ケアマネジャー試験の講評
令和6年度(第27回)ケアマネジャー試験の講評
◇はじめに
第27回試験が終わりました。受験された皆さまおつかれさまでした。仕事と勉強を両立しながら受験された方、子育てしながら参考書と日々向き合ってきた方など、様々な方がいらっしゃると思います。まずはゆっくりお休みください。
そして頑張ってきた自分にどうぞご褒美を!(ちょっと高い食事をする、普段買わない服を買う、特等席で映画を鑑賞する、旅行に行くなどなど)
それでは、今回の試験について分野別の講評をします。なお、この講評は合格予想点を出したり、来年の試験問題を予想したりするものではありません。今年の試験の内容の分析としてご参考にしていただければ幸いです。
介護支援分野
昨年同様、問題1と2は難しいものが出題されました。普段から福祉の時事情報にアンテナを張っていた方や現場の方は直感で解けた人もいたかもしれません。また、サービスを選ぶものや短い単語(項目)など覚えているかどうかの知識を問うものも昨年同様に多く出題されました(問題6:区分支給限度基準額が適用されるサービス、問題7:市町村が指定するサービス、問題13:認知症総合支援事業に配置されている者、問題17:認定調査項目、問題19:主治医意見書の項目等)。
昨年(第26回)の過去問を解いていた人は、問題3(社会保険診療報酬支払基金の介護保険関係業務)と問題15(介護保険審査会への審査請求が認められるもの)は解きやすかったでしょう。
事例問題は、今年は例年の3問から1問減って2問でした。問題24では選択肢3と4でどちらが正しいか迷った人もいたのではないでしょうか。これは、措置を行うのは市町村になりますので選択肢3が×となり、4が○となります。現場の感覚では4より3が正答にみえてしまうので注意が必要でした。
保健医療サービス分野
全体的に難問といえるものはなく、解きやすい基礎的な問題が多かったように思います。よくはわからなくても明らかに×なものを消していく消去法で答えられたのではないでしょうか。
特徴的であったのは、昨年と違い「在宅医療管理の実際」(十訂 介護支援専門員 基本テキスト下巻P45~66)から2問(問題33、問題35)が出題されたことです。いずれも過去問を解いていた人は迷わず答えられたと思います(過去問より基礎的でした)。
事業者・施設の問題は、訪問看護(問題40)、訪問リハビリ(問題41)、短期入所療養介護(問題42)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(問題43)、介護老人保健施設(問題44)、介護医療院(問題45)が出題され、昨年より1問増えて6問でした。それぞれサービスの特徴の理解を求められるものでした。介護老人保健施設は5年連続、短期入所療養介護は3年連続出題されています。今年も加算・減算の内容を直接問う問題はありませんでした。
福祉サービス分野
例年どおり問題46~49がコミュニケーション技術やソーシャルワークなどについて、問題50~57が事業者・施設の問題(問題50~54:居宅サービス、問題55・56:地域密着型サービス、問題57:介護老人福祉施設)、問題58~60が関連諸制度(問題58:生活保護、問題59:成年後見制度、問題60:後期高齢者医療制度)となっていました。
問題50~57は、人員基準と運営基準をしっかりと押さえておかないと解けなかったでしょう。問題55の認知症対応型共同生活介護の選択肢1・2、問題56の小規模多機能型居宅介護の選択肢3などは、数字を暗記しているとすぐに答えられる問題でした。
問題54は、福祉用具貸与か特定福祉用具販売か迷われた方が多かったのではないでしょうか。福祉用具を見たらどちらか判断する習慣がついていて、本番でそれができれば解けたでしょう。
関連諸制度では、生活保護が7年、成年後見制度が11年連続で出題されました。過去問を解いていた人は比較的、正答できたと思います。問題59の選択肢3「法人も、成年後見人に選任されることがある」は一見×に見えますが、社会福祉協議会等の法人が後見人に選任されることが増えてきているので、○です。
おわりに
自己採点された方もされていない方も、合格発表日までは合否はわかりません。自信のある方は、介護支援専門員実務研修に備えケアマネジメントプロセスを再度勉強するのもよいでしょう。今年は厳しかったという方は、ひとまず少し休んで、また新たな決意でチャレンジをしていただきたいと思います。
最後にひと言、『積み上げた知識は無駄にはなりません。介護支援専門員になったときに必ず役に立ちます。皆さま、第27回試験おつかれさまでした!』
竹内 太一(たけうち たいち)
医療法人社団 輝生会 在宅総合ケアセンター成城
居宅介護支援事業所 成城リハケア 介護支援専門員
1995年からソーシャルワーカーとして在宅福祉にかかわり、介護保険制度施行後はケアマネジャーとして相談業務、介護保険事業に携わる。
30年以上にわたり現場実践をつらぬく傍ら、ケアマネジャー試験対策を二足の草鞋(わらじ)として受験対策講師や執筆業に携わる。長年の出題研究をベースとした傾向と対策には定評がある。
○資格
社会福祉士、精神保健福祉士、主任介護支援専門員
○著書
・『ケアマネジャー試験 ワークブック2024』(分担執筆)中央法規出版
・『ケアマネジャー試験 合格問題集2024』(分担執筆)中央法規出版
・「2024年度 ケアマネジャー試験 統一模擬試験」(分担執筆)中央法規出版