高齢者福祉を考える(4)~介護サービスの人手不足
ところで、高齢者福祉の大きな問題は介護です。このため、政府は2000(平成12)年4月、高齢者の介護を40以上の中高年や高齢者で支える介護保険制度を創設しましたが、今年で丸10年が経ちました。
おかげで、介護サービスの利用にあたっての遠慮や、引け目(スティグマ)を感じる人たちはかなり減ってきました。その意味で、介護保険制度の基本理念である「介護の社会化」は図られつつあります。
しかし、肝心のサービスの基盤整備はいまだに十分に図られていないため、要介護認定を受けてケアプラン(介護サービス計画)を作成しても居宅(在宅)サービスを思うように使えなかったり、希望する施設に入所もできなかったりしています。過疎地域の中山間地や離島ではケアマネジャー(介護支援専門員)はおろか、民間事業者の進出もままならず、「保険あってサービスなし」の状態が続いており、“限界集落”といわれているところもあります。
また、仕事が定時に終わらず、介護のため、腰痛が職業病になるなど「3K」の職場と揶揄(やゆ)されており、介護福祉士やホームヘルパー(訪問介護員)の資格を取得して就業しても2~3年で辞めてしまうなど、人手不足がますます深刻になっています。
そればかりか、福祉系の専門学校や短大、大学に進学をめざす若者も年々減っており、“大学冬時代”に拍車をかけており、入学者の募集を停止したり、学部や学科を廃止し、他の学部や学科に改組したりしているところも出ています。
■期待したい新政権だが……
そこで、政府はフィリピンなどと自由貿易協定(FTA)を結び、外国人介護士を雇用し、人手不足を補おうとしています。が、そのためには日本語による介護福祉士の国家試験に合格しなければ強制送還するなど、外国人労働者を柔軟に受け入れているカナダなどと異なり、杓子定規的な対応に終わっており、事態の解明には至っていません。
こうしたなか、昨年秋の衆議院選挙で自公政権から民主党政権に交代し、新政権に期待が寄せられていますが、少なくとも介護保険制度など高齢者福祉に関する具体的な改善策は今のところ、見当たりません。
しかも、高齢者福祉は何も介護だけが問題ではありません。定(停?)年延長や雇用の継続、社会参加、老後の生きがいの促進、生涯学習の保障、後期高齢者医療制度の抜本的な見直しなどと山積しています。だれもが年をとり、いずれは通る道なだけに、家庭的に、あるいは経済的に困っていなければ、国民も高齢者福祉の政策のあり方や地域での高齢者の見守りや支援などのボランティア活動に参加し、だれもが世界最長寿国・日本に生まれてよかった、といえるような国づくり、地域づくりをめざしたいものです。
「敬老の日」、「老人の日」、「老人週間」も年齢を超えて、国民みんながこのような自立と社会連帯の必要性を考える機会にしてはと思いますが、いかがでしょうか。
高齢者の再就職もままならない“限界集落”(群馬県南牧村にて)
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