第8回 三途の川を渡るように・・・そっと父の腕に手をかけてくれた浅丘ルリ子さん
大きなホールに沢山の方々が集まりました。弔問まで、まるで、長く、長く、続く三途の川のように・・・
少し、疲れ気味の父の後ろを私達夫婦は歩きます。
突然、私達の背後から「ジョーさん」と、ダランとぶら下がっている父の腕を掴み、無邪気な恋人同士のように腕を組んだ、妖精のような女優さん。
彼女は日活の一般公募でのオーデションで選ばれた妖精のような少女です。その女優さんを主演に起用し、「浅丘ルリ子」と芸名を名付け、『緑はるかに』でデビューさせた井上梅次監督。
父は『勝利者』という作品で監督とご一緒させていただいています。
皆様に親しみのある「『嵐を呼ぶ男』という作品の監督です。
沢山の作品を残され、今年の始めに天国に逝かれました。そして、[お別れ会]が4月13日に行われました。
弔問までの長い、長い、道のり、父は「どんどん、皆逝っちまうな」。
「ジョーさん、疲れてるみたい、元気だして」と、浅丘ルリ子さん。
「しえちゃん大きくなったわね」(浅丘ルリ子さんに限らず、日活の俳優さん達にとって私は撮影所に母に連れられて行った幼い時の「しえちゃん」のままなのです)
「あの映画、なつかしいわ」 お話をしながら、川の流れに従って、進んでいきます。
弔問をし、井上梅次監督とお別れをした後、「本日、体調を崩されてお越しになれなかった、監督の奥様、月丘夢路さんにメッセージをお書き下さいませ」とアナウンスが流れ、ぼーっとしていた父に、「書きましょう」とリードしてくれる浅丘ルリ子さん。
川の流れは終わり、娘の井上絵美さんが一人ひとりにご挨拶をし、「献杯」と井上梅次監督とお別れのお酒を飲んだとき、ちょっとよろけた父。
浅丘ルリ子さんのやさしさに、気を許したのか・・・
帰りの車は川の流れにのっているのか、宙に浮いているのか、そんな感じがしました。
そして、3日後、母も三途の川を渡ったのでしょうか。
それから、2ヵ月後、[日活 仲間の会]で、壇上で父と腕を組み、笑顔で「乾杯」と浅丘ルリ子さんは音頭をとりました。
また、ちょっとよろけた父。
でも、日活の仲間が「ジョーさん、飲み過ぎないように」とフォローしてくれます。
ここにいらっしゃる皆さんが共演する映画が日活100周年で観られたらと私は思いました。
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。