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川村匡由の人生設計ゆとりサロン

離島を考える(3)~離島の実態と課題

■離島の実態はこうだ

 さて、これまで、日本の離島をめぐる政治的、経済的な問題を中心にお話ししましたが、離島を終の棲家として生活している住民にとっては、上述したような政治的、経済的な問題だけでなく、日々の暮らしにも大きな影響を受けています。

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 日本には6852の離島があり、このうち、無人島や本州などと橋でつながっているものを除けば、260の離島が離島振興法にもとづき、離島振興対策実施地域に指定されています。

 その総面積は5,245平方キロ・メートル、また、総人口は47万2000人ですが、対全国比ではわずかに総面積で1.39%、総人口で0.37%にすぎないそうです。しかし、高齢化の進行や本州への進学や就職、結婚、福祉施設の入所や病院への入院・転院などで人口は年々減少しており、本州の中山間地域の“限界集落”に匹敵するような厳しい状況にあります。

 その最も深刻な問題はインフラの整備が遅れていることで、面積が狭いうえ、周りが海に囲まれていて孤立しており、かつ公共交通機関がほとんどないことです。これを「狭小性」、「環海性」、「隔絶性」といい、沖縄では「シマチャビ」、すなわち、“離島苦”といっています。

■今、離島の住民たちの生活は

 これを住民の生活面でみてみると、行政や企業、NPOなどによるサービスが少なかったり、まったくなかったりしているため、介護保険の保険料を毎月納め、仮に「要支援」や「要介護」と認定されてもケアマネジャー(介護支援専門員)がほとんどいないため、ケアプラン(介護サ-ビス計画)を作成することができません。

 また、たとえできても、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護療養型医療施設(療養病床)などの施設はおろか、訪問介護(ホームヘルプサービス)や通所介護(日帰り介護)、短期入所生活介護(ショートステイ)などの居宅(在宅)サービスも十分整備されていない、あるいは少ないため、「保険あってサービスなし」の状態が続いています。

 まして、ターミナルケア(終末介護・看護)に至っては、本島や本州の施設や病院でなければ必要な手立てが施されないため、自衛隊などのヘリコプターによって搬送されており、生まれ故郷で看取られることができません。

 離島の実態は、それだけではありません。人口の高齢化や後継者の不足のため、生計の糧とすべき漁業や農業も衰退の一途で、自給自足の生活もままならなくなる一方です。

 しかも、老後の生活費の頼りとすべき公的年金も国民年金だけで、夫婦で満額支給といっても月額計12~13万円にしかなりません。このため、老後の最低生活費といわれる月額24~25万円にはほど遠く、まして老後のゆとりの生活費である月額37~38万円など望むべくもありません。

 しかし、離島は、国防や排他的経済水域の保全、さらには海洋資源の利用や自然環境の保全などに重要な役割を担っています。このため、今後も人口の高齢化や過疎化が進んだり、産業の衰退によって地域経済が疲弊したりすれば、「日本の国益」という観点からも憂慮すべき事態に陥ることは想像するに難しくはないでしょう。

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離島の住民たちの生活は疲弊している(島根県・隠岐島にて)


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プロフィール

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川村匡由
(かわむら まさよし)
社会福祉学者・博士(人間科学・早稲田大学)、行政書士有資格、福祉デザイン研究所所長。シニア社会学会理事、世田谷区社会福祉事業団理事、元大学基準協会評価委員、元社会福祉士試験委員。

主著に『地域福祉とソーシャルガバナンス』(中央法規出版)、『社会保障論(編著)』、(ミネルヴァ書房)、『人生100年"超"サバイバル法』(久美出版)など。山岳紀行家としても知られており、本サイトで「山歩きのすすめ」などを寄稿している。

川村匡由+福祉デザイン研究所のホームページ http://www.geocities.jp/ kawamura0515/

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