6個の正方形が重ならない位置にある必要があります。
今回の出題のように、造形の出題には工作や保育園のイベントで用いられる装飾などの造形物を例に、折り方や切り方などの構造や、動きの仕組みなどが理解できないと解答できない問題が例年出題されています。
色彩や画材、表現技法などの知識だけでは解答できない、応用的な造形感覚が求められています。
受験対策、勉強の進め方
基本的な学習の仕方
造形の分野では、「発達年齢と造形表現の特徴」「色彩の知識」「表現技法」「表現活動の材料」「形態と構成の理解」の5つの項目についての基礎知識がもっとも重要です。
「発達年齢と造形表現の特徴」は、造形の分野の中では応用的な出題が少なく、知識でほとんどカバーできる部分ですから、しっかり押さえておきましょう。
近年の特徴として、問題文の事例がより複雑になってきました。特に保育士同士が会話しているような事例では、前後のやりとりに注意して読み解くことが必要です。
問題文の事例のように、実際の現場では、基本的な知識だけでは解決できない、わからないことが多くあります。
そのときに大切なのが、知識に基づいた複合的な応用力です。ひとつのジャンルにこだわらず、広く「表現」について考えられる柔軟性をもちましょう。
覚えるだけでなく体験する
文字で覚える以上に、実際の体験が力になります。テキストだけに頼らず、少しでも実際に絵の具を使って混色したり、糊で貼ったり、切ったりすることを心がけましょう。
また、モダンテクニックも実際に表現してみると、手順の重要さや注意点が理解できます。小さくてもよいのでできるだけやってみることをおすすめします。
造形感覚を養う
例年出題される立体造形の応用問題は、「構造や仕組み」「制作の前と後の変化」が大きな特徴です。
実際の試験では、図はあっても、実際にその場で動かしたり、切ったりできるわけではないので、どうしても「頭の中で想像する力」が必要になります。
知らないこと、体験したことがないことはなかなか想像しづらいので、一度やってみましょうと言いたいところですが、出題される領域があまりに幅が広いので現実的には難しいです。
ここで助けになるのが、「ものを見る力」です。
日常生活で目にする物、触ったり、動かしたりする物を、少しゆっくり観察してみましょう。
牛乳パックやアイスクリームのカップ、ヨーグルトの容器などを、リサイクルのために広げたら、どんな形になっているでしょうか。ドアのレバーを下げたら、どうして開くのでしょうか。
こうしたちょっとした観察での「へえ〜こんな形なんだ」とか「こうなっているんじゃないか?」という経験や想像が、「造形感覚」を養います。
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