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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter65「複数の治療法から一つを選ぶようにいわれたが…その5」

 前回の続きです。6か所の病院を巡って、手術をした方がよいか、しない方が良いかを決めかねているGさんのお宅です。奥様と娘さんも一緒に、今後の治療方法をどうしたらよいかについて検討しています。

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 A病院では手術はできないといわれ、B病院では手術を勧められたGさんは、サードオピニオンを求めてC病院を受診することにしました。C病院ではA病院と同じ意見で、リンパ節に転移があれば手術はできない状態です、と言われました。Gさんは、B病院では手術を勧められたこと、根拠となる論文もあると言われたことを訴えました。するとC病院の医師は怒ったような声で「そんな論文、どこの論文ですか? この病院では、例えあなたを手術したいと言っても倫理委員会を通りませんよ。根拠に基づかない治療はできません」と言われてしまいました。混乱したGさんは、一度予約したB病院での手術前検査をキャンセルしました。手術を受けたいのは山々です。しかしこれだけ反対されれば不安も募ります。もう一度きちんと考えてから手術するかどうかを決めたい、そう思ったそうです。
 しかし娘さんは、手術してほしい、諦めないでほしいと強く思っていました。そのため父親が手術前検査をキャンセルしたことを非常に残念に思っており、今度は父が手術そのものをキャンセルしてしまうのではないかと不安になっていたようです。

 サードオピニオンを聞いても不安だけが募り、決められないGさんは、もう一つD病院の意見を聞いてみることにしました。結果は、D病院もA病院とほぼ同じ意見でした。リンパ節に転移があれば手術はせず、他の治療を行っても再発する可能性が非常に高いので、併せて放射線治療も検討した方がよいというお話でした。そこでGさんはこれまでずっと聞きたいけど聞けなかったことを聞いてみました。それは余命でした。主治医からは「一年ほどかと思います」と言われたそうです。

 その言葉を聞いたGさんは、あまりのショックに数日何も手につかなかったそうです。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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