高齢者所在不明問題を考える(4)~私たちでできること
■地域福祉として安否確認、見守り、支え合い
最後に、今回の高齢者所在不明問題が私たちに提起している問題は、地域共同体の崩壊に対する解決策を「対岸の火事」とせず、それぞれの地域で高齢者の安否確認や見守り、支え合いをどのように進めるべきか、互いに知恵を絞って実践することの重要性でしょう。
なぜなら、住民の有志が立ち上がり、日ごろから地道な活動に取り組んでいけば、たとえ親子別居や音信不通であっても、近隣関係のコミュニケーションで今回のような事態を防ぐことは可能だからです。
もっとも、そういいますと必ず持ち上ってくるのが個人情報の保護ですが、これは、何も他人の情報やプライバシーをあれこれ詮索してどうこうというのでは毛頭なく、日ごろから互いに人間関係を構築し、いざというとき、助け合っていくことを最優先する地域活動以外の何物でもなく、誤解があれば時間をかけて相互理解に努めることです。また、このような住民同士の安否確認や見守り、支え合いこそ、家族形態が変化し、共同体意識が崩壊している、さまざまな地域の問題を解決していくうえで緊急に求められているのです。
そこで、期待されるのが市町村というわけでしょうが、それだけでなく、市町村社会福祉協議会や民生委員・児童委員協議会、町内会、自治会、商店会、老人クラブ、消費生活協同組合、農業協同組合、森林組合、NPO(特定非営利活動法人)など、民間の自由な創意工夫による地域活動です。とりわけ、住民に信頼のある社会福祉協議会はその先頭に立ち、地域福祉として高齢者の安否確認に取り組み、地域を組織化するくらいのコーディネーター力が望まれます。
もちろん、そのためには市町村とこれらの民間との連携は欠かせないため、地域によっては行政主導でもいいでしょう。また、他の地域では社会福祉協議会や民生委員・児童委員協議会、町内会、自治会、商店会、老人クラブ、消費生活協同組合、農業協同組合、森林組合、NPO(特定非営利活動法人)などの主導でもいいと思われます。
現に、このような先進的な取り組みは各地で行われており、市町村など行政の手が届きにくい、あるいは行政よりも民間の方が取り組みやすい地域活動を展開し、成果をあげているところも少なくありません。今回のような高齢者所在不明問題もこのような住民・市民活動によって安否確認や見守り、支え合いのなかで解決できる部分も相当あるのではないでしょうか。これこそ<地域福祉>の問題ではないか、と思われます。
■筆者もささやかな地域福祉実践
私事で恐縮ですが、筆者も地域福祉のささやかな研究実践として、一昨年11月より武蔵野市の自宅のマンションの1室を地域サロン「ぷらっと」と名付けて地域に開放し、とりあえず毎週土・日曜日、住民・市民を対象にミニ講座を開いています。参加費は1人500円で、年金や介護保険、地域福祉、成年後見制度、終(つい)の棲家(すみか)探しなどをテ-マに意見交換していますが、地元の運営スタッフが揃えれば、高齢者の居場所、また、福祉情報の発進・共有、さらにはサービスの紹介・連絡・調整・評価のオアシスをと考えています。
「ぷらっと」とは、だれもが「ぷらっと」と立ち寄ってもらうとともに、福祉の情報やサービスの紹介・連絡・調整・評価を行う「プラットホーム」として利用してもらえるよう、双方をもじって名付けたものです。
いずれにしても、このような市民・住民の自主的、自発的な地域活動、あるいは地域福祉の実践も期待したいものです。今回の高齢者所在不明問題はこのような取り組みの必要性も提起しているように思われますが、いかがでしょうか。
居場所づくりで高齢者の安否確認(武蔵野市の地域サロン「ぷらっと」にて)
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