持続可能な酪農 -SDGsへの貢献-
内容紹介
人口増加、グローバル競争、地球温暖化、コロナ禍といった社会・経済・環境などの多面的な側面から見て、今後、人類社会はこれまでにない変動性の高い状況におかれることが予想されます。こうした中、持続可能な社会を創造し安定的な展開を図って行くためには、回復力、変化対応力を構造的に内包した仕組みをあらゆる分野で戦略的に構築することが重要です。
国連が目指すSDGsはそうした取組みを代表するものであり、本書は、わが国の酪農分野(乳の生産や利用の分野)におけるSDGsの取組みに係る具体的なモデルを整理し提示することを目的に刊行されました。本書の執筆者は、一般社団法人Jミルクが展開する「乳の学術連合」のメンバーであり、乳業界における様々な分野の研究者による共同研究の成果を書籍化したものです。
「乳の学術連合」とは
我が国における牛乳乳製品の消費の維持・拡大及び酪農乳業と生活者との信頼関係の強化を図っていく観点から、牛乳乳製品の価値向上に繋がる多種多様な情報を「伝わり易く解かり易い表現」として開発し、業界関係者及び生活者に提供することを目的とした健康科学分野・社会文化分野・食育分野の専門家で構成する組織の連合体です。
編集者から読者へのメッセージ
2015年、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の採択を受け、日本でもSDGs への取り組みが本格化しています。上場企業の90%以上がSDGs に取り組んでいるといわれています。
SDGs にはガバナンスのルールがなく、取り組みの多様性が認められているからこそ、包括的な将来ビジョンの国際的完全合意が実現したといえます。特定の方法やルールに縛られない点、政府のみならず企業、業界、研究者、市民など多様なステークホルダーの個別および連携した取り組みを積み上げるという点で、SDGs の手法はこれまでになかったユニークなものです。
2030 年までに目標を達成するSDGs への取り組みや2050 年までに温室効果ガスの国内排出を実質ゼロにする日本政府の取り組みはいずれも長い時間軸で実践され、新しくオルタナティブなものであることから、研究や実践も変化しながら発展させていく必要があります。本書には未熟な点や課題も残されていますが、新しい研究分野の嚆矢となることを目指している点、異なる分野の研究者が集まり議論を重ね、学際的・横断的なスタイルで研究をスタートさせる点においてSDGs の思想に適合しているといえます。
主な目次
序 章 酪農から考えるSDGs
第1部 日本酪農とSDGs
第1章 SDGs構築のための栄養と食事の役割
第2章 SDGsからみる学校給食牛乳の課題
第3章 酪農教育ファームが育むSDGs構築の資質と能力
第4章 酪農における温室効果ガス排出の実態と削減の取り組み
第5章 テリトーリオに根ざした酪農のSDGsへの貢献
第2部 海外酪農とSDGs
第6章 競争戦略としてのアグロエコロジー的移行とSDGs
第7章 オランダにおける持続可能な酪農
第8章 いま、消費者(市民)が求める持続的酪農の姿とは
第9章 持続可能な酪農を目指す各国の実践的取り組み
終章 日本酪農の持続可能な発展、その実現に向けて
あとがき
著者情報
執筆者 (執筆順)
木村 純子 法政大学経営学部 教授 [序章・第5 章]
中村 丁次 神奈川県立保健福祉大学 学長 [第1 章・あとがき]
大江 靖雄 東京農業大学国際食料情報学部 教授 [ 第2 章]
角屋 重樹 日本体育大学大学院教育学研究科 科長 [第3章]
山根 悠平 日本体育大学大学院教育学研究科博士後期課程 [第3章]
荻野 暁史 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 上級研究員 [第4 章]
須田 文明 農林水産省農林水産政策研究所 主任研究官 [第6 章]
岡田 直樹 秋田県立大学生物資源科学部アグリビジネス学科 教授 [第7章]
宮田 真由 秋田県立大学生物資源科学部アグリビジネス学科 [第7 章]
竹下 広宣 名古屋大学大学院生命農学研究科 准教授 [第8 章]
新 光一郎 一般社団法人Jミルク 国際グループ 部長 [第9章]
前田 浩史 乳の学術連合・乳の社会文化ネットワーク 幹事 [終章]