高齢者福祉を考える(3)~住み慣れた地域で生活を送るために
■地域福祉としての高齢者福祉
もちろん、家族だけ孝行すればいいわけではありません。また、定(停?)年が延長されたりして働き続けられればいいわけでもありません。なぜなら、近年、高齢者の老々介護や引きこもり、孤独死などが大きな社会問題になっているため、家庭的に、あるいは経済的に困っていなければ、地域の高齢者の見守りや支援にも一役買ってほしいからです。このところの100歳高齢者の生存不明問題を考えれば、なおさらです。
ちなみに、2000(平成12)年、市町村を中心とした地域福祉に行政も住民も取り組むことが望ましいというわけで、それまでの社会福祉事業法から社会福祉法に改称・改正されました。地域福祉は長年、市町村の社会福祉協議会が民間非営利の住民の組織として地域福祉が進められてきました。
しかし、その推進にあたっては行政もその一翼を担い、だれもが住み慣れた地域で、いつまでも健康で自立した生活を送ることができるよう、法律的にも整備されたのです。
具体的には、市町村は地域福祉計画、市町村社会福祉協議会は地域福祉活動計画を策定し、官民一体で地域福祉を計画的に進めていこうというものですが、ほとんどの地域では計画の一体的な策定と実施がされておらず、ここでも“縦割り”の問題があります。
また、老人福祉計画や介護保険事業計画、障害者福祉計画、障害福祉計画、次世代育成支援行動計画などとの整合性も十分に図られておらず、住民の側から声をあげ、住民参加にもとづく公私協働により、地域福祉を計画的に推進していくことが必要となっています。「敬老の日」、あるいは「老人の日」もこのような地域の課題も考えたいものです。
■ささやかな試みの地域サロン
そこで、筆者は一昨年秋から、武蔵野市の併用住宅の一室を地域サロン「ぶらっと」と名付けて地域に開放し、毎週土・日曜日、住民を対象にしたミニ講座を開いています。
テーマは、年金や介護保険、終(つい)の棲家(すみか)探し、成年後見制度など、高齢者福祉に関わる情報の提供や意見交換のほか、歌声喫茶や音楽鑑賞、ふるさと談議、あるいは屋上を開放しての一品持ち寄りパーティなどを実施しており、受講料は資料代、ドリンク代込みでワンコイン、すなわち、1人500円で、うち、300円は講師への謝金、残りの200円は記録係と部屋代やドリンク差し入れ代、光熱費負担の筆者で折半しています。
また、これらのイベントのPRのため、筆者のホームページに掲載したり、チラシを周辺の施設や民家にポスティングしたりしており、福祉の雑誌やミニコミ紙、FM放送、単行本などで紹介されるようになりました。
しかし、活動を始めてまだ2年ちょっとというわけか、地元の運営スタッフが揃っていないため、勉強会や情報交換会にととどまっています。このため、地域の高齢者の“居場所”であるとともに、見守りの“オアシス”としての宅老所にまでなっていないのが現状です。
それだけに、家庭的に、あるいは経済的に困っていなければぜひ運営に参加してほしいと思っていますが、このような地道な地域活動は10年、20年とかかるのではないかと思っています。
自室を開放して開いている地域サロン(武蔵境の「ぷらっと」にて)
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