安全な老後の住まいを考える(2)~~グループホームの惨事に思う
■離島とはいえ、中山間地域の奄美市
奄美市は、鹿児島市の南西約370~560キロの奄美群島、通称、奄美大島の北部にあります。この奄美群島は、大島本島をはじめ、喜界島(きかい)や徳之島、沖永良部(おきのえらぶ)島、与論(よろん)島など有人8島からなっています。
総面積は1,239平方キロで、一番広い大島本島は720平方キロです。このため、わが国の離島のなかでは沖縄本島、佐渡島に次ぐ広さを誇っています。
気候は亜熱帯海洋性で、四季を通じて温暖です。ただ、1日の平均気温が10度以下になる日はめったにないため、四季の変化に乏しいのが特徴です。
今回、惨事となった奄美市は大島本島の北部にあり、2006(平成18)年、名瀬市、笠利町、住用村の1市1町1村が合併して誕生した市で、群島のなかで一番大きな自治体となりました。人口は2010(平成22)年9月現在、約4万9000人で、高齢化率は24.05%となっています。
地理的には、南は太平洋、北は東シナ海に面しており、風光明美なところですが、市の南部のほとんどは、最高峰の金川岳(標高528メートル)などがたたずむ山岳部で、その山間を住用川や役勝川が流れ、集落を形成しています。このため、昔は川舟でそれぞれの集落を行き来したことから、シマ(島)」といわれていましたが、現在では山にトンネルを通して道路ができたため、住民の足が確保されたそうです。
残念ながら、筆者はまだ奄美群島に訪れたことはありません。しかし、毎年、沖縄の大学へ集中講義に出かける際、利用する飛行機の上空からいつも見下ろしているため、ふだんから身近に感じている離島ではあります。
■豪雨地帯への集中豪雨
奄美群島はこのような地形のうえ、沖縄本島と同様、毎年のように台風に襲われているため、“台風の通り道”になっています。
現に、旧名瀬市を中心に、年間2,800ミリ以上の雨が降るため、長雨や集中豪雨によっては谷や山の斜面に溜まった土や砂が、雨水とともに一気に集落を襲う危険性を常にはらんでいます。また、地震の多発地帯ともいわれています。
そこで、市では住民に対し、日ごろから災害に備え、防災に欠かせない知識や技術を周知しています。
また、危険個所の点検や一人住まいの高齢者、子どもの多い世帯など、災害に弱い立場にある人たちをリストアップし、避難訓練を実施しています。さらに、自治会などを中心とした自主防災組織をつくって自衛するなど、呼びかけているそうです。
そこへ今回の集中豪雨というわけで、案の定(?)、山からの土砂崩れと、住用川の濁流によってグループホームの1階部分が冠水しました。また、近くの特別養護老人ホーム「住用の園」の入所者や職員、さらには周辺の住民も家屋の倒壊や床上浸水などで体育館や公民館、学校などに避難することになりました。
当然のことながら災害救助法の適用となり、全国から救援物資や義捐金が続々と寄せられています。また、市も被災した住民に対し、被災住宅応急修理などの費用を助成するなど、復旧に全力をあげています。
惨事に遭ったグループホーム周辺の地図(Yahoo「地図」より)
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