小児看護学実習ハンドブック
内容紹介
小児看護学実習でつまづかないために
少子化のなか子どもと接したことのない看護学生が増えています。乳幼児は言葉が理解できないことはもちろん、わかるような年齢になっても思ったことをストレートに表現したり逆にそっけなかったりと、子どもの気持ちを読みとることはなかなか難しいものです。しかも、学生だからと配慮をしてくれないので、小児看護学実習に大きなプレッシャーを感じる学生は多いようです。
観察力、推論力を磨くことができる
そこで本書では、先輩看護学生が実際に困惑したり、つまづきそうになった状況をとりあげ、何を観察しどのように対応していくことができたかといった振り返りを数多く掲載しています。同じような状況になったとき、あるいはその前から対策や準備をすることができるので、余裕をもって実習に臨むことができ、子どもとの関係を楽しむことができます。
子どもは意思疎通が難しいため、親も含めてさまざまな情報や知識をベースに観察力を発揮し、置かれた状況、やるべきことを推論していくことが、小児看護には求められます。そうした力を磨くことが小児看護学実習では可能なので、他領域の臨地実習でも役立てることができます。
実習の場の広がりにも対応
病気や障害のある子どもに接するために必要な知識として、法律制度や関連する他職種などについては本書中で復習しており、実習中に見直すことができます。また、最近は臨地実習の場が病院だけでなく、保育所や学校、在宅にまで広がっています。そうしたところで何を学ぶのか、見学のポイントなどもまとめているので、小児看護学実習を実りの大きなものにすることができるのです。
編集者から読者へのメッセージ
臨地実習の疑似体験から推論する力を身に着ける
本書では、単に知識を一方的に提供するのではなく、臨地実習に臨む看護学生が実際に戸惑ったこと、指導者からみて問題と思われることを具体的な事例として加工し、どのようにすればいいのかを一緒に考えていくスタイルをとっています。
事例を読めばあたかも同じ経験をしたように感じますが、いざ実際に同様の状況に出会ったときにうまくいくとは限りません。疾患や障害、療養環境、家族関係など一見似てはいても、一人ひとりの子どもはすべて違うからです。しかし、本書では事例を通じてどのような情報を得て何を考えていくのかといった推論する力を磨くことを目指しました。それこそが、小児看護のだいご味、臨地実習でぜひ一端なりとも触れていただきたいです。
主な目次
第1章 これからの小児看護学実習の特徴と子どもに関わる法律・制度
1.これからの時代の小児看護学実習
2.子どもと家族に向き合う心がまえ
3.多様な実習施設の特徴と多職種を理解しよう
4.子どもの生活を支えるさまざまな法律・制度
第2章 実習前に準備しておくと役に立つこと
1.実習前のイメージ作り
2.実習前の自己学習のすすめ
第3章 病院で小児看護を学ぶ
1.看護を実践する
1)コミュニケーションが難しそうな子どもを受けもったとき
(1) しゃべれない赤ちゃんにどう関わればいいの?
(2) 思春期の子どもに話しかけてもそっけない
2)子どもの反応の解釈に困る
(1) なにを言っても「イヤ」と言われる
(2) 本心を言うとは限らない思春期
3)泣き・不機嫌な子どもへの関わり
(1) 処置で大泣きしている子どもに近づけない
(2) 理由のわからない泣きや不機嫌に戸惑う
4)子どもへの具体的な対応方法を考える
(1) 昨日喜んでくれた遊びなのに、今日は喜んでくれない
(2) 遊びの切り上げかたが難しい
(3) その場しのぎの約束を守らず、子どもが怒った
(4) つい子どもの機嫌をうかがってしまう
5)子どもの症状の見方とケアの実施
(1) うまく表現できない子どもの症状を把握するには
(2) 子どもが遊びに夢中になっているときはケアをしてもいいの?
(3) 子どもが嫌がっているときはケアをしなくていいの?
(4) 具合が悪いかもしれないときは、ケアをやめたほうがいい?
(5) 病気のときにも子どもは自分でしないと成長発達できないの?
(6) 順調な経過だと、何をしてあげたらいいのかわからない
(7) 退院に向けて何を考えればいいのかイメージできない
(8) 子どもへのケアの進め方
6)親や家族との関係に悩む
(1) 付き添いの母親と遊んでいるところに入りにくい
(2) ケアをじっと見られると評価されているようで緊張する
(3) 深刻な病気の子どもをもつ母親に気持ちを聞いていいの?
7)NICUに入院中の低出生体重児の看護の基本とアセスメント
(1) 全体像を把握するためのフィジカルアセスメント
(2) NICUに入院する子どもをもつ家族のアセスメント
8)障害のある子どもの理解と看護
(1) 知っておきたい重症心身障害児の知識
(2) 重症心身障害児とのコミュニケーション
2.看護の見学から学ぶ
1)検査や処置を見学する前になにを学習してよいかわからない
2)検査や処置前から検査後までの見学時の注意点
3)看護師に同行し、1日の看護を見学するシャドーイング
3.実習をよりよくするための取組み方
1)報告の仕方と指導の受け方
2)グループでの協働学習の効果的な方法
3)実習中の振る舞い方
4)学習を深める振り返り(リフレクション)の方法
第4章 日常生活を送る場で小児看護を学ぶ
1.保育所・認定こども園・幼稚園での実習
2.学校での実習
3.特別支援学校での実習
4.学校と保育教育関連施設に共通する対応事項
第5章 在宅で小児看護を学ぶ
1.小児在宅看護での学び
2.訪問前の準備
3.訪問中の見学とケア
4.訪問後の振り返り
終章 小児看護学実習の経験を活かすまとめと獲得した学習成果の活用
1.小児看護学実習で得た学びを統合する必要性
2.子どもの生活の場の変化を繋げて少し先の状況を見通す
1)健康回復や治癒の見通し、その先の生活をイメージする
2)子どもの生活の場の変化と支援者との連携
3)健康障害のある子どもの心理社会的発達
3.学生自身の実習経験を活かす
1)病院でのまとめや振り返り
2)学内で実習の経験を深める
4.小児看護学実習の学習成果をすべての看護に活用する
1)観察を詳細にする
2)非言語的な観察から気持ちを推測する
3)相手の状況を多面的にアセスメントし個別性に合わせて看護を考える
4)家族も含めて看護を考える
5)自分を見つめ直す機会になる
著者情報
編集
泊 祐子 四天王寺大学大学院看護学研究科教授
岡田摩理 日本赤十字豊田看護大学教授