離島を考える(1)~尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件
■果たして、関係者の解放で一件落着したのか
2007(平成19)年以降、団塊の世代などがリタイア後、離島に移住したり、自宅と離島を行ったりきたりして老後をエンジョイしています。それも、国内だけなく、ハワイやグアム、東南アジアなど海外にも足を伸ばしているようです。
かくいう筆者も縁あって、毎年、沖縄の大学へ集中講義に出かけており、その合間をぬって、しばしの離島ライフを楽しんでいますが、確かに、本土から移住したシニア世代や若者の姿が最近、増えてきたように思われます。
そんななか、先ごろ、中国の漁船が沖縄県・尖閣諸島沖で違法な操業をしていたところを海上保安庁の巡視船が発見し、停船を命じたものの、逃走したので追跡した結果、巡視船に衝突したため、公務執行妨害で船長ら数人を逮捕しました。が、その直後、中国政府は、仕事で現地に駐在していた邦人の建設会社の社員を軍事施設の違法撮影容疑で逮捕しました。
その結果、地元の那覇地方検察庁が「処分保留」として船長らを釈放すれば、中国側も監視船を現場の海域から撤退させたうえ、逮捕した3人を釈放しました。
これについて、国内では、船長の釈放は地検が単独で行ったのか、それとも事前に官邸の指示があったのかどうか、国会で議論されることになりました。
そこで、今月はこの事件もからめ、離島について考えてみたいと思います。
■経済水域としての尖閣諸島
まず、尖閣諸島は東シナ海の南西部、沖縄県・八重山諸島の北方にある複数の離島で、戦前、一時的に日本人の定住者がいましたが、現在はいずれも無人島となっています。
領土としては、日清戦争下の1895(明治28)年1月、日本の領土として編入され、その後、第二次世界大戦下、アメリカを中心とした連合国軍の管理に置かれたのち、同県石垣市に所属して現在に至っているということです。
ところが、1971(昭和46)年、大量の石油資源が埋蔵されている可能性があるとわかったため、中国と台湾がこの群島を釣魚島(日本では「魚釣島」と呼称)と名付け、領有権を主張し始めるようになったとのことです。
しかし、日本政府は従来から「この領域に領有権問題は存在しない」との公式見解を明らかにしていますが、尖閣諸島をめぐる領有権の問題はこれまでも、台湾も交え、違法操業や違法越境、上陸を引き金としてたびたび発生しています。
とりわけ、近年、途上国から振興国へと急激な経済発展を遂げている中国については、各国の間でも「中国脅威論」が伝えられている一方、沖縄などがアメリカの極東戦略基地の1つとなっている、日本の“軍国主義”化を警戒する中国側が東アジアの海域を占有し、これに対抗しようとしているなど、政治的、経済的な思惑もあるようです。
これについて、アメリカ側は2009(平成21)年3月、日米安保条約の適用海域に関連し、「尖閣諸島は沖縄返還以来、日本政府の施政下にある」としているものの、その領有権については「当事者間の平和的な解決を期待する」とし、領土権の主張の争いには関わらない、との立場を明らかにしているようです。
これには、アメリカにとっても、大きな市場である中国の存在を無視できないことを表明しているように思われます。
離島は政治的、経済的な問題を常に抱えている(沖縄本島および伊江島の上空にて)
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