海外の余暇事情
前回は日本の現状を説明しましたが、海外で余暇を徹底して有効に活用している国はフランスです。
フランスでは1936年、世界に先駆け、すべての労働者に2週間の有給休暇を保障した連続休暇制度(バカンス法)を制定しています。当時、景気が低迷しており、失業率も高かったため、経済の活性化や雇用創出をめざし、労働者に2週間の有給休暇を取らせ、生産調整と給与の支給の削減をねらった国策でした。
ところが、地方に低料金の家族向けの貸し別荘村などを整備しての実施であったため、多くの労働者がその有給休暇を使ってレジャーに興じた結果、サービス産業が活況を呈して景気浮揚につながりました。いかにも「自由・平等・友愛」を国是としているお国柄らしいですが、その後、官公庁や企業だけでなく、学校も長期休暇を取ることになりました。
夏休みにパリなどを訪れると市街地はガラガラで、買い物に不便を感じた経験をした人も少なくないでしょうが、フランス人はこの有給休暇中、レンタカーで地中海沿岸の南フランス・プロヴァンスやスペインのリゾートへ家族ごと大移動し、長期滞在しているのです。それも、わが国のようにゴールデンウィークや旧盆、正月休みなど一時季に集中せず、7~9月のなかで分散し、最低4泊以上、なかには1か月前後もです。
ちなみに欧米の有給休暇は現在、フランスはパートタイマーも含めて年間30日、お隣のドイツは連続24日、イギリスは4労働週間、アメリカは平均18日です。しかもその消化率はほぼ100%であるのに対し、わが国の有給休暇は18日で、消化率は50%、日数にしてたった9日にとどまっており、先進国で最低です。
「仕事人間」、「会社人間」の日本人
なぜ、日本人は欧米人に比べて有給休暇の日数がこんなに少なく、かつ消化率も低いのでしょうか。
その理由はさまざまですが、一般的には休むことに対してまだまだ罪悪感を感じたり、自分が休むと同僚に迷惑をかけたりするといった国民感情があるようです。しかし、それだけでなく、ワークシェアリングやレイオフ、派遣切り・正社員切りの折、昇給や昇格、果ては人事考課によって配置転換や解雇などをおそれるあまり、取りづらいというような雰囲気もあるようです。
また、わが国は農耕民族で、長年、隣人やムラ社会との和を重んじ、関係者が力を合わせて事に臨まなければならないのに対し、狩猟民族で、個人や少人数で狩をして生活してきた欧米人の個人主義や能力主義と異なる国民性を挙げ、このようなわが国独特の国民性が“サラリーマン社会”にみられるのではないか、という意見もあります。
しかし、これではGDP(国内総生産)がアメリカ、中国に次いで第三位にとどまっているといわれていても、生活の余裕やゆとり、快適性、さらには量から質への転換はいつまで経っても改善されません。そればかりか、定年退職後も働かなければ生活できない人もいれば、定年後、悠悠自適のシニア世代もいるなどライフスタイルはさまざまですが、いずれにせよ、仕事や家事、余暇のあり方をもう一度見直してはいかがでしょうか。
欧米人は余暇の有効活用がお上手(スイスにて)
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