障がいのある人の「性」への支援が真の自己決定支援につながる
障害があって外出ができないという人がいたら、その障害を軽減させたり、周囲の環境を変えたりして、その人が外出できるように支援する必要性があります。
障害があって食事ができない(食事環境がその人の障害に対応できていない)人にも同様です。「できない」のが障害のせいなのか、環境のせいなのかで議論があっても、それらの支援が必要なことは誰も疑問に思わないと思います。
では、
障害があって恋愛ができない
障害があって妊娠ができない
障害があってセックスができない
そんな人には支援は必要でしょうか?
「障害があっても楽しく暮らせていけているのに、恋愛だのセックスだの、贅沢じゃないの?」
ちょっと前までそんな風潮があったように思います。
でも私たちの人生を振り返った時、外出や食事のない人生があり得ないように、恋愛のない、子供を望めない、セックスや性についての「秘め事」のない人生、これは想像できるでしょうか?
すなわち性生活の充実は「贅沢」ではなく、必要最低限の人間の「権利」であるように思います。
つまり、障害者の「性」についての問題は、障害者支援の周縁にあるような「プラスアルファ」で考えるべき問題ではなく、食事や外出支援などと同様の人間の尊厳にかかわる解決すべき重要な問題なのです。
一方で、“健常者”であってもうまく恋愛できない人やセックスをしたことない人も存在します。ということは、はたしてその人は、障害があって恋愛ができないのか、それとも人間性の問題なのか、それはとてもあいまいです。
だから本書では「セックスしたいなら、セックスさせてくれる相手をあてがう」なんていう単純なことは述べておりません。
飽く迄も、“健常者”と同じように、恋愛や性生活の「スタートライン」に立ってもらうまでの支援方法を探ります。
障害があっても自由に恋愛や性生活を楽しめる、それが真の自己決定支援につながるのではないでしょうか。
私は2015年2月に書店で見つけた「性風俗のいびつな現場」(ちくま新書)という新書を読み、感動した勢いで坂爪真吾さんに執筆をお願いしました。
坂爪真吾さんは身体障害のある人向けの射精介助を行う「ホワイトハンズ」の代表理事として有名です。
新書として一般の方向けの著書を多く出している坂爪さんの本邦初の支援者向けの実用書となっております。
ご興味持たれた方は、是非お手に取っていただければと思います。
(第1編集部 鈴木涼太)