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地域で高齢者ケアに携わる専門職、必読!!


 “ネグレクト”という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。児童虐待にまつわる報道等でもたびたび使われており、「親など養護者による世話の放棄・放任」などと訳されています。“ネグレクト”は児童虐待防止法で規定されているだけでなく、高齢者虐待防止法でも虐待の一つとして定義されています。
 では、“セルフ・ネグレクト”という言葉はご存知でしょうか?

 “セルフ・ネグレクト”は文字通り、“ネグレクト”を“セルフ”でしてしまうことです。「自己放任」などと訳されますが、つまりは、「自分自身による自分自身の世話の放棄・放任」ということになります。
 地域で高齢者ケアに携わっている人であれば、いわゆる「ゴミ屋敷」や多数の動物の放し飼いによる極端な家屋の不衛生、本人の著しく不潔な状態、医療やサービスの繰り返しの拒否などにより、健康に悪影響を及ぼすような状態に陥っている人に出会ったことがあるかもしれません。そのような人は、“セルフ・ネグレクト”の状態にあるかもしれません。

 このように紹介すると、自分で自分を放っていて、好きでそのような状態になっている人たちに、なぜ支援をしなくてはならないのかと思われるかもしれません。しかし、本当に個人の責任、個人の問題なのでしょうか。
 例えば、日本では、行政のサービス等を受けるためには、ほとんどの場合、自ら申請しなければなりません。一方で、身体機能や認知機能などの低下により、サービスにアクセスできない高齢者は数多くいます。そのような高齢者を“セルフ・ネグレクト”だからと放置してしまうことは、見方を変えれば行政の“ネグレクト”といえるかもしれません。まして、遠慮や気兼ねから、我慢して迷惑をかけないようにするという国民性をもつ日本の高齢者は、SOSを発しないために行政から気づかれずに健康状態が悪化し、時には孤立死に至ることもあります。また、家屋が不衛生な場合には、近隣とのトラブルなども考えなければなりません。

 本書では、“セルフ・ネグレクト”に陥る高齢者の背景・思いを紹介するとともに、自ら支援を求めない人へのアプローチ方法、アセスメントのための視点、“セルフ・ネグレクト”の予防策等を解説しました。
 「サービスの拒否」をする高齢者に出会ったときには、文字通りの「拒否」と受け取るのではなく、「拒否」に至った背景などを知った上で、その人の自己決定を支援していくことが、援助職には求められます。“セルフ・ネグレクト”の発見などにも役立つアセスメントツールも収載していますので、ぜひ本書を手にとって、“セルフ・ネグレクト”への理解を深めていただきたいと思います。
 また本書には、「ゴミ屋敷」や「拒否」をする人たちへの支援事例、自治体等における有効なケアシステムの例についても収載しました。具体的な支援の展開がわかりますので、専門職としてどのように介入・支援すればよいのか、行政としてどのような仕組みをつくればよいのか、参考にしていただければと考えています。

(中央法規出版 第1編集部 塚田太郎)

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