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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter47「最後に歯医者に行ったのはいつですか? その3」

 前2回は肺がんのYさんが、がんの転移ではないかと思うほどの舌の痛みを味わった件についてお伝えしました。痛みに驚くYさんに歯科医が伝授した対処法は、口の中を綺麗に保っておく、という当たり前のものでした。今回は口の中の清潔が保たれないことがどのようなことを引き起こすのかをお伝えします。

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 まず、口の中は汚いものである、という認識が必要です。代表的な歯科の病気のうち、90%を虫歯と歯周病(歯槽膿漏)が占めています。
 なぜこのように歯周病が身近な物であるかというと、その原因となる菌が常時口の中に存在するからです。その数は、唾液1cc辺り1億~10億、種類は500以上といわれています。虫歯の原因も菌です。
 例をお話ししますと、生まれたばかりの赤ちゃんの口には虫歯の原因となる菌はいません。ではなぜ子どもは虫歯になるのでしょう? それは、大人がキスをし、口移しで食べ物を与えることで虫歯の原因菌を子どもの口に移しているのです。

 このように口の中は常時多数の菌が存在し、それぞれの菌が、口の中の各部位でそれぞれ異なる細菌の塊を形成しています。
 例えば、歯垢の中にはレンサ球菌、歯周ポケットには、グラム陰性桿菌、スピロヘータ、口の中の粘膜にはブドウ球菌や肺炎球菌、緑膿菌などです。
 そしてこれらの最近はバイオフィルムという細菌で出来た膜を作ります。こうなってしまうと、うがいだけでは細菌を取り除くことができません。歯ブラシや口の中をきれいにするスポンジブラシなどで物理的に除去する必要があります。

 1997年、海外で「歯周病を治療することで糖尿病が改善する」という研究結果が発表されるなど、この分野は近年注目されています。
 他にも、高齢で飲み込む能力が低下している人の場合、歯周病菌が肺に入ることで肺炎を起こす可能性が指摘されています。特に偏性嫌気性菌が肺炎の起因菌となった場合には、抗生剤が効きにくく、重篤な誤嚥性肺炎(飲み込んだ物が間違って気管に入ることが原因で起こる肺炎)を引き起こすと言われています。

 仮に歯が一本もなくても細菌は増殖します。特に高齢者の方は、歯が無くなったから歯ブラシをしなくても良い、と考えるのではなく、引き続き口の中の手入れを続けることは重要です。

 最終回となる次回は予防法についてお話しします。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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