「だらしない人」じゃない。「ギャンブル依存症」は病気です。
精神科病院の専門職の方でさえ最初は戸惑うことが多い依存症。しかし、IR整備法にともなって2018年に制定された「ギャンブル等依存症対策基本法」により、自治体を中心に国をあげてギャンブル依存症の当事者やそのご家族の支援にあたることが決まりました。
この本では、15人の当事者・家族の手記や、医師・カウンセラー・ソーシャルワーカー・弁護士等9人の専門家の最新の知見から、ギャンブル依存症の「いま」を学ぶことができます。
法律が制定されるのを機に、依存症の当事者・ご家族はもちろんのこと、福祉専門職の方に向けて何かお役に立てるものがつくれないだろうか、というのがこの本の出発点です。
そこから私のギャンブル依存症の世界への旅が始まりました。
編著者である吉岡隆先生へ初めてご挨拶に伺う日は、朝から緊張していました。
大先輩に連れられてご自宅兼仕事場を訪問すると、挨拶もそこそこに通された小さな建物は、先生自作の水族館。「た、試されている(のかも)…ここで何か言わなければ」変な汗をかきながら、最近めっきり鈍くなった頭をフル稼働して、生物部だった高校生の頃の遠い記憶と薄―い知識を、必死で呼び覚ましました。思えば白衣を着てみたかっただけの理由で入った生物部。もう黒歴史とは言わせない。
「次は、家族会へ来てください」。こうして汽車は動き出し、やがて自ら求めて執筆者だけでなく、依存症にかかわるたくさんの方々にお会いしました。
そのなかで、「依存症治療に依存しています」と楽しそうにおっしゃる精神科の先生や、「異動になったけれど、希望してまた依存症病棟に出戻っちゃいました。だって、楽しいから」と笑う看護師の方がいらしたことは、大変印象的でした。
ギャンブル依存症は病気です。それを支える家族もまた「共依存症」である可能性があります。病である以上、生き延びるためには治療が必要です。ここで耳寄りな情報を一つ。数ある依存症のなかで、治療に踏み出せば、ギャンブル依存症は比較的回復しやすいのだとか。
(第2編集部編集第3課 大橋玉味)