環境を考える
私たちの日々の快適な生活のために必要な「生活三要素」が衣食住であることは、みなさんもよくご存知のとおりですが、実はこの衣食住が揃ってもそれは“点”にすぎません。なぜなら、これらを取り巻く“線”としての環境が整備されなければ不十分だからです。
とりわけ、そのなかで重視されているのは住環境の整備・拡充です。その対象も住み慣れた地域社会だけでなく、国、さらには地球全体にまで広げ、地球温暖化という人類の生存に関わる環境問題が世界的な論議を呼んでいます。
このようななか、鳩山前首相は昨年9月、ニューヨークで開催された国連の気候変動サミットで、わが国における温室効果ガスの排出量について、2020年までに1990年比で25%削減するという中期目標を表明しました。これは、2012年までに、アメリカを抜いて世界最大の温室効果ガスの排出国となった中国など、新興国や途上国を除く先進国全体で5%を削減とする1997年の京都議定書の目標を大幅に上回るものであっただけに、内外から拍手喝采を浴びました。
そして、昨年、コペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)の席上、京都議定書で示された削減目標について、先進国や新興国、途上国の思惑がからみ、「大幅な削減が求められる」という文言にとどまり、具体的な上積みは実現できなかったものの、削減のために必要な財源は先進国から途上国に支援するむね、明示されました。
これを受け、政府は年明け後、地球温暖化防止対策として「チャレンジ25キャンペーン」を掲げ、国民的な運動を呼びかけています。CO2(二酸化炭素)の排出量の削減となる家電製品や住宅のエコポイント制度、太陽光発電の普及、エコカー減税および補助金がそれです。その意味で、わが国は企業はもとより、家庭でもマイカーや冷暖房などによるCO2の排出量の削減に取り組み、国際社会にその積極的な姿勢を示すことが望まれています。
いずれにしても、このように環境は今やエコロジー、略してエコとして考えるほど問題となっていますが、シニア世代がより充実した人生を送るうえでも環境は大変重要です。折しも6月5日は「世界環境デー」でもあるため、今月はこの環境について考えてみたいと思います。
いまだに解決していない公害も
ご承知のように、わが国は、戦後の経済成長に伴う「負の遺産」として、工場の煤煙や廃液による大気汚染、水質汚濁、自動車の排気ガス、さらには薬害など生活環境の破壊が社会問題となり、公害といわれました。このため、その発生源である企業、およびこれを指導・監督すべき国を被害住民が相手取り、一連の責任を追及するとともに、損害賠償を求める裁判を起こす住民運動にまで発展しました。その結果、敗訴した企業や国はその責任を認め、環境基準を設けて住民との間で公害防止協定を結んだり、被害者の補償に努めたりするようになりました。
「世界環境デー」では、わが国も上述した「負の遺産」を一国も早く払拭すべく、国をあげて取り組んでいます。もっとも、水俣病に代表されるように、裁判に勝訴した被害住民だけでなく、裁判を起こさなかった被害者の補償まで十二分には行われていません。
住環境を重視したエコに関心が(山梨にて)
(毎週金曜日の更新の予定です)
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。