高齢者のエンドオブライフ・ケアの質は、多職種で高めるもの。ケアを管理する者にはどんなスキルが必要?
高齢者のエンドオブライフ・ケアの質は、多職種で高めるもの。ケアを管理する者にはどんなスキルが必要?
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「エンドオブライフ・ケア」とは「病や老いなどにより、人が人生を終える時期に必要とされるケア」のことです。亡くなる1~2年前(さらに長い期間のときもある)というような長い単位を表し、がん以外の患者、アルツハイマー病など認知症患者における倫理的課題を含めて使われたのが始まりといわれています。
高齢者のエンドオブライフ・ケアは、多職種で協力して提供することが重要となります。この記事では、複数の職種、スタッフが担うケアを創造的に管理する「ケア管理実践」を適切に行う方法を紹介します。
1.エンドオブライフ・ケアはチームで提供する
高齢者のエンドオブライフ・ケアは個別性が高く、1人ひとりの人生についてよく知る必要があります。また、生き方、死に方などには価値観や倫理観がかかわるため、1人の援助者の考えや判断では適切な支援には至らない可能性があります。そのため、1人の援助者、一つの職種だけで支援を考え実施するのではなく、その人にかかわる援助者すべて、あるいは多職種で多面的に考え、協力し合いながらケアを創造的に管理していく「ケア管理実践」をする必要があります。
※以下では、ケア管理実践をする者を「ケア管理実践者」呼びます。
2.エンドオブライフ・ケアの質を保証するために、ケア管理実践者がすべきこと
ケアの質管理を適切にするためには、まずはこの施設における質の高いケアとはどのようなケアを指すのかを具体的に示します。そして、看護・介護スタッフがすべきことは何かをケア管理実践者同士あるいはスタッフとともに考え、言語化します。また、どのようにして可能になるかをスタッフとともに考え、他のスタッフにもわかりやすく伝える方法を考えます。
次に、スタッフ1人ひとりが高齢者1人ひとりにとっての最善のケアを考え、提供できることを目指す必要があります。そのためにケア管理実践者は、スタッフが提供しているケアの質を見極め、スタッフが目標に向かって動くよう調整するのです。ケア管理実践者自らの裁量でアクションを起こすことが重要です。
そして、看護・介護の価値を引き出すことも大切です。たとえば、看護スタッフに対し「エンドオブライフ・ケアこそ看護スタッフの出番であり、腕の見せ所でもある。医師でもない、介護スタッフでもない、生活と苦痛を緩和する医療の両者を実践できるのは看護スタッフである」と伝えます。介護スタッフには「高齢者の最も近くで生活や気持ちを支え続けているのが介護スタッフである」と伝えます。価値を示されることでスタッフは仕事に誇りをもつことができます。ケア管理実践者は、この価値を伝えることで質の高いケアを導きます。
高齢者をケアする場における看護・介護の連携・協働
3.チームケアを推進するケア管理実践例:ケアプランの共有
高齢者が長期に療養する施設・病院におけるケア管理実践として、ケアプランをチームで共有する方法を紹介します。
チームでケアプランを作成するためには、医療・リハビリテーション・栄養・レクリエーションなど、高齢者の生活を支える各職種がチームとなって高齢者の個別の状況を考慮し、目標を共有する必要があります。ケア管理実践者には、チームメンバーがケアプランを理解し、共有するための場面や機会を多くするための仕組みをつくり、共有を促進することが求められます。
例えば、ケアカンファレンスの効果的な運営をするために、構成員の設定と調整をします。多職種が集まり、顔を突き合わせて話し合うことを重視し、時間・場所を決めます。出席できない場合にはあらかじめコメントなどをもらうとよいでしょう。また、見当が効率よく効果的に実施されるための時間管理も求められます。そして、検討された事項は議事録とし、出席していないメンバーも確認できるようにします。
ケアカンファレンスでは、ケアプランを最終的に書類として完成させる役割をもつ者が決められますが、各専門職がそのケアプラン作成にかかわるようにすることが大切です。すなわち、担当者だけでなく、医師・リハビリテーションスタッフ・管理栄養士などが、医療(疾患名・治療方針・薬物療法)・リハビリテーション内容・栄養ケア計画といった欄に、それぞれ責任をもって書き込むようにします。
また、看護スタッフと介護スタッフの間でプランを共有するためには、看護スタッフと介護スタッフがペアでケアプランの担当者となるようにするのもよいでしょう。
4.エンドオブライフ・ケアの質を保証するために身につけておきたいケア管理実践者のスキル
最後に、エンドオブライフ・ケアの質を保証するために求められるケア管理実践者の役割・能力についてお話します。
まずは高齢者と家族の立場に立つ能力が必要です。医療の知識だけでなく一般的な常識や教養をもっていることで、提供できるケアの幅が広がります。そして、スタッフがついていこうと思える人間力、責任を負う覚悟と行動をもつことが大切です。人間力の中には責任が含まれると考えられますが、この責任を遂行してこそ、他職種にも求めることができます。また、時の流れとともに求められることも変化します。変わることを恐れない気持ち、チャレンジする気持ち、柔軟な考えをもつことも大事です。そして、複雑なものをシンプルに読み解くための素直さや直観といった能力も必要です。一つ目にお伝えした「高齢者と家族の立場に立つ」こととも似ていますが、ケアを提供される高齢者や家族の視点、一般的な視点を忘れてはならないのです。
まとめ:ケア管理実践者に求められるスキル
- ・高齢者と家族の立場に立つ
- ・スタッフがついていこうと思える人間力、責任を負う覚悟と行動をもつ
- ・変化を恐れない、チャレンジする気持ちをもつ、柔軟に考える
- ・素直さや直観をもつ
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本記事の内容は、桑田美代子、湯浅美千代編集『高齢者のエンドオブライフ・ケア実践ガイドブック 第2巻 死を見据えたケア管理技術』をもとに編集・作成しております。より詳しい内容は本書籍をご覧ください。
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