日本のエコポイント制度は環境に優しいのか?
実は、このようなエネルギー政策はヨーロッパではすでに20年前から、化石燃料や原子力発電に依存したエネルギー政策から太陽光発電や風力発電、クリーンディーゼル自動車の開発・普及など、新エネルギー政策への転換に積極的に取り組んでいます。
たとえば、フィンランドは1990年、燃料税に上乗せする形で、CO2の排出量に応じて税金を課す炭素税を投入しました。この炭素税は翌年、スウェーデン、その後、ノルウェーやデンマークにも広がっています。
また、オランダとドイツはエネルギー税、イギリスは気候変動税、スイスは温暖化対策税を相次いで導入するとともに、脱石油をめざし、省エネや新たなエネルギーの開発にも努めており、CO2の削減の効果を上げる技術を海外に売り込んでいます。さらに、オーストリアは牧草や穀物を発酵させてバイオガスをつくり、エネルギーの割安さを売り物に企業誘致に乗り出しており、雇用創出に成功しています。
このほか、環境保護に関わる法制化でも、ドイツは1994年、ドイツ連邦共和国基本法の改正、また、スウェーデンは1999年、環境法典の施行により、国民に対する環境権の責務をそれぞれ定めています。また、イギリスでは約20万人の市民が環境NGOの活動に参加し、2008年、温室効果ガスの排出の削減を政府に義務づける気候変動法案の制定を働きかけ、実現させています。
一方、わが国では1993(平成5)年に環境基本法を制定してはいますが、国民に対する環境権の保障に関わる国の責務までは定めておらず、産業界に気兼ねをして環境よりも経済を優先したままです。しかも、エネルギーは旧態依然として石油や石炭、天然ガス、ウランのほとんどを海外に依存するなど、自然エネルギーの自給に大きな遅れをとっています。
それでも、自公政権は、折からの不況や若者の車離れに伴って販売が不振な自動車業界の意向を受け、ドイツを参考にエコカーの減税および補助金を実施したほか、昨年3~4月、ETC(Electronic Toll Collection System)車に限定した平日昼間、夜間の割引や休日特別割引、地方での1000円上限制度を高速道路で実施しました。しかし、結果は、週末や連休期間中、未曾有の渋滞を招いたほか、不況で給油所の廃業が相次いでいるため、ガス欠が至る所で起きるなど政策が後手後手になっており、混乱を招いている始末で、民主党政権がどのような改善策を打ち出すのか、注目されています。
なぜ、家電製品や自動車などに限定されているのか
それにしても、エコポイント制度などの対象が、なぜ、家電製品や住宅、太陽光発電、自動車に限定されているのでしょうか。また、それ以外の日用品は、なぜ、対象外なのでしょうか。
残念ながら、その理由について、当時の自公政権は「新たな経済対策」などといった説明しかせず、中央官僚の一部からも「特定の業界だけを対象とした支援策」、あるいは「金持ち優遇策」などとの声がもれるほどでした。また、買い替えを推奨されている地デジタル放送対応テレビについても、より鮮明な画面が楽しめるなどという半面、まだまだ多くの国民が使用しているアナログテレビは来年7月以降、見られなくなってしまうなど、その理由について国民に十分な説明もなく、事態は推移しています。
しかし、よくよく考えみれば、このような買い替えも結局、粗大ゴミを出すだけで、本当のエコにはならないのではないでしょうか。なぜなら、真剣にエコを考えるなら買い替えをせず、現在使用している家電製品やマイカーを長く、しかし、なるべく使用の頻度を減らし、耐用年数がきた時点で買い換えをすればいいのではないか、と思われるからです。
とりわけ、自動車はやむを得ないとき以外は使用せず、なるべく歩くようにすることが大切ではないでしょうか。また、路面電車は復活させるなど、電車やバス、地下鉄などの公共交通機関を中心とした交通体系に見直したり、市街地の周りに駐車場を整備し、市街地への自動車の乗り入れを規制するパークアンドライド方式を採用したりして、「クルマ中心のまち」から「人間中心のまち」に変えることが先決ではないか、と思われます。
クルマの半数がクリーンディーゼル自動車のヨーロッパ(イタリアにて)
(毎週金曜日の更新の予定です)
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