第44回 コンビ二のドアを開け、荒野に向って走るジョー
かつて実家の周辺は畑でした。
その畑の地主が同じ(親戚ではないが)名字で縁を感じ、その畑の一角に父は家を建てたのです。
その周辺は地主の畑だけでなく、当時は東京教育大学農学部の敷地もあり、牛や豚や鶏、そして沢山の野菜があり、川が流れ、それはそれは都会のオアシスのような所でした。
私の通っていた学校は課外授業で農業をやり、その授業の一環の芋ほりでこの農場に行くことがありました。そんな時は私は家の前なので、直接、農場へ行ったものでした。
そんな所でしたので、スーパーに行くこともなく、この農場で食材は揃えることが出来たのです。
それから私が大人へとに成長していくのと並行に、この東京教育大学農学部の農場も筑波大学となり、茨城へ引っ越して行きました。
それでも、地主は相変わらず、畑をやっていますし、公園も出来、緑は残っています。
農場も無くなり、住宅地ですので、買い物は最寄の駅まで行かなくてはなりません。そんなのどかな住宅地に気が付いたらコンビ二が出来ていました。
当分の間は、宇宙から突然、来たお店というような異空間でした。
しかし、新し物好きの父は、真っ先に行って飲料水を購入。そのうち、お弁当をたまに買ってくるようになり、母と私は「絶対、『奥さんに逃げられたんじゃない?!』って、噂されているわよ!!」と、話したりもしていました。
その空間は若者たちの都合のいい溜まり場になり、大人が一人で行きにくい空間という時期もあり、時代と共に変化し、今や、高齢者の方を見かけることが多くなり、三世代の集合空間となっているのではないでしょうか・・・
そんな三世代の高齢者部門の代表といっても過言ではない程、コンビ二を利用する父。
先日も仕事で午前中、外出していましたら、お昼が近くなると、ソワソワし出し、「早くしないと無くなっちゃうから!!」っと。
それはコンビ二のお気に入りのおにぎりセットが売り切れないか心配していたのでした。
一目散にコンビ二に入っていく父。
西部劇のバーの扉から出てきたような出で立ちで、コンビ二袋を二つ提げて出てきた父。
家の前で父を降ろすと、別れ際に「これはオマエのだ!!」と、一袋を私に差し出し、門の中へと消えて行きました。
コンビ二弁当を食べたことのない私はそのまま、父からもらったお弁当を冷蔵庫へ。
「何、このお弁当買ったの?! 珍しいね!!」と、仕事から帰った夫が冷蔵庫を開けて一言。
「パパからの差し入れよ」と、私。
「このおにぎりおいしいんだよな!!」と、夫。
どうやら同じ種類のオトコを私は夫にしたようです。
荒野に佇むガンマン、オールド・ジョー。ウエスタンコンビ二店の扉を片手で開け、おにぎりを買い占め、馬に乗り、再び、荒野へと消えて行く・・・夕日が沈むころ、崖っぷちで、コンビ二袋から出したおにぎりを齧り、ニヤリと笑みを浮かべるオールド・ジョー。そして、夕日と共に荒野のどこかへ馬に乗り去って行く・・・
夫が、父からもらったおにぎりセットを食べている姿を見ながら、私はそんな空想をしていました。
ガンマンの父と、夫(太田剣)と私
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