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保育士等キャリアアップ研修テキスト 3障害児保育

内容紹介

ガイドラインに準拠した、キャリアップ研修の定番テキスト

 保育士等キャリアアップ研修のガイドラインに準拠した定番テキストが7年ぶりに改訂! 7年間の制度の流れ、障害児保育をめぐる動向を踏まえ、リニューアルしてお届けします。

改訂の特徴

 7年前の保育現場といえば、待機児童問題に端を発した量的拡充に向けて、園数の拡大が図られていました。しかし、現在では待機児童問題はほぼ解消され、少子化・人手不足という課題に直面し、質の向上が求められています。
 障害のある子どもへの保育も例外ではありません。医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の成立(令和3年)、児童福祉法の改正(令和4年)など、制度的な支援も大きな変革期を迎えています。
 現場の保育者に求められる知識やかかわりもアップデートが必要とされるのです。

テキストならではの強み

 キャリアアップ研修については、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、オンラインでの受講も増えています。しかし、ミドルリーダーとして、研修で得た知見を自園に還元するには、テキストを読み返し、マイノートとして自身にしみこませることが有効です。本テキストは最適なマイノートとなることでしょう。

編集者から読者へのメッセージ

 障害のある子どもへの保育は日進月歩ですが、保育者の子どもへのまなざしは不変です。今回の改訂では、制度の動きはもちろん、障害のある子どもたけに焦点を当てるのではなく、クラスの中でどのように集団の良さを活かすのかというインクルーシブ保育、グループダイナミクスの視点を意識しています。
 合わせて、医療的ケア児など、保育者がかかわる子ども像も多様になっていることから、より多くの知見や学びが欠かせないことを踏まえて編集作業を行いました。
 すでにキャリアアップ研修の「障害児保育」分野を受講した方々にとっても、自身の学びのアップデートに最適な1冊です。

主な目次

第1章 障害のある子どもの理解
第1節 障害のある子どもの理解
 「障害」とは
 障害のある子どもの理解と保育士等のかかわり
 障害の多様化と受入れに関する状況
第2節 合理的配慮に関する理解
 障害者の権利に関する条約と合理的配慮
 障害者差別解消法
 合理的配慮の具体例
第3節 障害児保育に関する現状と課題
 障害のある子どもの保育参加
 障害児保育の課題
 保育参加の工夫
 保育所内外の連携の下で見通しのある支援を実施する

第2章 障害のある子どもの発達の援助
第1節 さまざまな障害の見方と支援
 環境との相互作用で現れる本人の困難性
 知的発達の遅れへの見方と支援
 発達障害のある子どもへの見方と支援
 不安障害のある子どもへの見方と支援
第2節 集団のなかでどのように育むのか
 障害のある子どもを含めたこれからの保育
 集団生活における葛藤
 遊びの充実から“問題となる行動”を考える
 子ども同士の関係を多層的にみる

第3章 障害児保育の環境
第1節 個々の発達を促す生活と遊びの環境
 生活しやすい環境と遊びが深まる環境とは
 障害児保育における環境の重要性
 クラス全員が生活しやすいユニバーサルな環境づくり
第2節 障害のある子どもと保育士等、ほかの子どもとのかかわり
 障害のある子どもとほかの子どもとのかかわり
 クラスの子ども同士の関係を理解する
 記録のとり方で配慮したいこと
 子ども同士のかかわりに対する保育士等のかかわり方
第3節 他職種との連携
 人的環境としての保育士等、その他の職種
 他職種の役割と連携
 リーダーとしての役割
 職員間の連携

第4章 障害児保育の指導計画、 記録および評価
第1節 全体的な計画に基づく指導計画の作成
 「全体的な計画」「各年齢の指導計画」 「個別の指導計画」の関係
 全体的な計画から個別の指導計画への目標の段階性
第2節 個別の指導計画の作成
 個別の指導計画の様式
 個別の指導計画の作成と実践の手順
 子どもの実態把握を行う
 実態把握の結果から子どもに即した目標を設定する
 目標の達成に向けた具体的な援助方法を設定する
第3節 障害児保育の評価
 障害のある子どもの姿を記録し、評価することの意味
 子どもの現在の姿をとらえ直す
 評価における「問題点モデル」と「信頼モデル」
 目標に関連する援助の方法を問い直す
 保育所内で共有するための保育カンファレンス
 評価の結果を保護者と共有する

第5章 家庭および関係機関との連携
第1節 保護者や家庭に対する理解と支援
 障害の発見
 保育所保育指針にみる保護者・家庭への支援
 障害受容とは
 保護者とどのようにかかわるか
 ともに子どもの将来をみる

第2節 地域の専門機関等との連携および個別の支援計画の作成
 保育所保育指針等にみる関係機関との連携
 特別支援学校と 「個別の教育及び保育支援計画」「個別の指導計画」
 相談・連携できるさまざまな専門機関
第3節 小学校等との連携・接続
 保育所等と小学校の連携・接続
 就学先の決定に向けて
 障害のある子どもの就学先
 就学に向けた保護者対応

演習の進め方
 演習の方法
 より深い学びに向けて
 受講の記録

著者情報

監修
秋田喜代美
 学習院大学教授・東京大学名誉教授
馬場耕一郎
 こども家庭庁育成局基盤企画課教育・保育専門官 保育指導専門官
編集
松井剛太
 香川大学准教授
執筆
松井剛太
広瀨由紀(共立女子大学教授)
佐藤智恵(神戸親和大学教授)
吉川和幸(国立特別支援教育総合研究所研究企画部総括研究員)
小林徹(郡山女子大学教授)

最後に、本書の編者である松剛太先生(香川大学准教授)に、本テキストに込めた思いをお伺いしました。

――2018年の初版発行から7年ほど経過しますが、この間、障害児保育をめぐる国内外の動向はどのような変化や動きがありましたか?
松井 SDGsの取組が本格化する中で、すべての子どもの人権やインクルーシブな保育への意識が高まりました。たとえば、医療的ケア児の受け入れなど、これまで以上に、多様な障害のある子どもたちが保育を受けることになってきています。

――その変化の中で、保育所や認定こども園、幼稚園などに求められること、また保育者一人ひとりに求められることは何でしょうか?
松井 保育の基本である一人ひとりの子どもを尊重することに立ち戻ることが重要です。具体的には、障害の有無にかかわらず、子どもたち一人ひとりの多様な声を受けとめ、子どもを中心にした保育を検討することです。

―新型コロナウイルス感染症の蔓延を機に、保育士等キャリアアップ研修もオンライン受講が増えてきました。本テキストを対面・オンラインで学ぶミドルリーダーの方々に、どのように活用してほしいでしょうか?
松井 本テキストには事例もたくさん掲載されています。対面・オンラインで共通して、皆様の施設にいらっしゃる子どもを思い浮かべて、類似する事例からエッセンスを学んでほしいと思います。また、対面では受講生間、オンラインでは園内の同僚との対話など、意見交換の材料にしていただきたいと思います。

松井剛太先生