シニアライフと年金(3)~少子高齢化で年金額の削減や支給開始年齢の先送りも
■年金が5割にカットされる?
ところで、昨今、「修正積立方式」では年金財政が立ち行かなくなりつつあります。高齢化の進展に少子化が加わったため、保険料や税金(国税)を負担すべき現役世代が急減しているからです。
また、老後の年金は、退職後、現役時代の給料の約6割を目安に支給されるよう、設計されていますが、少子化の世代が将来受給する年金は、今後も少子化が改善されないまま老後を迎えると、同5割にカットせざるを得ないとの試算が厚生労働省から公表されています。このため、このままでは年金額の削減だけでなく、ドイツのように年金の支給開始年齢を67~68歳へと先送りされるおそれもあります。
■保険料の免除手続きをとる方法もある
このような状況から、20代の学生や自営業のなかには「それなら国民年金の保険料を納めていっても意味がないからやめた」、「民間の個人年金に入った方がましだ」などといって、国民年金の保険料を未納・滞納したり、加入そのものもしない人たちが増えています。
しかし、公的年金は性別や職業、居住地などの違いを超え、国民全員で社会的に扶養し合っていこう、という社会保険であるため、確たる理由もないまま保険料を納めなければ、年金制度自体が崩壊してしまいます。
そこで、学生のため、収入がないとか、事業が思うように好転しないため、生活苦となって国民年金の保険料を一時納められなくなったら、免除の手続きをすれば、保険料の納付が免除されるものの、その期間に相当する期間の年金は若干のカットで済む措置が設けられていますので、この措置をぜひ利用したいものです。
■年金は障害、死亡にも対応した所得保障
また、年金は、老後の生活費の老齢年金だけでなく、障害者となり、健常者のような給料やボーナス(賞与)を受け取れなくなったら障害年金、また、一家の大黒柱が亡くなり、家族の生活がままならなくなったら遺族年金が支給される、という役割も担っています。つまり、年金は、何も高齢化の進展によって注目されるだけのものではなく、私たちが長い人生を送っていくうえで、さまざまな困難にぶつかったとき、それぞれの状況に見合った生活費が即座に支給される社会保障、というわけです。
それだけに、年金の額が物価の上昇によって追いつかず、どんどん“目減り”するのであれば生活費の保障にはなりません。このため、公的年金ではそのようなことがないよう、長年、5年に1回の財政再計算によって年金の基礎単価の改定、および毎年度の全国の消費者物価指数が増減した場合、その変動に応じ、物価スライドによって増額していました。これは、個人年金などにはない“温情措置”でした。
■当分の間、引き上げられる保険料
しかし、少子高齢社会の到来に伴って国内経済が疲弊し、年金財政が危機的な状況を迎えることになりました。このため、加入者の減少や平均寿命の延びなど、マクロ経済の視点から、2005(平成17年)4月以降、年金の支給額を変動させるマクロ経済スライド制に切り替えられることになりました。
加えて、今後も高齢化がさらに上昇していくものの、不況からの脱出は難しいこともあり、保険料は、国民年金、厚生年金とも、2004(平成16)年の改正により、翌2005(平成17)年4月以降、毎年、全国の消費者物価指数の増減に関係なく、引き上げられることになっています。これを保険料水準固定方式といいます。
具体的には、国民年金の保険料は2004(平成16年)年度、月額約1万3300円でしたが、翌2005(平成17)年度から毎年度、月額280円ずつ引き上げられ、2017(平成29)年度には月額1万6900円、また、厚生年金の保険料率は2004(平成16年)9月までは13.58%(労使折半)でしたが、同10月から2017(平成29年)9月まで、毎年、0.354%(同)ずつ引き上げられ、最終的に18.3%(同)になります。
将来は年金額の削減や支給開始年齢の先送りも(都下にて)
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。