「福祉の面白さ」を発見する
今から15年前の2000年、日本の社会保障制度は、一つの大きな転換期を経験しています。介護保険制度の発足、成年後見制度の創設(民法の改正)、地方分権改革、社会福祉基礎構造改革と、この年に行われた多くの改革は、その後の日本の社会生活を形づくるうえで、大きな役割を果たしてきました。
このような大きな制度改正が一時期に重なったことは、ある意味驚くべきことですが、「住み慣れた地域において、自己決定に基づくサービスの利用が確保されるよう、社会全体で支える仕組みを構築する」という一連の目的があると考えれば、そこにはある種の必然性が見えてきます。
また、そこにある必然性を酌みとることができれば、その2年前の1998年に保育所の利用制度で芽吹いた利用者本位のサービスの仕組みが、介護保険制度で花開き、障害者自立支援制度で広がりをみせ、2015年4月に再び保育分野に戻って「子ども・子育て支援新制度」に結実していくという展開も、一本の線でつながって見えてくるのではないでしょうか。
ばらばらに見える事象を関連づけ、ストーリーを描いていく。このような習慣が身につけば、福祉の学習にも面白みが増し、知識の深みも増していくものと思われます。
今回ご紹介する『社会福祉の動向2015』の発行にあたっては、こうした学習が推し進められることを強く願い、編集を行っています。まず、第1章では、最近の制度の動きに関する総括的な解説を掲載していますが、制度を跨ぐ「共通のトレンド」が学べるよう意識した編集を行っています。つづく、第2章から第7章の各章では、社会福祉制度を各領域にわけて解説を展開していますが、時系列の整理を強く意識し、できる限り制度の変遷とその背景にも触れるよう配慮しています。つまり、本書のねらいは、「制度をまたぐ横のつながりを俯瞰する視点」と、「時間軸にそった縦の流れを整理する視点」の2つの視点の習得にあるのです。
2つの視点の習得が、「福祉の面白さ」を発見する契機となり、ひいては新たな社会福祉を紡ぐ力へとつながっていけば、うれしい限りです。
結びになりますが(本書では巻頭言に書かれています)、日本の社会保障制度は、戦後の「生活困窮者対策」を中心に出発したといわれています。70年の時を隔てた本年、社会福祉を巡る状況は、新たな生活困窮者自立支援制度がスタートするなど、大きな変化を見せようとしています。みなさんは、2015年の社会福祉に、どのようなストーリーを描いていくのでしょうか。
(中央法規出版 編集部 亀谷秀保・小林友祈)