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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter68「複数の治療法から一つを選ぶようにいわれたが…その8」

 前回の続きです。前立腺がんのGさんの治療を巡って、手術ができるという病院と、できないという病院があるため、どうしていいのわからなくなってしまいました。がんなど取ってしまった方がいいと思うGさんですが、どうして手術ができないのか、医療コーディネーターとともに、治療ガイドラインをじっくり読んでみました。

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 ガイドラインを一緒に読み解いていくにつれて、Gさんの疑問は解けてきました。次のようなことがわかってきたのです。

・ガイドラインは「最新の治療法を含めた多くの情報から有効性・安全性などを整理して、診療の目安を示してあるもの」であり、すべての患者に画一的な治療を行うことを推奨しているものではない。したがってGさんの希望に沿った治療ができるかどうかは、あくまでもGさんと医師で話し合いをもって決めるものであること。
・手術をすれば目に見えるがん細胞を取り除くことができること。
・手術には麻酔の副作用、尿漏れなどの後遺症があり得ること。ただ、後遺症の発現頻度、持続時期は病気の進行にもよるため、Gさんの場合どうかは医師に確認が必要なこと
・免疫機能とがんとの関連性はまだ解明されておらず、手術をすることで免疫が下がり、がんが増殖するという根拠は現時点ではないこと
・仮にリンパ節転移があると、今は見つかっていなくても体のどこかに既に転移している可能性があること。そのため、今判明しているがんの部分だけを切り取っても足りない。であれば全身に巡っているがん細胞全てに効果のある治療をする方が良いというのが標準的な考え方であること。それ故、全身に効果のあるホルモン療法や抗がん剤治療が勧められていること。
・抗がん剤治療は日進月歩であり、副作用対策や治療の方法も工夫されてきているため、十年前と今とでは進歩している。具体的な副作用の出現頻度などを医師に聞いてみる必要があること。
・自分と同じ治療を受けている人の話を聞くことで参考になることも多い。患者会など、病気の仲間が集まるコミュニティにその情報が集まっていること。

 こうして、一つ一つの疑問が解けていく中で、Gさんの表情は明るくなってきました。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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