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アセスメントから導き出す、利用者がみえるケアプランとは


 兵庫県養父市にある社会福祉法人関寿会「はちぶせの里」施設長を務める著者の中野穣さんは、自らの実践や国内外の文献から得た知見等を踏まえて、一定の知識と経験があれば「自立支援型ケアプラン」を作ることができる方法論を構築。兵庫県内を中心に多くの研修会等で講師を務めています。

 2013(平成25)年8月に著した『ケアマネ1年生 はじめてのケアプラン』は、アセスメントにおける着眼点からニーズの導きだし方、ケアプラン帳票の各項目の書き方に至るまで具体的かつ体系的に記されています。
 読者からは「やさしい言葉で書いてあるので理解しやすい」「自分が無意識に行っていたことも言語化されているので役に立つ」と好評です。ただ、同書はケアプラン作成の方法論の提示を主なコンセプトとしたため、ケアプラン作成の事例は1ケースのみの収載でした。読者からは、「認知症のプランや医療依存度の高いプランなど、いろいろなケースをたくさん載せてほしかった」という要望もあり、現場実践者から寄せられるそうした熱い声に応えるべく、“『はじめてのケアプラン』<実践編>”として、さまざまな特徴をもつケースについてケアプラン作成事例を主に収載する本書を製作することとしました。

 タイトルにも表れる本書の特長としては、介護支援専門員(ケアマネジャー)のケアプラン作成に至る思考プロセスがつぶさにわかるということでしょうか。
 アセスメントに際しての着眼点や把握すべき内容、ニーズの抽出のしかた、居宅サービス計画書の書き方など、自立支援型ケアプランの作成に至る工程を、かなり詳細に示しています。
 また「アセスメントの幅」を意識していることも特徴としてあげられるでしょうか。利用者の「現在」が「過去」にどのような影響を受けているのか、また「未来」にどうつながっていくのかを、利用者の生きることの全体像として理解することの重要性を説いています。加えて、ニーズを導き出すプロセスが整理されており利用者の目標達成のための具体的手立てが提示されている、サービス担当者会議でのケアプラン解説ポイントが収載されている、アセスメントとケアプラン立案について具体例に基づいた実践的な解説が記されているなども、同書の特長(=ウリ)といえるでしょう。

 支援が難しいケースとしてあげられるテーマでもある10の収載事例を通して、利用者や家族の「思い」を中心におくことを常に意識しながら、ケアプランをどのように構成しデザインすれば、利用者や家族の主体性を尊重しつつ持っている力を最大限活用するためのケアの組み立てができるのか、多職種でニーズや目標・ケアを共有(標準化)するにはどうすればよいのか、について理解が深まるはずです。
 “高齢者のエンパワメントのために存在する専門職がケアマネジャー”であるという、ケアマネジャーに対する熱い著者のメッセージが伝わってくる一書です。ぜひ手にとっていただければと思います。

(中央法規出版 第1編集部 米澤昇)

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