援助の原点 あるソーシャルワーカーの軌跡
内容紹介
依存症の相談支援で定評のある実践家
著者は地域や臨床の場で依存症からの回復支援を中心に長く相談活動を行ってきた実践家です。
この本では50有余年に及ぶ支援活動から得た経験知をあますことなくお伝えします。
自分はなぜ対人援助職を職業に選んだのだろう
ソーシャルワーカーを職業に選んだ深層を知るために、著者は自らの原家族や生育歴を振り返ります。
また、著者自身が性への依存症者であることを明らかにし、その回復過程も語っていきます。
そして、そこから「援助とは何か」が見えてくるに違いない、と考えます。
読者は、著者の職業観や体験談から「援助の本質」を共に探っていくことができます。
事例から学ぶ職業意識と支援技法
思春期のメンタルヘルスの問題や、アディクションの問題などを中心に著者がかかわった事例やグループワークを紹介していきます。
ここには家族の問題も大きくかかわっていることがわかります。
著者が実際に行った支援から、具体的な技法も含めて、学べるところは多いのではないでしょうか。
編集者から読者へのメッセージ
本文挿画と装丁に使われている魚の版画は著者の手によるものです。
版画は毎年年賀状用に作成していて、過去二十数年分の作品を集めました。
カバーの装丁に描かれているメダルは「回復の道具」として著者がつくった記念のメダルです。
中央のアンモナイトは「こころの相談室リカバリー」のシンボルマークで、回復が直線的ではなく螺旋状であることを意味しています。
著者が設立した「こころの相談室リカバリー」での実践は、本書の中でもいちばん頁を割いている箇所であり、また20年間の統計も掲載しています。
独立を考えているソーシャルワーカーやカウンセラーの方の参考にもなるのではないでしょうか。
神奈川県立精神医療センター副院長の小林桜児先生の推薦文では、以下のように記されています。
「本書は単なる自伝ではなく、著者が援助職となった時系列としての「原点」を自らの半生に求めつつ、援助にかかわるものなら誰もが、どの場面でもそこから出発しなければならない思想としての「原点」を訴える書なのだ。」
主な目次
本文目次
誕生から幼少期0~6 歳(1946.2~1952.3)
小学校時代6~12 歳(1952.4~1958.3)
中学校時代12~15 歳(1958.4~1961.3)
高校時代15~18 歳(1961.4~1964.3)
大学時代19~23 歳(1965.4~1969.3)
大学院時代23~25 歳(1969.4~1971.3)
東京都立松沢病院時代25~33 歳(1971.10~1979.4)
埼玉県精神衛生センター時代33~37 歳(1979.5~1983.3)
埼玉県川越児童相談所時代37~41 歳(1983.4~1987.3)
埼玉県越谷児童相談所時代41~45 歳(1987.4~1991.3)
埼玉県立精神保健総合センター時代45~51 歳(1991.4~1997.3)
埼玉県所沢保健所時代51~52 歳(1997.4~1998.5)
こころの相談室リカバリー52~76 歳(1998.6~ 現在)
事例
1 「何だ! 余裕の笑いなんか見せやがって」(高校3年休学中・男子・家庭内暴力)
2 「ぼくにも時間をとってください」(40代・男性・自閉症)
3 「食事のときは蹲踞」(中学2年・男子・不登校)
4 「カウンセラーなんか辞めちゃえ!」(高校2年・女子・不登校,躁状態)
5 「ぼくを見捨てないでください」(中学2年・男子・非行)
6 「ここにあるみたいだよ」(小学5年・男子・被虐待児)
7 「ターニング・ポイント」(中学卒・女子・シンナー依存症)
8 「夜間中学の灯」(中学2年・女子・不登校)
9 「先生を傷つけちゃう?」(中学2年・女子・不登校)
10 「酒をやめて1年になります」(30代・男性・アルコール依存症)
11 「ピーターパンの短剣」(50代・男性・アルコール依存症)
12 「ノーが言えない」(40代・男性・窃盗症,性依存症,共依存症)
グループワーク
1 「退院者の集い」
2 「一二三会」
3 「青年期親の会」
4 「アルコール・プログラム」
5 「アルコール家族教室」
6 「リカバリーでのグループワーク」
付録
こころの相談室リカバリー20年間の統計/12ステップ/さまざまな依存症/著者プロフィール
著者情報
吉岡隆(よしおかたかし)
1946年浦和市(現さいたま市)生まれ
ソーシャルワーカー、カウンセラー。依存症関係のカウンセリングを中心に、精神保健福祉相談、思春期・青年期相談、依存症相談などを行う。
上智大学、同大学院修士課程修了。
東京小児療育病院、東京都荒川保健所、東京都立松沢病院、埼玉県精神衛生センター、埼玉県川越児童相談所、埼玉県越谷児童相談所、埼玉県立精神保健総合センター、埼玉県所沢保健所を経て1998年に「こころの相談室リカバリー」を開設(代表)。
主な著作は
「援助者のためのアルコール薬物依存症Q&A」(編、中央法規出版、1997)
「中高生の薬物依存」(水谷修・関紳一・近藤恒夫ほかと共著、農山漁村文化協会、1998)
「依存症(アディクション)-35人の物語」(なだいなだ・徳永雅子と共編、中央法規出版、1998)
「援助職援助論」(編、明石書店、2009)
「性依存-その理解と回復」(高畠克子と共編、中央法規出版、2001)
「アルコール依存症は治らない“治らない”の意味」(なだいなだと共著、中央法規出版、2013)
「窃盗症(クレプトマニア)-その理解と支援」(竹村道夫と共編、中央法規出版、2018)
「ギャンブル依存症-当事者から学ぶその真実」(編、中央法規出版、2019)
など