<連載13> 言語聴覚士ってご存じ? その4
2012年11月30日 09:45
脳卒中は突然起きます。病院に着くや直ちに医師と看護士さんが治療。症状にもよりますが、理学療法士による身体機能のリハビリもすぐに始まります。時間勝負の面があるからです。なかには言葉に障害が出て、失語症や構音障害になる方もいます。でもこういう状況に直面した経験のある家族は少ないでしょうね。最初はビックリするし、失語症の方との会話をどうすればいいかわからず、面くらう。病院ではST(スピーチセラピスト=言語聴覚士)さんがリハビリをしてくれますが、家に戻れば家族やヘルパーさんが対応しなくてはなりません。
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前回も触れたように、言語聴覚士の石田瑞恵さんによると、言葉が出ないからといきなり50音表をだして「指さして」と会話をしたがる家族の方もいるそう。そんな無茶なやりかたをせず、「イエス、ノーで答えられる質問にするなど、症状に応じて対応してください」とのこと。それも「ゆっくりが基本。急がせないでわかるまで待ちます」。
大事なのは、失語症でしゃべれなくなっても、その方自身の人格はしっかり残っているということです。知能が低下しているわけではありません。伝えること、話すことが難しいだけ。だから幼児語で話しかけるなんて論外。でも病院では多いですね。一時的に高次脳機能障害などでレベルが下がることがあっても、子どもになるわけではないのです。
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「語学に堪能な方は別として、私たちが英語を聞く時の感覚に似ています」と石田さん。
最初はちんぷんかんぷんでも、単語一つ一つをはっきり、ゆっくり、短いセンテンスに言い直してもらったら、だんだんわかってきますよね。
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失語症では、ひらがなばかりが並んだ文章がわからない人が多いようです。ボクも同じで、かな続きの文は苦手ですね。文字ではなく、模様になっちゃう。どこを読んでいるのか迷う。50音の区別がつかなくても、漢字が入ると何となくわかる人もいるようです。表音と表意の違いなのでしょうか。
ボクは何桁も数字が並んでいるのもだめ。新聞などで行を順に追っていく時、行がわからなくなります。1行の字詰めが多いとなおさらです。会報誌などに、1行の長さも、段落も、恐ろしく長いものって時々ありますよね。なるべく整理してもらいたい。文章は読み手のためのものだと思うので…。
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最後に、石田さんに、STさんになったきっかけを聞きました。
「おじいちゃんがくも膜下出血でうまくしゃべれなかったので……。その頃、STはあまりいなくて、私は理学療法士になりたいと思っていました。おじいちゃんは“バカヤロー”しか言えないまま亡くなってしまいましたけれど、もしSTがいたら、違っていたのかな?!」
原点って大事ですね。
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言語聴覚士の石田さん。笑顔がいいですよ
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次回の更新予定は12月14日(金)です。
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