第38回 ブログのジョー
テレビのない時代でした。
映画が唯一の娯楽でした。
大学の時、日活ニューフェースの募集に合格し、映画俳優になった父。
映画館に観に行っていた側が、スクリーンの中の人になりました。
映画館の大きなスクリーンの中に存在する父。それは、今までとは違う異空間の世界であったでしょう。
1953年、NHK放送開始。同年に日本テレビも開局しました。
外に出掛けて観に行かなくとも、家庭で映像が観られるようになったのです。
テレビの時代が始まり、生ドラマに父は出演するようになり、やがて、バラエティーにも挑戦するようになりました。映画俳優もあらゆることに挑戦しなければならない時代が来たのです。
私が中学ぐらいの頃、VHS、ベーターとビデオが出来、父の出演する、「巨泉×前武のゲバゲバ90分!」や、「カリキュラマシーン」、「元祖どっきりカメラ」等、見逃すことなく録画出来るようになりました。
そして、1990年、ハイビジョンが発売。
観ている側は画像が鮮明になり、より綺麗な映像を楽しむことが出来るように。しかし、ブラウン管の中の演じている側の父達は、ドーラン等も以前と違う物を使用するようにと、いろいろと対応に困りました。より、リアルに鮮明になった分、ごまかしも効かなくなって来たのです。
それから、映像も音楽もDVDにより、家庭でいつでも観られるようになり、映画館に足を運ぶ人が少なくなっていきました。しかし、3Dの出現により、新し物好きの方たちが映画館に行くように・・・そして、ついに、家庭でも3Dが観られるようになりました。
あと数日後、地上波アナログテレビが終了します。
思えばテレビのない時代から生きてきた父は、時代の変化と共に、自身を対応させてきたと思います。
電話もダイヤル式からプッシュフォン、留守番電話。そして、携帯電話。携帯電話も薄くなり、タッチパネルのスマートフォンになり、インターネットも出来るように・・・
パソコンも一家に一台は当たり前で、高齢者の方もインターネットをやられる時代です。
宍戸錠も、今から十年位前にノートパソコンを購入し、最初は一生懸命、挑戦していましたが、「パソコンより、書いた方が早い!」と、ノートパソコンは閉じたままになっています。
そんな父に、今週からある企業のブログを書くお仕事が決まりました。
「ブログっていうのは、日記みたいに書いていくの」
「コメントが着たら、それに返事したり・・・」と、説明する私。
「例題を持って来い!!」と、父。
いくつかの例題を持っていった私に、「まあ、だいたいテーマは固まってきたな。ブログの締め切りは何時か?」
父が『ブログ』という言葉を言う度に笑ってしまいそうになる私。
「まかせろ!! パッと書いてやる!!」と、父。
「絵文字も使っていいのよ」と、絵文字の例題を見せる私。
「絵文字か・・・」と、父。
笑いそうになるのを我慢する私。
テレビもインターネットもない時代から生きてきた、喜寿の宍戸錠。
今週から、いよいよブログに挑戦です。
どうなることやら・・・
皆様、ブログのジョーに、乞うご期待を・・・
次回(7/18)休載します。
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