第13回 ”喜寿のお祝い”
12月6日は父の誕生日です。77歳。喜寿。
縁起が良いと言われる7という数字に私はとても縁を感じずにはいられないのです。
1963年「メキシコ無宿」の映画のロケで、父がメキシコに訪れたとき、私はこの世に誕生しました。
「メキシコ無宿」(蔵原惟繕監督、1962年、日活)
宍戸錠の第一子でもある私の誕生のとき、父は仕事で立ち会うことができませんでした。そして、母は夫不在で初めての出産をしたのです。
私が生まれたときの病室は7号室。そして、7時に私は生まれました。
「ラッキーセブンだわ」と母。
「これは運が良い。7の付く名前にしよう」と父。
二人は「ナナちゃん?!」、「セブンちゃん?!」と思いつく7に関することを考えたあげく、ロケ地のメキシコがスペイン語圏であることから、スペイン語の7、つまり「シエテにしよう!!」と決めたそうです。しかし、漢字に当て嵌めるとなかなか良い字がない。両親にとっても歴史的な第一子誕生であるということから、歴史絵巻の中の史絵という字にしよう、と決めたそうです。そして、「シエテ」の「シエ」までは決まったものの、「テ」という字がどうも上手く当てはまらない。それじゃあと「テ」抜きで「シエ」だけでいい、ゴロもあう。そうして、「テ」抜きの「史絵」ということに決まりました。
「今思うと、『テ』抜きにしてしまったことが原因で手抜きな人生になってしまったんだな(笑)」と父は言います。そして、私もそう思います(笑)。でも、少し欠けた「7」、“ちょっとラッキーセブン”で良かったのかもしれないと、今はそう思います。
さて、77歳になった父は「今年は誕生日パーティーをやらない」と言い出しました。
「ママがこの世を去った年に、自分がこの世に誕生した日を祝ってどうなる!」 そう父に言われた時、生と死について私の中に重たいものが圧し掛かりました。ですから、「喜寿」の祝いを大々的に企画するどころではありません。
しかし、宍戸錠事務所のメンバー、そして、私達を支えて下さる方々の要望もあり、内輪だけの誕生日パーティーをやることになりました。
いつものようにローストビーフを焼き、サラダを自ら、父は作りました。
そして、普段飲まないワインを父は飲みました。それは、母が集めていたワインの中の1本でした。
誕生日の父は、いつものお酒と違い、大人しく、大人なお酒を味わいました。
それは天国の母からのプレゼント・・・とても素敵な喜寿のお祝いとなりました。
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