Letter69「複数の治療法から一つを選ぶようにいわれたが…その9」
前回の続きです。6か所の病院を巡って、手術をした方が良いか、しない方が良いかを決めかねている前立腺がんのGさん。治療法が決められず、医療コーディネーターとともに前立腺がんの治療ガイドラインを読んでみると、これまでこれまで疑問に思っていたことが理解できるようなりました。
ガイドラインを妻や娘と一緒に読み進め、疑問点を明確にしていった結果、Gさんは笑顔で「尿漏れや麻酔の副作用ぐらいしかデメリットがないのなら、私はできる治療を全部やりたい。戦っていくことが、病気に負けないコツだと思う」と言いました。Gさんの決定に娘さんはほっとしていました。奥様は、夫が納得しているのであれば、自分は何を言うことはない、という意見でした。そこで私は医療コーディネーターとして、B病院の医師と、明日受診予定のE病院の両方で、もう一度手術のデメリットについて確認することを勧めました。
最後にGさんにB病院の医師についてどう思うか尋ねました。Gさんは、B病院の医師は自分の話をじっくりと聞いてくれ、自分を尊重してくれていると感じると言いました。
この方のように手術をするかしないかを迷っている時、これまでの自分の生き方を振り返ることで治療方法が決まってくるということが多くあります。尿漏れという後遺症がどうしても受け入れられない人もいれば、Gさんのように気にならないという方もいます。病気と闘いたい人もいれば、積極的な治療はせずに病気と共存していきたいという人もいます。どんな治療もよい点・悪い点両面を持っています。その一つひとつを自分はどう受け止めるのか、どう消化していくのか、じっくりと吟味していくことが重要です。
一般的な情報が豊富にあっても、人はそれだけで重大な決断をすることはできません。情報を納得に変えていく作業、そして、決定を実践してくれる、そういう信頼できる医療者がいて初めて「決める」ことができるのだと思います。
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