大学と生涯学習
最後は大学ですが、大学によっては地域の住民を対象にした生涯学習よりも、学生の国家試験の合格者の数をいかに上げるかということの方に力が入りすぎ、「生涯学習社会」の形成への社会貢献にイマイチのところも少なくないように思われますが、いかがでしょうか。
確かに、学生の国家試験の合格者の数が少ない、あるいは合格率が低いと問題にされ、大学によっては次年度の志願者の増減に影響が出るかもしれません。
たとえば、今も昔も関係者の間で論議を呼んでいるのが、法学部や医学部を有する大学における国家試験の合格者の数、あるいは合格率です。とりわけ、国家試験のなかでも最難関といわれる司法試験の場合、毎年、大学別の司法試験の合格者の数や合格率が新聞などに報道されており、受験生はもとより、大学関係者も一喜一憂しているのが現状です。
まして、昨年から今年にかけ、司法制度改革の一環として、法曹、すなわち、弁護士や裁判官、検察官になるためのもう一つの登竜門である法科大学院、いわゆるロースクールの修了者を対象に実施されている司法試験の合格者がゼロとなった大学院に対し、募集停止などのペナルティが課せられるばかりか、その議論の流れで、当初、3000人に増員するはずであった司法試験の合格者を1500人に戻す話も出回っている始末です。
これは国家公務員の上級職、一流企業への就職率についても同じようなことがいえますが、長い目で考えれば国家試験の合格者の数や合格率だけがすべてか、といえなくもないのではないかと思われます。
望まれる大学の「生涯学習社会」形成への貢献
このようななか、シニア世代のなかには定年退職の前後に脱サラや起業をめざし、司法試験や公認会計士、税理士、社会保険労務士などのような難関の国家試験にチャレンジする人も増えています。
そこで、大学は、人生経験の豊富なシニア世代にも大学を開放して、学生との世代間交流を図り、シニア世代には老後の生きがいの促進や社会参加、若い学生にはこれからの長い人生における人格形成の一助として、人間味のあふれた教育に努めることも大切ではないかと思われます。
また、メディアもこのような大学の取り組みを広く国民に知らせ、国民の学習権の保障に一層の理解を深め、協力してほしいものです。もとより、その指導監督機関、あるいは推進機関である国や自治体も今後、さまざまな形でシニア世代に対する老後の生きがいの促進や社会参加、生涯学習の場の提供、地域の情報の周知徹底に努めてほしいものですが、いかがでしょうか。
生涯学習の拠点となりうる大学(都内にて)
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