小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン(改訂第2版)対応! 約7年ぶりの改訂版!!
「起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)」をご存じでしょうか?
起立性調節障害は、思春期によくみられる自律神経機能不全であり、思春期の子どもの約1割、概算で100万人程度いると言われています。
「頭が痛くて朝起きられない」
「無理して起きたら、めまいがして立っていられない」
「身体がだるいけれど夕方には回復して、夜になると目がさえて布団に入っても寝つけず、遅刻や欠席が続き始めた」等々……。
子どもに繰り返しこのような状態がみられるとき、それは起立性調節障害かもしれません。死に至るような病気ではないため、「寝不足」「怠け」「気持ちの問題」と軽く受け止められがちですが、そうした周囲の対応が本人を苦しめる非常につらい病気といえます。
また、軽症の場合は治療しなくても大事には至りませんが、めまいや頭痛、身体のだるさ、朝起き困難など、日常生活に支障が出るようであれば、適切な治療を受けないと悪化の一途をたどり、長期の不登校から「ひきこもり」に陥ることも珍しくありません。
一昔前は、そのような考え方をもつ医師たちも多く、病気に関しての原因・治療の研究は遅れており、効果的かつ標準化された診療方法もなかったため、多くの起立性調節障害の子どもたちは適切に治療されず、なかには、治らないまま「怠け者」というレッテルを貼られてしまうケースも多くみられていたそうです。
そうした状況を打開すべく、この2書の著者である田中英高先生が中心となり、日本小児心身医学会がガイドラインづくりに着手し、2007(平成19)年に「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」を発表しました。その内容を踏まえて、起立性調節障害がどのような病気なのか、正しく診断・治療するための方法、日常生活上の留意点など、患者さんやご家族、学校関係者に知ってもらおうと、具体的な事例も織り交ぜ、ガイドラインをさらにかみ砕いた、今回の2書の前身(初版)を刊行したのです。
著者の田中英高先生は、実の娘さんが起立性調節障害で苦しんでいたこともあり、治療者としての医師の立場だけでなく、患者さんやその家族の立場にたった温かな目線で全編が著されており、それが読者の皆さんにも響いているのではないかと思います。
ガイドラインは、2015(平成27)年7月に改訂第2版が作成・発行されました。改訂第2版では、治療方法の変更はありませんでしたが、診断手順が簡略化されたり、サブタイプや治療法の名称が見直される等、軽微な手直しがはかられました。
『起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応』『起立性調節障害の子どもの日常生活サポートブック』2書も、ガイドラインの改訂を受けて、改訂版を出版する運びとなったのです。
不登校、うつ、ひきこもり等と誤解を招き混同されてしまいがちなこの病気について、その兆候や診断・治療のプロセス、サポート方法等を平易に解説し、医師・親・教育関係者が子どものSOSに気づき、適切な対応が理解できる「正しい理解と対応」。
最も家族(親子)を悩ませるライフイベントといわれ、起立性調節障害の子どもが遭遇する切実な悩みである高校進路選択を中心に、就学や就職、出産、子育てなど、日常生活上の困難に対する適切なサポート方法をまとめている「日常生活サポートブック」。
保護者の方々からは、「救われた」「目からウロコ」「繰り返し読み返してもらいたい本」「学校に資料として提供できます」「起立性調節障害になったら読むべき1冊です」等々、初版刊行以降、大きな反響の声が寄せられています。
2書を通じて、原因が明らかにならず、長い間苦しんでこられたご本人やご家族の思いを感じることができました。微力ながらもそうした方々の力になれたことは、自らの仕事に対する考え方にも影響を与えてくれ、とても印象に残っている書籍です。
(第1編集部編集第1課 米澤 昇)