Letter63「複数の治療法から一つを選ぶようにいわれたが…その3」
前回の続きです。Gさんはクリニックで前立腺がんが発見され、手術を勧められました。そこで大きな病院を受診したところ、手術はできないと言われました。驚いてセカンドオピニオンを受けたところ、今度は手術できると言われました。混乱したGさんは、6か所病院を巡り意見を聞きましたが、まだ結論は出ていません。そこで医療コーディネーターに相談することになりました。
Gさんのご自宅は閑静な住宅街にありました。Gさんは、奥様と娘さんと一緒に出迎えてくれ、リビングのテーブルを囲んで皆で話を始めました。口火を切ったのはGさんの娘さんでした。手術をしてほしいのに、Gさんが及び腰になっているように思う。父を説得して手術できるようにしてほしい。それが娘さんの願いでした。そしてこれまでの経緯を娘さんが口早に説明し始めました。
Gさん夫婦は黙ってそれを聞いていました。私は、経緯に関してはGさん本人の口からお聞きしたかったため、時々話の水をGさんに向けましたが、娘さんは取り合わず、一人で話し続けています。Gさんの奥様が口を挟もうとしたときも、それを遮ります。Gさんの治療について、手術ありきでよいのか、ご本人の真意を聞くことが必要でした。そこで私はまず娘さんに、Gさん本人から話を聞きたいこと、病気や治療方法、医師の言葉の真意を理解し、その上で治療法を考えたらどうかと提案しました。娘さんはやっと会話の中心をGさんに譲りました。
Gさんははじめ「なぜ病院ごとに言うことが違うのか、違うから信頼できない」と病院批判をしていました。「自分は手術がしたいのに、反対されれば不安になる」とも言っていました。そして私に「どんな治療法がよいのか、決めてほしい、自分には決められない」「娘は手術がよいと言っているのだから、手術でよいのですよね。なぜだめなのでしょう!」とも言いました。
そこでまずは順を追って、これまでの治療法について、外来受診時の医師とのお話について、皆で振り返り、理解を深めていくことにしました。
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