第9回 「警察日記」・・・森繁久弥さんが震える僕の肩にそっと手を・・・
イカの活き造りを前に「動いてる! 動いてる!」と父。
イカの脚が「ピンッ!」と跳ね返り、「キャーッ!」と、かわいらしい女の子のように叫ぶ女優さん。
唐津は美味しいものがいっぱいです。
「『くいしん坊!万才』以来だな」と父。
今回は映画祭のため、この地に私たちはやって来ました。
地方では映画館がどんどんなくなり、ここ唐津では、もう、一館もないそうです。
この唐津に住んでいらっしゃる方はシニアの方々が多く、やっと、時間に余裕ができ、映画などの娯楽で楽しみたいと思っておられます。
ですから、映画祭など、イベントを企画して、映画を上映するほかないのです。そこで、平均年齢68歳の方々が立ち上がり、シニア映画祭を、この度、開催することになりました。
第1回は、この唐津でお生まれになりこの地で過ごされた脚本家の井手俊郎さんの生誕百年記念ということで、彼の作品を上映しようと、唐津焼の里映画祭実行委員を作り、ゲストの方々を呼んでシンポジウム、舞台挨拶をすることになり、”映画”といえば時間の許す限り協力したいと映画俳優・宍戸錠は唐津の地へやって来たのです。
会場には千人近いお客様に足を運んでいただきました。
脚本家の井手俊郎さんの代表作は原節子さん主演「青い山脈」(今井正監督)、秋吉久美子さん主演「チーちゃんごめん」(西河克己監督)、森繁久弥さん主演「警察日記」(久松静児監督)などがありますが、「警察日記」という作品で父はデビューしたのです。そして、この中でかわいい子役を演じたのが、イカの脚が跳ね返ったので驚いた女優、二木てるみさんです。
父はこの作品で森繁久弥さんや三國連太郎さん等のスターと共に一枚タイトルで、宍戸錠(新人)とポスターに書かれ、本当にビビッたそうです。
そして、この度、55年ぶりに映画「警察日記」の舞台挨拶をこの唐津ですることになり、昔を思い出して、「とにかく、当時の舞台挨拶の日は舞台袖で体の震えが止まらなかったんだよ・・・全てが初めてだったから」
「森繁さんが、『肩に僕が手をかけたら、震えが止まる!』」
「わかったね、ジョーくん」
「本当に森繁さんに肩に手をかけてもらった時だけ、震えが止まるんだよ」と父。
それほど、初々しい青年は、その映画でとても綺麗な顔をしていました。
「警察日記」(1955年、日活)
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