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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter62「複数の治療法から一つを選ぶようにいわれたが…その2」

 医療コーディネーターの実践を通してまとめた「患者が悩む意思決定トップ5」のなかから、今回は「医者に複数の治療法を示され、そのなかから一つを選ぶようにいわれても、現実にはなかなか決められない」ことについて実際の相談事例をご紹介します。

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 Gさんは会社を退職してからも定期健診は欠かさず受けており、健康への関心は高い方でした。今年の健診で、自覚症状は全くないけれど異常値が出ていると告げられ、精密検査を受けて前立腺がんが発見されました。
 精密検査を受けたクリニックで「まだ手術ができる段階でしょう」と言われたGさんは、手術を受けるのであれば信頼できる大きな病院を受診しようと考え、紹介状を持ちA病院を受診しました。しかし「手術の適応ではない」と言われてしまいました。
 手術を受ければ治ると信じていたGさんは驚きました。手術ができないとはどういうことなのか。毎年健診を受けていた自分が、なぜこんなことになるのか。多々疑問を抱いたまま、自宅に近く規模の大きなB病院へセカンドオピニオンを受けに行きました。しかし今度は一転「手術はできる」と言われたのです。
 混乱したGさんは、次は有名なC病院へサードオピニオンを聞きに行きました。ここではA病院と同じ「手術はできない」という診断を受けました。しかし、B病院ではできると言われたと訴えたところ、「Gさんに手術をするという病院は倫理違反です。私たちの病院では考えられません」と言われたそうです。さらに混乱したGさんは、D病院にフォースオピニオンを聞きに行きました。結果はやはり「手術はできない」でした。ここでも、「どこの病院の医師が手術はできるなどと言うのだ。そのようなことを言う医師はおかしい」と言われたそうです。
 最初のクリニックも含めて5つの医療機関を巡り、2か所では手術できる、3か所ではできないと言われたGさんは、どうしてよいか分からなくなってしまいました。しかし、手術するなら早い方がよいと思い、B病院で手術をするための事前準備を始めました。手術日も決まりました。それでも、本当に手術をしてよいのか、心は決まりません。そこで、さらに6か所目のE病院を受診することにしました。
 このような混乱状態にあるGさんを見かねて、娘さんが医療コーディネーターに相談を依頼しました。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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